PX(ペイシェント・エクスペリエンス)は、患者中心の医療を実現するためにイギリスで生まれた考え方です。日本語では「患者経験価値」と訳されます。
PXは、「患者が医療サービスを受ける中で経験するすべての事象」と定義できます。
はじめに
2015年6月に厚生労動省が示した提言書「保健医療2035」にあるように、今後日本の医療はインプット中心から患者の価値中心、キュア中心からケア中心にシフトしていきます。
従来の医療では、医療技術の高度さや確実性に加え、接遇等のサービスレベルを高め、病気を根治させることで患者満足度を向上させてきました。しかし医療の目的が病気の根治から患者のQOL実現へ移行していく時代の流れに伴い、これまでの患者満足度の考え方だけでは患者のニーズの多様化に応えることができなくなっています。
これからの医療では、一人ひとりの患者の持つゴールや価値自体が正解とされ、そのゴール・価値に合わせた医療サービスの提供が求められます。
PXは、一人ひとりの患者に最適な医療サービスを提供するために生まれた考え方であり、今後の日本の医療が目指す方向性と合致していると言えます。
患者満足度(PS)との違い
PXと混同されがちなものに、PS(Patient Satisfaction;患者満足度)が挙げられます。
PSは、患者の期待と実際とのギャップの結果を測ります。PXは、患者がいつ、どこで、どのような経験をしたのか、プロセスを測定します。
患者満足度調査とPXサーベイの違い
患者満足度調査は、患者の主観を5段階で評価させる設問が多いです。
Q.看護師の対応はいかがでしたか?
非常によかった
まあよかった
どちらとも言えない
あまり良くなかった
全く良くなかった
患者満足度調査は患者の印象を問うため、評価基準は患者により異なります。また、その時の患者の気分や価値観に評価が左右されやすいのが特徴です。客観的な評価基準がないため、結果を見ても良し悪しの判断がつきません。課題を発見して改善に繋げにくいと言えます。
PXサーベイは、客観的事実を具体的に尋ねる設問が多いです。
Q.ナースコールを押してから実際に看護師が来るまでどのくらい待ちましたか?
0分/すぐに
1-2分
3-5分
5分以上
対応してもらえなかった
ナースコールを使っていない
PXサーベイは客観的事実を具体的に尋ねるため、医療サービスの実態を把握しやすいのが特徴です。そのため、課題を発見しやすく、改善に繋げることができます。