1.雑誌『病院羅針盤』でPX特集!
2.連載「Patient Stories」第20回 子どもから大人にどう移行する?
3. 今後の予定
1.雑誌『病院羅針盤』でPX特集!
病院経営の課題解決につながる情報、取り組みを紹介する雑誌『病院羅針盤 2019年11月15日号』(産労総合研究所)の特集で、PXが取り上げられました。「PXで病院・施設が変わる、患者・利用者が変わる」のタイトルで、日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会の3人のメンバーが寄稿しています。
代表理事の曽我香織さんが担当した解説は、「ペイシェント・エクスペリエンス(PX)の可能性」としてPXの定義やPS(患者満足度)との比較を紹介。海外の概況に触れながら、日本の病院でのPX向上について考察しています。
PXと医療の質との関連性、「PXが非常に高い病院はPXが平均的な病院よりも利益率が高い」など、PXが病院経営に寄与するといった海外での調査結果について触れています。また、PX改善を主導する人材(PXE;Patient eXperience Management)の育成や改善に向けた病院へのサポートなど、日本PX研究会の活動を紹介したうえで、「医療者が患者のストーリー・ニーズに耳を傾ける意識や姿勢を持つことがPXを高め、患者のロイヤルティや良い口コミを生み、結果として病院経営向上につながる」としています。
病院におけるPXサーベイの実施および改善事例を、国立病院機構九州医療センター小児外科医長の西本祐子さんがまとめています。
アメリカのPXサーベイHCAHPS(Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)を和訳したものと比べて、日本版PXサーベイは日本人にとって回答しやすく、改善行動につなげやすいことなどを、自院での取り組みから指摘。PSスコア(患者が入院経験を10段階で評価したものの平均値)と相関がある設問をもとに、病棟や外来での具体的な改善行動と目標値を掲げ、PDCAサイクルを回し始めたことなどを報告しています。
訪問看護ステーションでの在宅支援におけるPX活用については、訪問看護ステーション 「acty*home 」の事業責任者である講内源太さんが紹介しています。
「PXの概念を用いた業務プロセスの検討」と題し、在宅サービス提供での質の担保策の1つとして、PXを取り上げています。訪看ステーションにおけるペイシェント・ジャーニーマップを作成したうえで、類似点が多く見られた日本版PXサーベイ・外来編をもとに、訪問業務プロセスにつながる設問を追加した全23問で調査を実施。結果から、改善を必要とする「弱み」として、スタッフの清潔感やサービス介入後の日常生活での注意点についてのわかりやすい説明などを挙げ、事業所内で共有しています。訪看ステーションでPXを活用するメリットとしては、「介入プロセスが一定の質を担保できているのかを検討する指標になる」と言及。質を担保したうえで介入を継続して行うことがQOLやQOD(Quality of Death)の個別ニーズの発掘につながるのではないかと結論づけています。
特集内容を詳しく知りたいという方は、本誌をご一読ください。
Link: https://www.e-sanro.net/magazine_iryo/rashinban/k20191115.html
2.連載「Patient Stories」第20回 子どもから大人にどう移行する?
第20回「Patient Stories」は幼児期から重度の障害を抱える息子をケアする家族と、それを支える医療チームのストーリーです。小児医療から成人医療へ、スムーズに移行するためにどんなサポートが必要なのか。日本ではどうなのか。考えさせられます。
☆息子のなかに美しさを見出す
Thomas Riceさんが生後3カ月の時、彼の両親は何か問題が起きていることに気づきました。彼らの赤ん坊が物体や光に焦点を合わせようとすると、その目は片側を追い続けていたからです。眼科医に相談したところ脳腫瘍を疑い、MRI検査を推奨されました。腫瘍は見つからなかったものの、てんかんが見つかり、脳に異常があると診断されました。
数カ月後、オハイオ州ハドソンに住む Rice夫妻は息子をクリーブランドクリニック小児病院に連れて行きました。「正式な診断をとるためのプロセスの始まりでした」と母親のSueさんは言います。「彼に起きているすべてのことが、多くの異なる専門家のもとに私達を連れて行きました。彼を看護していた時に起きるひどい逆流症状など、私たちはあらゆる症状と課題に日々対処しなければなりませんでした」
Thomasさんのケアを担当した専門家チームのなかには、小児神経科医とてんかん専門医、発作に対応するサブスペシャリストがいました。Thomasさんの脳の異常のタイプに特化した、オハイオ州外にいる神経学者、遺伝学者を紹介され、クリーブランドクリニック小児病院は引き続き、日々の医療管理を支援しました。
Thomasさんは思春期、青年期、成人期へと成長していきましたが、歩行や会話能力は発達しませんでした。22歳となり、Riceさん一家はクリーブランドクリニックの医療チームと協力しながら、小児から成人の医療へと移行しています。「私はかつて、今の生活状況を迎えることを非常に恐れていたのを覚えています」とSueさん。「しかし1つの場所に必要とするすべての医師がいる素晴らしい医療施設があり、スタッフがともに歩んでくれれば、それほど恐ろしくはありません。素敵なことです」
専門家チームには医療やサポートサービス、学校などThomasさんのニーズを確実に満たしてくれる看護師やケアワーカーなども含まれていました。小児複合ケアのNP(Nurse Practitioner)であるJulie Corderさんは、プライマリ・ケアプロバイダーとして、Thomasさんのケアの調整などを行っています。「患者のもとを多く訪問し、短期的な病気やけがをみています。我々の看護コーディネーターはほかのケアスタッフの訪問を調整するために働き、家族に余分な手間がかからないようにしています。在宅看護、リハビリなどの支援サービスに関する大量の書類を毎日処理しています」
チームは、患者が小児医療から成人医療に移行する際にコミュニケーションが重要であることを認識しています。「コミュニケーションがとれる素晴らしいチームと、これまでの治療歴などしっかりとした電子医療記録があることを示すことで、患者の不安をやわらげるようにしています」
気配りのできるチームは子ども同様のThomasさんにとって、成人期においても引き続き重要だとSueさんは言います。「JulieさんはThomasを見て全身状態を把握し、自宅での医学的ケアをサポートできます。私たちには複数のニーズを理解している、ケアの核となる人が必要です」
Sueさんは同様の課題に直面するほかの家族を支援するため、クリーブランドクリニックの小児患者の家族を支援しているPXオフィスがつくったボランティアグループ「Cleveland Clinic Children’s Healthcare Partners」に参加しています。ケアの質と患者安全のための管理プログラムコーディネーターであり、ケアリーダーの Jessica Preyssさんは、「私たちは患者の親または患者自身がケアチームの一員であり、行われていることへの発言権があると思っています。一例ですが、Sueさんを含む親たちは、新しい小児外来センターの設計をサポートする提案を行いました」と振り返ります。
Jessicaさんによると、患者の小児から成人への移行プロセスづくりは多くの病院の課題となっています。クリーブランドクリニック小児病院がHealthcare Partnersと協力することで、ベストプラクティスを導くことができる可能性があります。
「Thomasのような子どもは誰もが恐れ、一部の人は『自分の子どもでなくてよかった』と言うでしょう。しかし彼は若者となって、私たちに大きな喜びを与えています。私たちは素晴らしい医療チームに助けられてきました。サポートにより、私たちは立ち止まることができ、息子のなかに美しいものを見出すことができます」とSueさんは語ります。
3. 今後の予定
第31回勉強会を12月14日(土)に開催します。1年の締めくくり、今年の振り返りと来年に向けた活動報告を行います。
第31回 PX研究会 勉強会
12月14日(土)15:00-17:00
場所:イトーキ SYNQA
※通常と開催時間が異なります。間違えのないようにお越しください。
「PX概論」 松下記念病院 看護部看護師長 小松良平
「PX分科会リーダーによる活動報告」
「1年の振り返り」 公立昭和病院 事務局業務課課長 笹野孝
会費:勉強会参加費 1000円(研究会員は無料)
※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。
編集部から
前号に続き青森紀行。紅葉シーズンは終わっていると聞いていたので期待していなかったのですが八甲田山の中腹で、何層にも重なった緑と赤と黄色の帯を愛でることができました。モミジ以外の紅葉を見たのはほぼ初めてで、青森LOVE(笑)が止まりません。(F)