「PXとは」でご紹介したように、PXはプロセスを重視します。PXの特徴は、3つあります。
1. 患者のWANTS<NEEDSを重視
2. 医学モデル<生活モデル
3. 患者と医療者のWin-Winな医療
1.WANTSよりNEEDS重視
PXは、患者のニーズ(NEEDS)を重要視します。しかし、患者の欲求に何でも応えるわけではありません。
なぜなら患者の欲求(WANTS)は、長期的な視点から見ると患者のQOLにとって最適ではない場合があるからです。
従って、患者の来院目的や患者のゴールに必要であれば、患者が望まない治療の方向性も医療者として示す責任があります。
医療者には、患者の主張や要求を何でも聞き入れるのではなく、患者の目標達成を支える「パートナー」であることが求められます。長期的な視点で患者の目標達成に向けて患者と一緒に取り組むことが、PXのポイントです。
2.医学モデル<生活モデル
2015年6月に厚生労動省が示した提言「保健医療2035」にあるように、今後の医療のキーワードは「患者の価値中心」、「ケア中心」にシフトしていきます。
従来の医療では、EBM(Evidence Based Medicine;根拠に基づいた医療)の考え方に基づき、臨床研究に基づいて統計学的に有効性が証明された治療によって根治することに軸足が置かれていました。
しかし医療の目的が病気の根治から患者のQOL実現へ移行していく時代の流れに伴い、従来の考え方だけでは患者のニーズの多様化に応えることができなくなっています。
これからの医療では、患者の持つゴールや価値自体が正解とされ、そのゴール・価値に合わせて逆算した形での医療サービスの提供が求められます。まさにそれが、PXの目指すところです。医師は患者を全人的に理解し、患者にあった治療を提供することが求められます。すなわち、医療の目的は治療だけでなく、患者のQOL実現まで含まれます。
PXは、一人ひとりの患者のニーズに合った、且つ質の高い医療を提供することを目的とします。
3.患者と医療者のWin-Winな医療
従来は、病院が患者満足度調査を実施したり機能評価を受審したりするなどの自助努力で改善を続けてきました。
しかし、これからは「価値共創」の時代です。
患者の声をタイムラグなく反映し、一緒に病院を作り上げる視点が患者・病院双方にとってのWin-Winを実現します。
日本では診療報酬点数の関係などから、特に急性期病院では患者中心の医療を実現したくても病院経営のためにやむを得ず希望しない患者を退院させる、病院間移動させるなどの措置が取られることも珍しくありません。
PXは正しい医療を実践している病院にこそ、見返りが来るべきとのスタンスに基づいています。米国や英国ではPXの高い病院に経営的なインセンティブがつくように変わっています。
日本は未だ制度上では遅れていますが、正しい医療を提供する覚悟を経営者が持つことで、患者のQOL向上だけでなく
医療者の自己実現や幸福度の向上、定着度の向上にもつながります。