日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol. 27

1. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会
2. 〔連載〕各国のPXサーベイ~第20回 インド(後編)~
3. 第1回PXフォーラムについて

1. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会


9月上旬に開催された第24回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会で、PXに関連したシンポジウム「コーチングによる多職種連携の促進と患者経験(Patient Experience)に基づく医療の質評価」が行われました。人材育成モデル事業と、その研修効果の測定にPXを導入した有用性などについて演者が発表しました。

 

シンポジウムではグラクソ・スミスクライン株式会社の研究助成に採択され、2017年7月から実施した同学会主催の「多職種連携を実践する人材育成モデル事業」の意義と概要、受講者の実践と成果などを紹介しています。

 

座長と演者として同大会の大会長を務めた日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会理事で東北大学大学院医工学研究科の出江紳一教授、足利赤十字病院の尾﨑研一郎歯科医師、演者で広島市立リハビリテーション病院リハビリテーション科の嘉村雄飛部長、同研究会理事であり東海大学医学部血液・腫瘍内科の安藤潔教授が登壇しました。

 

出江教授は事業の概要と、多職種連携教育に触れました。同事業では全12回の集合研修が組まれ、研修効果の測定はコーチングスキルとPXによって行われています。PX調査は受講者の勤務する施設で研修プログラム開始直後と6カ月後に行い、コミュニケーションスキルとPXの向上との関係を検討したとのことです。

尾﨑歯科医師はチーム医療を実践するために研修に参加し、コーチングを学んだ経験とその成果を振り返りました。成果として、「院内のステークホルダーにコーチングをすることで、相手の目標や現状、そのギャップについて知ることができ、目標達成への行動について提案できた」と言及しました。

多職種連携やチーム医療の実践の難しさを痛感し、研修に参加したという嘉村部長は、コーチングスキルを使った「言語化」により、診療の合間の3分間の会話で目標に対する進ちょく確認や目標を意識する機会が増え、行動変容につなげることが可能だと話しました。

安藤教授はPXの概念と測定方法、日本PX研究会で開発した「日本版PX調査票」、PXの有効性について解説。「PX調査は具体的かつ客観的事実を問う設問が多いため、医療サービスの実態が把握しやすく、その結果が医療安全や臨床の質を反映する。今後コーチングによる医療の質の向上を、PXを指標として評価したい」と説明しました。

 

2. 〔連載〕各国のPXサーベイ~第20回 インド(後編)~


前号に続いてインドのPXサーベイを紹介します。

 

恒例のクイズは、患者の満足度に大きな影響を及ぼす事象を以下のなから選ぶというものでした。

1.病院のインフラ

2.診療情報の開示

3.ケアの質

正解は1.病院のインフラ でした。

インドでは高機能な私立病院と、国民の多数を占める中~低所得層を対象とする公立病院に分かれています。また医師数、看護師数、病院数ともに不足していて、医療インフラの整備は課題となっています。

そのほか、患者満足度に影響を及ぼすものとして「薬の入手機会」「医療情報」「スタッフの行動」「医師の行動」があります。

「病院のインフラ」を加えた5つについて、入院患者と外来患者とでは影響の大きさの順に違いがあります。入院患者はスタッフの行動、医師の行動、薬の入手機会、医療情報、病院のインフラの順に影響が大きくなっていますが、外来患者は医師の行動、薬の入手機会、病院のインフラ、スタッフの行動、医療情報となっています。

 

2003年4~9月にかけて、the Uttar Pradesh Health Systems Development Project(UPHSDP;ウッタル・プラデーシュ州保健システム開発プロジェクト)の一環として行われたインドのPXサーベイについてのレポートは、下記リンクをご参照ください。

Towards patient-centered health services in India- a scale to measure patient perceptions of quality;

https://academic.oup.com/intqhc/article/18/6/414/1803368

3. 第1回PXフォーラムについて


今回のPXフォーラムの演者紹介は、前橋赤十字病院総務課広報広聴係の引田紅花主任です。

 

勤務先の病院では広報担当として記者会見などを仕切っていますが、日本PX研究会でも物怖じしない強さを発揮しているムードメーカーです。

フォーラムでは、「従来の満足度調査と比較して」と題した事例紹介を行います。患者の満足度追及が医療の質向上につながっているのか、そもそも5段階評価で医療サービスを正しく評価できるのかと従来の満足度調査に疑問を持ったといいます。PXを用いて医療サービスの現状を把握した試みについて説明します。

 

第1回PXフォーラムの各講演、事例紹介の抄録をホームページ上で公開しています。参加を希望される方は、お申し込みフォームからお願いいたします。

第1回 PXフォーラム 医療の質の「未来」を創る

 

第1回PXフォーラム ~医療の質の「未来」を創る~

11月3日(土)13:30-17:30(開場13:00-)

秋葉原UDX(JR秋葉原駅徒歩2分)

演者:

青木拓也(京都大学大学院医学研究科 医療疫学分野家庭医療専門医・指導医)

安藤 潔(一般社団法人日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会 理事/東海大学総合医学研究所所長 東海大学医学部血液・腫瘍内科教授)

井村 洋(飯塚病院 特任副院長)

曽我香織(一般社団法人日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会 代表理事/株式会社スーペリア 代表取締役)

中澤 達(北里大学大学院 医療マネジメント教授)

西本祐子(国立病院機構九州医療センター 小児外科医長/メディカルコーディネートセンター副センタ―長)

引田紅花(前橋赤十字病院 総務課広報広聴係主任)

藤井弘子(一般社団法人日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会 メディア統括マネジャー)

 

※【お知らせ】日本PX研究会について※
会員登録につきましては、2018年11月から有料とさせていただきます。

 

編集部から

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