日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.98

1. PXJ(Patient Experience Journal)の紹介
2.連載「Patient Stories」第36回 アレルギーにはアレルゲンを
3. 今後の予定

1.PXJ(Patient Experience Journal)の紹介


海外におけるPXの研究や取り組みのリソースとして、Patient Experience Journal(PXJ)があります。PXJは査読済みのオープンアクセスの出版物で、PXの理解と改善に焦点を当てています。200を超える国と6500以上の地域で読まれているとのことです。4月と11月の年2回と、7月に特別号を発行しています。2019年11月発行のVol.6が最新号です。

 

Vol.6では、「PXの未来:ここからどこに行くべきかについての5つの考え」「比較することは公平か? 2週間内に2つの医療機関の脳神経外科チームにかかった患者と家族のエクスペリエンス」「急性期病院での患者のセカンドオピニオン」といった記事が掲載されています。

ブリティッシュコロンビア大学の作業療法士、Laura Yvonne Bulkさんらによる「患者の視点:プロフェッショナリズムの4つの柱」では、医療従事者のプロフェッショナリズムとして、患者視点への理解を深めることを目的とした研究が紹介されています。

21人の患者へのインタビューとフォーカスグループ(グループ対話形式で自由に発言してもらうこと)を行った結果、①ヒューマンファーストに向けた協働、②心と心とのコミュニケーション、③誠実な行動、④適切な実践――がプロフェッショナリズムの4つの柱として分類されました。そのうえで、プロフェッショナリズムについての患者の視点と医療従事者の視点との相違点などを分析。研究の参加者は、「患者としてではなく個性ある一人の人間としてみる」「患者はチームの一員であり、患者の知識や経験が認められるべき」などと話し、患者をケアチームに統合することの必要性を指摘しています。

 

PXJは医療サービスの提供や質、安全性に影響を与える患者や組織、研究者のほかPXを実践する医療の専門家、政策立案者に対して情報提供を行っています。最新の研究や理論、方法論を紹介する記事は、2人以上の患者を含む編集委員会で議論されています。また査読にも患者がかかわっています。

下記リンクから記事を無料でダウンロードできます。下のほうにスクロールしていくと世界地図があり、各国でどの記事が読まれているかがリアルタイムで表示されるなど、ビジュアルも工夫されています。

Link: https://pxjournal.org/journal/

 

 

2.連載「Patient Stories」第36回 アレルギーにはアレルゲンを


「Patient Stories」の第36回は、食物アレルギーを発症した幼児の話です。現在のアレルギーの克服方法について知らなったので驚いてしまいました。何ごとも早めの対応が大事ですね。

 

☆ アレルギー治療のプロトコルに変化

ピーナッツを含む特定の食物を少量でも食べると、生後6カ月のHarperちゃんの顔に赤い斑点ができました。母親のKatie Hoosenallyさんは娘の反応を見てすぐに、アレルギーの影響を克服するために何かしなければならないと悟りました。「反応が穏やかな限り、毎日少しずつピーナッツを与えることがアレルギーの克服に役立ち、大人になってアレルギーを起こさないようになります」とKatieさんは言います。

Harperちゃんは現在3歳で、小さいころからクリーブランドクリニックのアレルギー専門医で Cleveland Clinic Food Allergy Center of Excellence (FACE)で働くSandra Hongさんに診てもらっています。「人生の早い段階でHarperのように小さなアレルギーを見つけられれば、免疫システムは非常に柔軟なため、耐性をつくることができた場合のアレルギー反応は重大にはなりません」

ピーナッツアレルギー研究の結果は、アレルギー反応を起こす食物の回避を中心とした、アレルギー治療に関する従来のプロトコルを変えています。現在の好ましい治療法は、早期にアレルゲンを食事に取り入れることです。「最初に聞いたときには、まったく意味がないものだと思いました。今、Harperは好きなだけピーナッツを食べることができます」とKatieさん。

Oral Immunotherapy (OIT;経口免疫療法)と呼ばれる治療法は、アレルギー専門医が患者への治療のすすめ方を変えていて、FACEで行われている治療のメインとなっています。FACEには栄養士と心理学者がいて、心理学者はアレルゲンに対処する患者の不安に対応しています。

「食物アレルギーをもつ多くの子どもはいじめに遭っています。彼らは1人で昼食を我慢して食べなければならないし、アレルギー反応を起こさないためにパーティやイベントなどに行けないのです」とSandraさんは説明します。

患者とその両親、ケアする人は食物アレルギーに対し、身体が常に変化していることを注意しなければなりません。以前、木の実アレルギーには陽性でなかったHarperちゃんは2歳のときにカシューナッツを含んだエナジーバーを噛んだ後、深刻な反応を経験しました。自己注射でエピネフリンを投与するまで、顔が腫れて呼吸困難になりました。「私たちは人生でいつでも食物アレルギーを発症するということを学びました」と、Sandraさんの指導のもとでピスタチオやピーカンを含む木の実をゆっくり取り入れているKatieさんは指摘します。結局は、カシューナッツも追加されました。

出典:https://my.clevelandclinic.org/patient-stories/370-child-with-peanut-allergies-turns-to-same-food-to-build-tolerance

 

 

3. 今後の予定


「オンライン寺子屋」(勉強会)を4月18日(土) 13:00-14:00、Zoom(Web会議ソフト)を使用して開催します。

 

テーマは、「2020年のPX研究会の活動予定」「最近のトピック」です。トピックについては詳細が決まりましたらメールマガジンでお知らせします。時間になりましたら、以下のURLからお入りください。

※前号のメールマガジンで研究会会員限定とお伝えしましたが、どなたでも参加可とします。非会員の方は参加費1000円を予定、事前振り込みでお願いします。会員は無料です。

https://zoom.us/j/322951494?pwd=UzRSbXR6WkRCQlFGdFZTeTlCU09jQT09

※参加に必要なパスワードは申込いただいた方に個別にお伝えいたします。申し込みは下記リンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/events/

 

 

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

編集部から


友チョコのお返しにかわいいチョコレートをもらいました。映画「チャーリーとチョコレート工場」の元となっているイギリスのお店だそうです。いくつになっても美しい箱とリボンは気分を上げます。(F)