1.UX HEALTHCARE USA 2020開催
2.米ベスト10病院の健康格差への対応
3. 今後の予定
※来週13日(木)のメールマガジンは配信お休みします。次回は20日(木)となります。
1.UX HEALTHCARE USA 2020開催
UX(User eXperience;ユーザー経験価値)という言葉を聞いたことがありますか。人がひとつのモノやサービスを通じて得られるさまざまなエクスペリエンスを指します。医療におけるUXはヘルスケア関連の製品、サービスがユーザー中心、ユーザーの満足度を追求するものになっているかどうかを問うものです。
UX HEALTHCARE は臨床医、UXの専門家、プログラムマネジャー、経営者などヘルスケアにかかわるリーダーが集まるイベントで、昨年はロンドンとアムステルダムで開かれれました。今年はビデオ会議による開催で、ロンドンとアムステルダムとフランクフルトの3会場ではすでに終了していますが、8月26日にアメリカ、10月14日にオーストラリアで開催されます。
8月26日開催のアメリカは9:30~17:00まで、10人のスピーカーが登壇します。
10人のスピーカーの1人である米フロリダ州にあるソフトウェア会社Modernizing MedicineのUXディレクター、Andrew Schallさんは「音声操作による仮想アシスタントは医師のバーンアウトをなくすことができるか?」をテーマに話します。
医師は患者との相互作用をなくすことなく生産性を最適化する、新しい方法を模索しています。Andrewさんは仮想アシスタントの技術を研究しており、EHR(Electronic Health Record;個人のデジタル医療情報)システムのUXを改善することで、医師のバーンアウト(燃え尽き症候群)を減らす試みをしています。「私たちのチームは、従来のインターフェイスの必要性を保管、置換する方法として音声操作によるインターフェイスを研究してきました。仮想の医療アシスタントをつくるという、ユーザー中心の設計戦略をみなさんと共有します」とAndrewさんは話しています。
GEヘルスケアのUXディレクター、Niketa Jhaveriさんは「ヒトの共感をヘルスケアにおける機械学習のUXデザインに組み入れる方法」について紹介します。AIと機械学習はヘルスケアのデジタル化において変革をもたらす一方、データのみに依存することはエンドユーザーのエクスペリエンスにとってリスクとなります。この講演では、堅牢なアルゴリズムと人との相互作用を組み合わせることでカスタマイズされたエクスペリエンスをつくる方法を見つけること、さまざまな人の偏見がAIの結果と、UXにどのように影響するかを学ぶことができます。
チケット(190ドル)を購入すれば参加できます。購入およびイベントの詳細は下記リンクからお願いします。
2.米ベスト10病院の健康格差への対応
所得や学歴など個人の社会経済的状況と健康との関連について、WHOは「確固たる事実」だとしています。日本においても、所得が低い高齢者ほど要介護認定を受け、死亡率も高いといった研究結果があります。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック、5月にミネソタ州でアフリカ系アメリカ人が白人警官に殺害された事件を受けて、アメリカの病院では人種差別と健康格差の取り組みを進めています。米メディアプラットフォームのBecker’s Healthcareでは、雑誌『USニューズ&ワールド・レポート』のトップ10に選ばれた病院の取り組みをレポートしています。その一部、PXに関連するコメントを紹介します。健康格差によるPXへの影響なども今後考えていきたいです。
サンフランシスコにあるUCSF Health(University of California, San Francisco;カリフォルニア大学サンフランシスコ校)のエグゼクティブバイスプレジデント兼最高臨床責任者であるJoshua Adlerさんは、「スタッフの採用と昇進、患者間の健康格差を体系的に識別するなどさまざまな角度から不平等の解消に取り組みました。体系化するためにはデータが必要。当院では人種・民族・性的指向などを踏まえた人口統計の定義を行い、ダッシュボードに組み込むことで医療の質やPX、医療へのアクセスといった情報を患者から収集しました。その結果、アフリカ系アメリカ人の血圧管理やPXの違いを測ることができ、改善計画を立てました」と話しています。
「MGH(Massachusetts General Hospital;マサチューセッツ総合病院)では2007年以来、患者の人種や民族、言語によって提供するケアの質をモニタリングしてきました。健康格差を特定し、対処するための基盤です。長年にわたって糖尿病患者へのコーチングプログラム、インフルエンザ予防接種の格差をなくすプログラムなどを開発してきました。現在は、退院および退院説明に関連するPXの格差の解消に取り組んでいます」と同院のバイスプレジデント、最高株式責任者のJoseph Betancourtさん。
オハイオ州クリーブランドクリニック・コミュニティケアのpopulation healthチーフディレクターのAdam Myersさんは「最近のできごとは構造的な人種差別の現実と経済的、政治的、教育的、社会的、健康的不平等を生むことによる深刻な影響を明らかにしています」と指摘。「当院ではより良い教育のアウトカムを出し、仕事を発展させ、より安全な住まいの提供など、文化的かつ包括的なヘルスケアの促進に取り組んでいます。積極的にコミュニティリーダーと協力し、健康の社会的決定要因の影響を減らすことを支援しています。つまり、ヘルスケアの平等が目標です」と語っています。
同院ではメインキャンバスに隣接する地区にコミュニティセンターを設立し、健診を受けたり健康な食事、運動について学ぶクラスを設けるなど、誰もが参加できる場を提供することで健康格差の解消を試みています。
3. 今後の予定
PX研究会では2020年は勉強会を「PX寺子屋」と銘打ち、全国展開していく予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、すべてオンラインでの開催といたします。
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オンラインによる勉強会「第3回PX寺子屋」は、8月29日に開催します。内容など詳細は決まり次第、お知らせします。
8月29日(土) 13:00-14:00
PX概論 日本PX研究会理事・東北大学大学院医工学研究科教授 出江紳一
※Zoom(Web会議ソフト)での開催となります。参加者にはリンクをお知らせします。
※研究会会員は無料、会員外の方は有料(1000円、事前に参加費の振り込みをお願いします)。申し込みは下記リンクからお願いします。
Link: https://www.pxj.or.jp/events/
※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。
編集部から
ステイホームのなかでやってみたいのはお菓子づくり。メレンゲが好きなのでパブロバやヌガーグラッセを作りたいと妄想をふくらませています(写真は近所のビストロのシェフ作のヌガーグラッセです)。(F)