日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.123

1.米国のPXサーベイは次の段階へ
2.ウィズコロナでの訪問ポリシー
3. 今後の予定

1.米国のPXサーベイは次の段階へ


米国医学研究所が米国のヘルスケアシステムの基本となる6つの目的の1つに「患者中心のケア」を掲げて約20年。研究を重ねてきた結果、PXと臨床結果の向上、患者の安全性の向上、医療サービスの適正化が高い相関を示していることがわかっています。患者中心主義の高まりから、CMS(the Centers for Medicare and Medicaid Services)によるPXを評価するためのCAHPS(the Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems;米国のPXサーベイ、病院向けのものはHCAHPS)が標準化され、重要な役割を果たしてきましたが、すべての医療関係者がデータにアクセスしやすく、より理解しやすい最新のものに変えていく必要性が指摘されています。

 

☆PXサーベイを最新化するための次のステップ

医療機関に有意義なフィードバックを行い、十分な回答率を維持するために必要な変更として以下が挙げられています。

・患者、家族、医療者からのインプットに基づいたサーベイのコンテンツの定期的な更新

・自由回答形式の質問プロトコルを実装することで患者のナラティブとコメントを反映させる

・効率的かつ迅速にフィードバックできる調査とデータ管理方法の開発

・サーベイの対象となる患者集団のニーズに合わせるなど、「案内メッセージ」をより洗練させる

・サーベイの調査フィールドの平準化(地域やコミュニティ、医療機関によるスコアの偏りの調整)

 

☆サーベイデータを民主化するための次のステップ

PXサーベイのデータを使いやすく、よりアクセスしやすく、サーベイの透明性を高めることが、多くの情報に基づいた患者の意思決定を可能とし、継続的な医療の質改善には不可欠。そのためには次のことが推奨されています。

・中立性が保たれた状態での比較ベンチマークデータの公開

・患者のサーベイ対応への負担軽減とデータ収集の際の医療機関のコスト軽減につながるサーベイの測定要件の調整

・患者の意識を高め、医療機関が使用しやすくするなど公開レポートの強化

 

 

日本でPXサーベイを進めていくうえでも重要な考察となっています。PXPF(The Patient Experience Policy Forum;PXについての政策提唱を行う患者、家族、医療者による団体)共同議長のRick EvansさんとShari Bermanさんらが執筆した方針書をぜひご一読ください。

Link:https://www.healthaffairs.org/do/10.1377/hblog20200309.359946/full/

 

 

 

2.ウィズコロナでの訪問ポリシー


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、医療機関におけるCOVID-19患者、COVID-19でない患者に対するかかわり方が問われています。バーチャルによる患者訪問の場でも、バーチャルでの決定による影響やサポートのあり方を考える必要がでてきました。

アメリカのPX推進団体「The Beryl Institute」では、コロナ禍における患者訪問がPXに大きく影響するとしており、ケアパートナー(患者のサポート役)によって患者の基本ニーズが満たされ、患者とその家族への効果的なかかわりの実現を保証するポリシーとして、以下の推奨事項を挙げています。日本の医療機関にも参考になる内容です。

 

1.面会に関するポリシーでは、ケアパートナーはアクティブかつケアチームの中心にいなければならない

2.病院訪問のポリシーには、患者の声だけでなく病院トップや医療従事者の声を反映させるが、科学的エビデンスに基づく必要がある

3.病院はCOVID-19患者、COVID-19でない患者の訪問者数を調整し、その際に患者とケアパートナーの安全管理を行う

4.患者、ケアパートナー、医療者、地域コミュニティが訪問ポリシーを十分に理解すると同時に、ポリシーは個々の患者に柔軟に対応できるものとし、定期的な更新が不可欠

5.医療現場のすべての人がマスクを着用し、病院はすべての患者、訪問者にマスクを提供する必要がある

6.すべての患者には、診療の場にケアパートナーを同伴できる選択肢が必要

7.入院中に訪問が許可されるのは、患者1人につき2人以下の特定のケアパートナー

8.入室時にはケアパートナーの検温と症状確認を行う

9.感染への懸念などにより患者がケアパートナーと面会できない場合は、医療者が質の高いバーチャル訪問の場をつくる

10.小児医療だけでなく患者が必要とすれば、ケアパートナーが1晩病院に滞在する環境をつくる

11.COVID-19患者がいるエリアへの訪問者の安全確保のため、PPE(個人用保護具)を提供する

12.訪問データは患者の社会的状況などに配慮したうえで保存し、調査、モニターなどに使う

 

 

Link:https://cdn.ymaws.com/www.theberylinstitute.org/resource/resmgr/pxpf/pxpf_statement_9.2020.pdf

 

 

3. 今後の予定


PX研究会では2020年は勉強会を「PX寺子屋」と銘打ち、全国展開していく予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、すべてオンラインでの開催といたします。「第4回PX寺子屋」は、日程など詳細が決まり次第、掲載します。

 

***********

12月5日(土)開催の「第3回PXフォーラム~PXとEXから考えるWell-being」の参加受付を開始しました。今年はZoom(Web会議ソフト)での開催となります。フォーラムの概要および申し込みは下記リンクからできます。

Link:https://www.pxj.or.jp/pxforum-2020/

 

今年も「PXアワード2020」を開催します。「こんな医療機関がもっとあったらいいのに!」とほかの人に勧めたい医療機関に投票してください。結果は、第3回PXフォーラムで発表。投票は下記リンクからぜひお願いします。

Link:https://www.pxj.or.jp/pxaward/

 

***********

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


秋らしい気候になってきました。秋といえば……食欲の秋。今年は大好物のマツタケが豊作とのことで舌鼓を打ちました。「幸福の国」の大地の恵みでした。(F)