1. 困難な時こそPXとEX
2.連載「Patient Stories」第39回 33年間のお付き合い
3. 今後の予定
1.困難な時こそPXとEX
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)により、世界の医療機関で医療崩壊が起きているなどと伝えられています。それに伴い、患者とスタッフの精神的負担も大きくなっています。
米イリノイ州にあるSmart-ERのChief Experience OfficerのJulie Dankerさんは「患者と医療スタッフの安全はほかのすべてに取って代わるほど重要ですが、患者とその家族が感じている孤立感を克服するためにも、PXをCOVID-19におけるマネジメントに織り込む必要があります」と指摘し、PXおよびEX(Employee eXperience;職員経験価値)を維持するための支援について言及しています。
COVID-19ではリスクとウイルスの拡散を減らすために隔離が不可欠です。人と人との触れ合いをもてないこともあり、不安をやわらげるためにジェスチャーを使っているものの、患者と同じぐらい、ケアする側にとっても難しいと言います。
患者は部屋に閉じ込められており、その部屋に入る際の警告のサインがドアにぶら下げられています。個人的なつながり、快適さは考えられないほど制限され、そのことで落ち込んでいます。スタッフは部屋に入る前にガウン、手袋、マスクをしなければならず、患者とケアスタッフとのかかわりが減ります。患者はこれまで以上にサポートと擁護を必要としているのに、面会者と切り離されます。これは誰にとっても孤独で、恐ろしく、そして不愉快な経験です。
このような困難な時に、医療機関のPXリーダーが患者とスタッフを支援するためにできることとして、Julieさんは以下を挙げています。
・親切なことをする
・アイコンタクトをとる
・ホワイトボードに特別なメッセージを残す
・シーツを清潔に保ち、部屋をきれいにする
・患者さんの基本ニーズを確認し、毎日付き添う
・タイムリーに対応する
・ケアプランにのっとり患者とコミュニケーションを図る
・心配ごとや不安を減らすために問いかけることで患者を励ます
これらのアクションにより、スタッフは患者との交流を深めることで仕事にやりがいを感じるようになります。一方、患者はケアのエクスペリエンスを高く評価するとのことです。患者もスタッフも、COVID-19に直面し、おびえていたとしても、共感は恐怖を打ち負かします。スタッフは一緒に働き、お互いをサポートし共感を与えることで、自分たちがしていることに「WHY」を見出すことができます。
スタッフ同士がサポートしあうとそのサポートが患者にも伝わる、とJulieさんは話しています。そのことが、これまで経験したことがない危機的な状況を乗り越える方法だとも。平時だけでなく、むしろ困難な時ほどPXやEXが重要なことに気づかされます。
2.連載「Patient Stories」第39回 33年間のお付き合い
今回の「Patient Stories」はドナーから提供された心臓と33年間、ともに過ごしてきた男性の話です。患者としての心得、家族としての病気とのかかわり方を知ることが、より豊かな人生につながるものだと教えてくれます。
☆ 父の闘病からケアのあり方を学ぶ
Rick Rideoutさんは33年間、処方されたすべての薬を忠実に服用し、クリーブランドクリニックの医師との予約の時間に必ず行って会うようにしています。彼が長生できているおもな理由は、人生を最大限に生きようという決意だったと、クリーブランドクリニックで2番目に長生きしている心臓移植後の生存者である60歳のRickさんは考えています。
Rickさんは1985年に突然、深刻な心臓疾患を発症しました。ベーカリー製品を運ぶトラックの運転手として週50~60時間働いていて、自由な時間はソフトボールに注いでいました。9月1日、2つのシフトをこなし、ソフトボールの試合でプレイをした後、夕食を食べていたら突然呼吸困難になりました。
医師の診察、1週間の入院後、クリーブランドクリニックでのカテーテル検査を受けて、突発性拡張型心筋症だとわかりました。左心室が損傷、または弱まっているため、心臓が血液を送り出すことが困難な状態でした。「心臓移植が必要になると言われました」とRickさんは回想します。「5年になるか、10年になる可能性がありましたが、数カ月後となりました」
数カ月後、再び激しい息切れを経験した後のフォローアップで、心臓の大きさが2倍になっていることが明らかになり、できるだけ早く移植する必要がありました。当時、心臓移植はそれほど多く行われておらず、Rickさんはドナーの待機リストのトップでした。数週間以内に、ノースカロライナ州のオートバイ事故の19歳の犠牲者から心臓を提供され、移植は成功しました。
「1986年に移植を受けた時、5年生存率は60%でした」と熱心なゴルファーで、スローピッチのソフトボールプレーヤーだった当時を思い出します。「当時26歳で、自分のしたいことを楽しもうと決めていました」。Rickさんは医学的、栄養学的に自分自身をケアしながら、1986年4月14日にRobert Stewart医師によって行われた移植の8週間後にゴルフをしました。医師はゴルフをするには早いと禁止していました。
「移植された一部の心臓が、ほかの心臓よりも長く機能する理由は正確にはわかりません」と医師のJerry Estepさんは述べます。「免疫学的に一致する要素もあり、Rickさんはほぼ完全に一致した心臓を手に入れた可能性があります。重要なのは、彼が心臓をケアするためにすべきことを全部したということです。彼の病気への向き合い方も成功した大きな要素です」
2003年には皮膚がんになり、7回の手術を受けました。心臓移植のレシピエントは免疫抑制剤の使用により、リスクが高くなります。がんはリンパ節と大腿部に広がっていました。医師たちは下肢切断を検討しましたが、Rickさんは効果的にがんを管理し、脚を残せる治療を受けることができました。2014年には腎不全となりましたが、30年もの間服用していた拒絶反応防止薬の副作用の1つです。妻の Mary Annさんの腎臓と完全に一致し、Rickさんは2016年に腎移植を受けました。もう1つ、完全に一致したのは父の闘病から看護師となった、彼らの娘のAshleyさんでした。
「父の心臓移植の意味を尋ねられたら、それは私がここにいるということだと言います」とRickさんの心臓移植の8年後に生まれたAshleyさん。「父が病院や自宅で、すべての面会で経験したことが、両親にとってよい看護師になれと私に教えてくれました」。彼女は患者のために代弁することの意味を身をもって示してくれた母を誇りに思っています。「幼いころからケアする人であることの最もいい例を示してくれた母がしていたことを、日々の仕事で行っています」
出典:https://my.clevelandclinic.org/patient-stories/364-man-has-same-transplanted-heart-for-33-years
3. 今後の予定
日本PX研究会の「第1回PX寺子屋」(勉強会)は今週末、4月18日の開催です。参加できる方はぜひエントリーをお願いします。
4月18日(土) 13:00-14:00
※オンラインでの開催。参加者にはZoom(Web会議ソフト)のリンクをお知らせします。
PX概論 岩井医療財団 システム課・広報課課長 古川 幸治
EXサーベイについて 国立病院機構九州医療センター 小児外科医長 西本 祐子
PX研究会2020年の活動 日本PX研究会 代表理事 曽我 香織
※研究会会員は無料、会員外の方は有料(1000円、事前に参加費の振り込みをお願いします)。申し込みは下記リンクからお願いします。
Link: https://www.pxj.or.jp/events/
※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。
編集部から
待つこと約1年、家ごもりのタイミングで注文していたクッキーが届きました。注文したことも忘れかけていましたが、少しずつ味わうのが楽しみです。(F)