日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.85

1.PX関連イベント&新たな「HX」
2.連載「Patient Stories」第23回  腹筋を2倍にする13時間の手術
3. 今後の予定

1.PX関連イベント&新たな「HX」


PX関連のイベント「Patient Experience Conference 2020」が4月20~22日、米フロリダ州オーランドで開催されます。アメリカ最大のPX推進団体であるThe Beryl Instituteが主催するもので、世界のヘルスケアに携わるプロフェッショナルが集まり、PX改善に取り組むための学習機会の場となります。

 

イベントでは5つの基調講演やさまざまなセッションが、3日間にわたって組まれています。

各セッションでは、PXにおける経営幹部や医師、看護師のリーダーシップ、患者満足度、すぐれたサービス、患者とその家族のサポート、マーケティング・コミュニティへの働きかけ、組織開発、医療の質と安全性といった分野を取り上げます。

参加者は興味のあるセッションを選ぶことにより、自分の組織での実践につながる学びを持ち帰ることができます。さらに、PXに取り組むほかの参加者とアイデアを共有するといったネットワークづくりにもつながるとのことです。

参加費用は1月31日までの申し込みで会員約11万5000円、非会員約13万円です。同日以降は会員約12万円、非会員約13万5000円となります。イベント概要および参加登録は、以下サイトになります。

Link:  https://www.theberylinstitute.org/page/CONF2020_OVERVIEW

 

The Beryl Instituteでは、2030年のヘルスケアを見据えたプロジェクト「Future of Human Experience 2030」を立ち上げています。ヘルスケアは目の前にいる人をケアするという考えのもと、HX(Human eXperience)へのコミットメントを図るために次の10年間で何が必要なのかを探っていくというものです。プロジェクトのマイルストーン(中間目標)を設定するため、世界でPXにかかわる人たちのコミュニティをつくり、さまざまな意見を集めています。メンバーシップ登録(下のリンクからできます)すれば、日本からでもコミュニティへの参加が可能です。プロジェクトに参加された方は編集部までご一報ください!

Link: https://www.theberylinstitute.org/general/pick_username.asp

 

 

2.連載「Patient Stories」第23回 腹筋を2倍にする13時間の手術


第23回「Patient Stories」は先天性疾患の男の子と母親、治療にかかわった医師が主役です。早期診断と介入によって患者のQOLを高めることができた例です。どんなことにも言えることですが、早めの対応と正確な判断が大事なことに改めて気づかされます。そして、患者と医療者が信頼関係を築くには、医療者側のコミュニケーション力がキーとなります。

 

☆患者に包み隠さず、理解できる言葉で話す

米ノースカロライナ州に住むNicole Billupsさんは2010年11月10日に、出産予定の5週間前に帝王切開で息子のJustin Loveさんを出産しました。生まれた時、 Justinさんはお腹に穴が開いており、腫れて垂れさがっていました。腹筋が弱く、尿路の異常により腹部にプルーンのようなしわができるプルーンベリー症候群(PBS)でした。

Justinさんは生後18カ月の時に、Nicoleさんの家族がいるクリーブランドクリニックで質の高い治療を受けました。「Justinはノースカロライナ州で腎臓の小さな手術を何回か受けましたが継続的なケアが必要でした」とNicoleさんは言います。「クリーブランドクリニックに電話し、PBSの専門知識をもつ医師がいるかをたずねたところ、Audrey Rheeさんを紹介されました」

クリーブランドクリニックチルドレンズの小児泌尿器センターの所長であるAudreyさんは、「Justinは手術を受けた後も、尿の腎臓への逆流などの症状があり、精巣が腹部内にあり陰嚢に落ちていませんでした。再建が必要な弱い腹壁もありました」と説明します。

3歳の時にJustinさんは尿管をまっすぐにし、膀胱を縮小、腹壁を再構築することで腹筋を2倍にするための13時間におよぶ手術を受けました。膀胱を空にすることができず、尿が溜まることによる感染、腎臓への損傷に対応するため、腹部から膀胱に尿を通すカテーテルを留置しました。

「Audreyさんは物事を包み隠さず、私が理解できるように話してくれました。質問にも、時間をかけて答えてくれました。彼女は医師というだけでなく、とても思いやりのある人です。Justinのことを単なる患者以上に、大事にしてくれていると感じます」とNicoleさんは感謝しています。

手術後、Justinさんは2年以上感染症もなく、成長しています。年1回、受診するためAudreyさんと会っています。

クリーブランドクリニックの小児腎臓医のCharles Kwonさんは「Justinと彼の家族に対し、最初から学術に基づいたチームアプローチができ、Audreyさんの入念な手術計画と介入によって腎臓機能を維持することができました」と指摘します。「早期診断と介入がポジティブな結果をもたらすことができるという素晴らしい例です。Justinと彼の母親は、日常の慢性的なケアの必要性を理解し受け入れており、それが今の治療成績にもつながっています」

将来、Justinさんは腎臓の機能不全により透析や腎臓移植が必要となるかもしれません。Nicoleさんは「私たちがコントロールできないものについては、信じなければなりません。私はJustinの運命を神の手に委ねています。Justinのシャツの中を見ない限り、彼のどこが悪いのかを知ることは決してないでしょう」

 

出典:https://my.clevelandclinic.org/patient-stories/332-family-comes-back-home-to-cleveland-for-treatment-of-sons-rare-medical-condition

 

 

3. 今後の予定


第31回勉強会はいよいよ今週末、12月14日(土)の開催です。今年の振り返りと来年に向けた活動報告、発表などPXの“年納め”となります。

 

第31回 PX研究会 勉強会

12月14日(土)15:00-17:00

場所:イトーキ SYNQA

https://www.synqa.jp/access/

※通常と開催時間が異なります。間違えのないようにお越しください。

 

「PX概論」 松下記念病院 看護部看護師長 小松良平

「PX分科会リーダーによる活動報告」

「1年の振り返り」 公立昭和病院 事務局業務課課長 笹野孝

 

会費:勉強会参加費 1000円(研究会員は無料)

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

 

編集部から


美しいリバーレースとシルクの見本にときめきながら、あるものをビスポークでオーダー。大人の女性の楽しみをひとつ、見つけてしまいました。(F)