1. COVID-19の渦中でPXを考える
2.連載「Patient Stories」第38回 COVID-19がもたらしたもの
3. 今後の予定
1.COVID-19の渦中でPXを考える
世界各地で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が拡大しています。医療機関は重症者の命を守るための医療提供体制の維持はもちろんのこと、患者と医療従事者のケアも配慮が求められます。医療現場が混乱するなかでPXへの対応も考えなければなりません。
米インディアナ州にあるIU(インディアナ大学)ヘルス・ボール記念病院は、COVID-19によって入院患者と家族との面会が制限されているなかで、患者が家族とつながりを持てる環境を提供しています。
「PXは常に、私たちにとって重要なものです」とエクスペリエンスデザインのディレクターであるDawn Fluhlerさんは話します。同院では、面会ができず、患者と彼らが愛する人の双方が感じる孤独感や不安を和らげるための多く取り組みがあります。
病室には朝8~10時まで個人で使用できる固定電話があり、患者が電話をかけることができます。また、患者がいつでも使用できるWi-Fiが装備されているためスマートフォンやタブレット、パソコンなど個人用デバイスでFaceTimeやZoom、Skypeを利用することも推奨しています。充電器の貸し出しを行っています。デバイスを所有していない場合は、病院がパソコンやタブレットを約1時間貸与します。その際に感染防止対策として洗浄や消毒は徹底しているとのことです。
患者を元気づけるためのメッセージを送れる電子ポストカードは、24~48時間以内に患者に届けられるようになっています。これらの手段がいずれも利用できず、患者が孤独にならないようにしたい場合は、病院スタッフが個人情報などを尊重しながら、患者のもとを訪問しているといいます。
同院では、患者にとって愛する人とのつながりは治療の一部であり、COVID-19という不確定かつ不安なものが蔓延している時期にはますます重要であると認識しています。
また、仮想クリニックを立ち上げ、無料でCOVID-19のスクリーニングを行っているとのことです。専用アプリをダウンロードしたうえで登録、案内に従っていくと適切な治療経路を見つけることができます。医療崩壊を引き起こさない、そしてPXを高めるのにも一役買っていそうです。
Link: https://iuhealth.org/find-locations/iu-health-ball-memorial-hospital
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日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では、医療現場などでPXの担い手となるPXE(Patient eXperience Expert)の第2期生を募集しています。認定取得のための養成講座を6月から開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、開催を延期させていただきます。
新しい開催日程は、2020年9月12日~2021年2月13日の全5回となります。詳細および申し込みは下記リンクからお願いいたします。
Link: https://www.pxj.or.jp/pxe/
※すでに申し込みいただいた方には、事務局から個別にご連絡差し上げます
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米オハイオ州クリーブランドで5月18~20日、開催予定だったPXサミットは新型コロナウイルス感染症の影響で中止となりました。米疾病管理予防センター(CDC)が8週間以内の50人以上が参加するイベントの中止と延期を推奨していること、そしてオハイオ州保健局が100人以上が集まる公開イベントの中止を決定したことによるものです。
Link:http://www.empathyandinnovation.com/cleveland/2020
2.連載「Patient Stories」第38回 COVID-19がもたらしたもの
第38回「Patient Stories」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者と、患者を支える医療者が主人公です。COVID-19は生命にかかわる深刻な影響を与えたと同時に、患者や医療者にも別の意味で、大きな影響をもたらしています。下記リンクのトップにある胸アツ(胸が熱くなる)動画は必見です。
☆ 新しい病との闘いが人生を変える
38歳のITエグゼクティブのNic Brownさんは、妻のCassieさんと息子、2人の娘と暮らしています。3月中旬に、どのようにしてCOVID-19にかかったのかは見当がつきません。頭痛と発熱、そして咳が出た時にはインフルエンザだと思いました。喘息と不整脈の発作を含む病歴があるため、自宅近くの救急を受診し、肺炎の疑いがあるとして治療を受けた直後に気を失いました。そして数ブロック先にある、クリーブランドクリニック・ユニオン病院に運ばれて検査をしたところCOVID-19の陽性反応を示しました。
数日後、Nicさんはクリーブランドクリニックのメインキャンパスにある医療集中治療室(MICU)に運ばれ、生きるために闘っていました。「人は何かに直面するまで、身体の脆弱性など本当に理解していません。妻は連絡を受けて、終末期の選択を話し合う必要があった時期を経験しました。私からみなさんに伝えたいのは、COVID-19が与える影響を誰もが真剣に受け止めるべきだということです」
呼吸科医でるMICUの責任者、 Eduardo Mireles-Cabodevilaさんによると、Nicさんは同院で治療をしたCOVID-19患者の最初のグループの1人でした。「Nicさんやほかの初期の患者からは多くのことを学びました。致命的な病気にかかった時、肺やそのほかの臓器が回復するために私たちがどうケアするのかが関係しています。プロトコル化されたアプローチを導入し、ウイルスを制御する治療を行いました」
NicさんはCOVID-19と診断された後、生き延びるために人工呼吸器をつけてもがきながら、隔離された場所にいました。病室の外につながっている窓は、彼の人生で最も印象に残る窓となりました。
MICUにいる医師や看護師を含む、最も重症の疾患を扱う専門チームのケアスタッフはメッセージを書き込むため、窓ガラスを使いました。「人工呼吸器をつけていた時に、スタッフは私が毎日挑戦し、到達するための目標を書いてくれました。ある日、誰かが『私達はあなたが家に帰れるようにします』と書きました」とNicさん。
親切な行為のお返しに、NicさんはMICUから病状が安定し、Step Down Unitに転棟するときにケアチームに次のような感謝のメッセージを、看護師にお願いして書いてもらいました。
「私やほかの人たちを生かそうと、みなさんが一生懸命働いているのを見ていました。その時には感謝を伝えられませんでした、そして恐らく、あなたたちがしてくれたように私がみなさんに愛やサポートを注ぐ機会は決してないでしょう。しかし私はみなさんが“ロックスター”だと思っていることを知ってほしいです」
「窓ガラスにメッセージを残した理由の1つは、これまでの人生で無私の心をもった人々に会ったことがなかったからです。彼らを通して、神の愛というものが本当に見えました。彼らは私のことを知りませんでしたが、家族の一員であったかのように私をケアしてくれました。それは人生を変えるものでした」とNicさんは振り返ります。
EduardoさんとMICUのスタッフは、ウイルスに関する医学的な洞察を得ること以外に、患者を可能な限りケアしながら治療を行う方法を考えしました。その取り組みの1つとして、部屋の窓を利用して孤立した患者とコミュニケーションをとるという独創的なアプローチがあります。「窓ガラスに単なる文章を書いただけではなく、OKのサインといったジェスチャーも使用します。COVID-19はコミュニケーションをとるうえで障害となりますが、新しいアイデアを受け入れることができれば、さまざまなコミュニケーション方法があることもわかりました」
「Nicからのメッセージは、圧倒的に異なるレベルで私たちの心に響きました。その意味合いは大きい」
「患者が私たちの仕事を認めてくれているとわかれば、間違いなく感動させられます」とNicさんのケアをし、彼がメッセージを残すのを手伝った看護師の1人、Jordan Benschさんは言います。「私たちは常に患者さんを第1に考えています。それが非常に価値があることだとわかっています」
2週間近く入院した後、3月27日にNicさんは退院して帰宅しました。「出迎えてくれた2人の小さな娘を抱き上げてハグし、もちろん妻も抱きしめることができます。人生で2度目のチャンスをもらった気がします」
3. 今後の予定
日本PX研究会の「第1回PX寺子屋」(勉強会)が4月18日に開催です。人数制限はありませんので多くの方に参加いただきたいと思います。お待ちしています!
4月18日(土) 13:00-14:00
※オンラインでの開催。参加者には4月13日(月)にZoom(Web会議ソフト)のリンクを一斉配信する予定です。
PX概論 岩井医療財団 システム課・広報課課長 古川 幸治
EXサーベイについて 国立病院機構九州医療センター 小児外科医長 西本 祐子
PX研究会2020年の活動 日本PX研究会 代表理事 曽我 香織
※研究会会員は無料、会員外の方は有料(1000円、事前に参加費の振り込みをお願いします)。申し込みは下記リンクからお願いします。
Link: https://www.pxj.or.jp/events/
※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。
編集部から
最近は出勤、時々在宅の生活を送っています。昼間家にいて、猫はずっと寝ていることを知りました。ぐーたらとした様子を見ると癒されます。このような状況ですが、みなさまにも心穏やかに過ごせるひとときがあることを願っています。(F)