1.Virtual Patient Experience Conference 2020
2.コロナ禍でPXをどう維持するか?
3. 今後の予定
1.Virtual Patient Experience Conference 2020
アメリカのPX推進団体「The Beryl Institute」が今年4月からオンライン開催していた「Virtual Patient Experience Conference 2020」が9月で終了したのを受けて、53のセッションを視聴できるライブラリーが公開されています。
The Beryl Instituteでは、PXを強化するための8つの戦略レンズ(視点)を開発しています。次の8つになります。各セッションにはいずれか1つ以上の視点が盛り込まれています。
・CULTURE & LEADERSHIP (文化とリーダーシップ)
・INFRASTRUCTURE & GOVERNANCE(インフラとガバナンス)
・STAFF & PROVIDER ENGAGEMENT(スタッフと臨床医のエンゲージメント)
・POLICY & MEASUREMENT(ポリシーと測定)
・ENVIRONMENT & HOSPITALITY (環境とホスピタリティ)
・ INNOVATION & TECHNOLOGY (イノベーションと技術)
・PATIENT, FAMILY & COMMUNITY(患者、家族、地域コミュニティ)
・ QUALITY & CLINCIAL EXCELLENCE(医療の質と臨床的卓越性)
7月に開催された「EMBEDDING PATIENT/FAMILY STORIES INTO THE HEART OF THE PRESENTATION」(患者と家族のストーリーをプレゼンテーションの中心に埋め込む)。プレゼンテーションに患者や家族のストーリーを入れることで共感が生まれ、スタッフのエンゲージメントが高まります。ツールを使い、よく練られたストーリーを作成する方法を学べるワークショップです。
「MULTI-PRONGED APPROACH TO IMPROVING THE PATIENT, CARER AND STAFF EXPERIENCE」(患者、ケアスタッフのエクスペリエンスを改善するための多面的アプローチ)では、3カ月間で患者、ケアスタッフのエクスペリエンスを改善するためのコーチングなどを盛り込んだアプローチを紹介しています。
53のセッションは非会員400ドル、会員だと300ドルで見ることができます。PX向上のための実践的な内容となっています。
☆申し込み
Link:https://www.theberylinstitute.org/page/VirtualPX2020
☆プログラム概要
2.コロナ禍でPXをどう維持するか?
米国マサチューセッツ内科外科学会が発行する医学雑誌『The New England Journal of Medicine』のNEJM Groupが今年1月に創刊した『NEJM Catalyst Innovations in Care Delivery』は、医療の変革、医療の価値の向上をテーマに、実践的な問題解決策やヘルスケア業界におけるイノベーション事例が紹介されています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時にいかにPXを提供するかについての興味深い論評が同誌に掲載されていたので、その概要を紹介します。
COVID-19によって患者と対面での診療が中断し、段階的な再開に備えるにあたり、最適なPXが維持できるようなプロセスの再検討が求められています。そのために医療機関のPXリーダーが考えたのは、「コミュニケーション」「診療へのアクセスと調整」「反応」「チーム化」という4つのアプローチだったとしています。
☆コミュニケーション
患者の医療者への信頼は、傾聴と共感的なコミュニケーションに大きく依存していて、コミュニケーションスキルトレーニングがPXを改善することがわかっています。バーチャル訪問やPPE(個人防護具)の着用による物理的な壁により、対面での診療が難しくなっているなかで、語り掛ける際の声のトーンとテンポ、顔の表情とボディランゲージなどに気遣う努力が重要となっています。対面からバーチャル訪問へのスムーズな移行を確実にするためのアプローチを作成。下記リンクでは患者と直接会う場合、バーチャルで会う場合のコミュニケーション上の具体的な注意点を挙げています。
☆診療へのアクセスと調整
COVID-19でケアの継続性の新しい課題として、オフィスでの診療を再開する時に患者の多くは自宅を出るリスクを考えて消極的になるかもしれないことを考慮すべきです。対面ではないケアの選択肢を提供し続けながら、オフィスの感染予防策を講じることで患者の恐れに対応してきました。臨床医と患者がリスク評価と意思決定を共有、個々のニーズに合った選択ができます。バーチャルと対面診療でワークフローを切り替え、オフィスでの診療を再開する時は温かさ、注意深さ、安心感を患者に与える必要があります。また受診後のフォローアップを確実に行うようにします。
☆反応
患者からの電話やオンライン上のメッセージへの迅速な対応はPXにおいて重要となります。通常よりも恐れや不安が見受けられるメッセージに対処するには、これまで以上の共感が不可欠です。
☆チーム化
素晴らしいPXは思いやりがあり、よいケアができるチームからもたらされます。COVID-19では臨床医やスタッフは感情的なダメージを受け続けます。スタッフの燃え尽き症候群への対応をより広げていかなければなりません。ピアサポート、心理療法などはすべての医療従事者がすぐに利用できるようにしておきます。スタッフ向けのカウンセリング、患者と臨床医のコミュニティの場、リスニング力を取り入れた語りの場といったウェブ上のコンテンツを活用します。
患者が医療において何を大切にし、求めているかという本質的な部分はCOVID-19前と変わっていません。エクスペリエンスを物理的、バーチャル的にいかに提供するかを考えることがコロナ禍でのPX向上の秘訣だそうです。
Link:https://catalyst.nejm.org/doi/full/10.1056/CAT.20.0349
3. 今後の予定
PX研究会では2020年は勉強会を「PX寺子屋」と銘打ち、全国展開していく予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、すべてオンラインでの開催といたします。「第4回PX寺子屋」は、日程など詳細が決まり次第、掲載します。
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12月5日(土)に「第3回PXフォーラム~PXとEXから考えるWell-being」を開催します。招待講演では、Caring Accent主宰でCertified Patient Experience Professionalの近本洋介さんがアメリカの病院事情やPXとEXの取り組みについて話します。今年はZoom(Web会議ソフト)での開催となります。フォーラムの概要および申し込みは下記リンクからできます。
Link:https://peatix.com/event/1622615
今年も「PXアワード2020」を開催します。「こんな医療機関がもっとあったらいいのに!」とほかの人に勧めたい医療機関に投票してください。結果は、第3回PXフォーラムで発表。投票は下記リンクからぜひお願いします。
Link:https://www.pxj.or.jp/pxaward/
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※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。
編集部から
ファッションブランド「KENZO」を創業した高田賢三さんが新型コロナウイルスの合併症で亡くなったという訃報。日本人初のパリ進出、大胆な色使いのエキゾチックテイストをモードに取り入れた偉大なデザイナーは日本よりもフランスで評価が高く、カリーヌ・ロワトフェルドがSNSに上げていた粋な追悼メッセージに心打たれました(マニアックな話ですみません)。(F)