日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.107

1. ポストコロナでの遠隔医療とPX
2.連載「Patient Stories」第43回 運動が幸せをサポートする
3. 今後の予定

1.ポストコロナでの遠隔医療とPX


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は医療IT、患者にどのような変化をもたらすのか――。米医療業界誌出版社のBecker’s Healthcareでは5月19日、ITおよび医療業界のリーダーを招いてバーチャルによる会議を開催し、バーチャルヘルスへの期待と、ペイシェント・ジャーニーの将来について語りました。「COVID-19によるパンデミックは、遠隔医療やデータの相互運用性など、患者のテクノロジーに対する新たな期待を生んだ」としています。

アメリカにおいては、多くのテクノロジー企業やベンチャーキャピタルがビジネスチャンスと考え、医療ITに参入していますが、そのなかでキーワードとして語られているのがPXです。医療システムや国土の広さなどから、患者が適時適切に診察を受けることが難しく、それによりPXが低いとされています。日本と比べて遠隔医療も進んでおり、ミズーリ州セントルイスを拠点に43病院と800の外来診療施設を展開するマーシーは2015年10月、世界初のバーチャルケアセンターを開設しています。

Link:https://www.mercyvirtual.net/

 

バーチャル会議ではEHR(Electronic Health Record;生涯健康カルテ)システムを展開するAllscripts社のクライアント開発担当副社長、ソリューション管理ディレクターと、マイクロソフト社のヘルスケアの最高戦略責任者がパネリストとして参加。次の5つについて言及しています。

1 EHRの相互運用性の向上:病院や医療システムがデバイスでのリモート監視によるバーチャル訪問サービスを提供。リモートで管理することで情報共有が進み、患者は自宅でのケアを望むようになる。

2 パンデミック後の遠隔医療の継続:パンデミック以来、患者のフォローアップをバーチャル訪問で行った結果、患者は従来よりも大幅に遠隔医療を希望すると予測。

3 FHIRの始動:EHRの相互運用性へのニーズ増に対応するため、EHRベンダーと病院はプラットフォームをオープンにする必要がある。患者が自分の診療データを管理するため、EHRに意思決定支援を付加した国際標準仕様であるFHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources;迅速な医療情報相互運用のためのリソース:)を展開していくことが期待される。

4 患者識別の確立:患者がどこで診療を受けたとしても、個人情報保護のもと、健康に関する情報をいつでもプロバイダと共有できるようになる。

5 community hospitalが技術ツールを活用:高価なテクノロジーに対し、community hospital(地域病院)は過去50年にわたって提携を求めてきたが、技術運用の簡素化により、EHRや遠隔医療などの導入は難しくなくなるかもしれない。

 

COVID-19により、日本においても遠隔医療へのニーズは今後高まっていくことが予測できます。PXの視点から捉えていくことが必要となりそうです。

Link:https://www.beckershospitalreview.com/healthcare-information-technology/how-covid-19-is-changing-health-it-expectations-what-it-means-for-patients.html

 

 

2.連載「Patient Stories」第43回 運動が幸せをサポートする


第43回の「Patient Stories」はいつもと異なり、健康増進の視点からのストーリーです。糖尿病、高血圧などの生活習慣病を防ぐためのプロジェクトの参加者は、身体だけでなく心も軽やかになっていきます。

 

☆ エクササイズで生き方が変わる

Felicia Hauslerさんの健康になるという考えは、サウスポアント病院での新しい研究、THE BRIDGE PROJECTを知った時に具体化し始めました。

THE BRIDGE PROJECTは、”Targeted Healthcare Efforts to Bridge Resources, Improve the Development of Guideline-Based Exercise Prescription and Reduce Obesity by Joining Education, Community and Technology(リソースを橋渡しするために公衆衛生活動にターゲットを絞り、教育とコミュニティ、テクノロジーによりガイドラインに基づいた運動の処方と肥満を減少させ、健康状態を改善する)”の頭文字をとったものです。「プライマリ・ケア分野の准看護師として、この研究の対象となる患者層を見ていました。そして『私も太りすぎ。(研究の患者対象に)任命されるといいかもしれない』と思いました」

45歳の時、Feliciaさんは体重が増え続けると糖尿病、高コレステロール血症、高血圧などといった代謝疾患になる可能性があることに気づきました。身長5フィート4インチ(162.5cm)で体重180ポンド(82㎏)から、150ポンド(68㎏)以下の目標を設定しました。

「週3日30分の有酸素運動をすればいいだけです。そして私は食事を変えることに抵抗がありました。あまり元気ではありませんでした。疲れていたので何かしなければならないkとおはわかっていました。長年かけて増えた30ポンドにより、靴を履くためにかがむだけで大変でした。何かをするのに低いところに着地するには何かに寄りかかる必要がありました」

Feliciaさんは不安とうつ病とも闘っていました。ジムで週3回のエクササイズを開始したところ、「心と身体はより意欲的になり、それが生き方、ルーチンになります。変化を感じ始め、もっと回数を増やしたいと思いました」

クリーブランドクリニック呼吸器研究所の呼吸器専門医の Debasis SahooさんとTHE BRIDGE PROJECTを立ち上げた、医療従事者であり現在はスポーツ医学フェローであるMatthew Kampertさんは、Feliciaさんに対して月2ポンドの減量目標を設定しました。毎日運動していたものの最初は体重が減らなかったFeliciaさんが不満を感じてMatthew さんに言った時、「まず運動することだと強調しました! 運動を続ければ、後に同じ努力と時間を費やした時にはより多くのカロリーを消費することができます。すると体重が減ります! 彼女はその通りにしていたら突然スイッチが入って、目標設定どおりになりました」

「私は筋肉を鍛えて、より多くの睡眠をとる必要がありました」とFeliciaさんは言います。「カロリーを消費するために十分なエネルギーが必要でした。10時間働いた後にジムに行こうとしていたため、よく眠れませんでした。夜9時か10時に夕食を食べて、遅く寝ていました。食べたものを代謝しようとするので、身体が休めないことを学びました」

Matthewさんの助言とFeliciaさん自身の努力により、10カ月で30ポンド減量しました。「運動は幸せをサポートします」とFeliciaさん。研究が終わった後でも、新しいライフスタイルを維持できると確信しています。特に成果として、数年ぶりに5kmレースで完走したことがあります。「研究に最初に参加した時、トレッドミルでのエクササイズをどう思ったのかを覚えていました。そして今、45分間走っていても疲れませんでした。頭のなかでMatthewさんの『あなたならできる!止まらないで!』という声が聞こえ、走り続けました。自分が変わったこと、自分の身体が変わったことがわかっています」

 

出典:https://my.clevelandclinic.org/patient-stories/379-nurse-joins-study-for-a-healthier-future

 

 

3. 今後の予定


PX研究会では2020年は勉強会を「PX寺子屋」と銘打ち、全国展開していく予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、すべてオンラインでの開催といたします。

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オンラインによる勉強会、「第2回PX寺子屋」を開催します。

6月20日(土) 13:00-14:00

PX概論    北海道大学歯科医師 濱田 浩美

PXE事例紹介:小松市民病院におけるPX学習会

小松市民病院 病院長 新多 寿/日本PX研究会 代表理事 曽我 香織

 

※Zoom(Web会議ソフト)での開催となります。参加者にはリンクをお知らせします。

※研究会会員は無料、会員外の方は有料(1000円、事前に参加費の振り込みをお願いします)。申し込みは下記リンクからお願いします。

Link: https://www.pxj.or.jp/events/

 

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

編集部から


不織布マスクにより、いわゆるマスク皮膚炎になっています。機能よりも美肌優先で布マスクを投入しました。立体的なつくりはフィット感もよくて気に入っています。(F)