日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.74

1.第4回PXE養成講座を開催!
2.連載「Patient Stories」第15回  手術で魔法の力を取り戻す
3. 今後の予定

1.第4回PXE養成講座を開催!


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では9月21日(土)にPXE養成講座を開きました。5月からスタートした講座も全5回のうち4回目となり、いよいよ終盤。この日はペイシェント・ジャーニーマップを作成しました。

 

ペイシェント・ジャーニーマップは、患者の行動や状態を詳細に把握するためのツールです。患者になりきって医療やサービスを眺めることで、普段気づかない改善点を見つけることができるフレームワークの1つであり、エクスペリエンスや患者満足度(PS)の向上、顧客ロイヤルティの創出につながるものです。

前回の講座では、PXを高めるために職種・部署間連携を強化し、病院全体として患者のPXを把握したうえでマネジメントするPXM®(Patient eXperience Management;PXマネジメント)の考え方を紹介しました。ペイシェント・ジャーニーマップは可視化→PX改善→構造改革というPXM® のアプローチのなかで、可視化し改善につなげるという位置づけです。

ペイシェント・ジャーニーマップの作成は、対象となる患者像(ペルソナ)を設定したうえで、入院から退院(転院)までの行動を分類し、その過程での患者の感情の変化を洗い出したうえで、課題・改善ポイントを検討。完成したジャーニーマップをもとに、改善に向けたアクションプランを考えました。

グループに分かれてペイシェント・ジャーニーマップを作成。80歳の患者になりきって行動の洗い出しをしました。「ストレッチャー」「執刀医」など、医療者になじみのある言葉は使用NGです。
患者の行動と感情をアウトプット、ポストイットに書いたものを貼っていき、整理しているところ。熱心に話し合っていますね!
グループごとに対応策と、PXを高める医療サービスについて発表。このグループでは、医療者が患者に同じことを何度も聞いてしまう状況から「情報共有シート」の作成を考えました。
作成したジャーニーマップ。各ステージでの患者行動、接点(ヒト・場所)、感情の変化を踏まえた対応策を打ち出しました!

 

PXE養成講座は次回、10月19日(土)で最終回となります。患者視点のコミュニケーションについて学びます。

Link:https://www.pxj.or.jp/pxe/

 

2.連載「Patient Stories」第15回 手術で魔法の力を取り戻す


さまざまな患者の、さまざまなストーリーを紹介する連載も第15回です。今回は、先天性の心疾患がありながら自分で自分の限界を決めず、好きなスポーツを続けている若い女性が主人公。強い意志と生き方には、共感と勇気をもらえます。

 

☆限界を決めるのは病気でなく自分

一卵性双生児のKiersten GrumbosさんとGabrielle Grumbosさんは外見以外にも多くの類似点がありますが、大きな違いの1つに、Gabrielleさんがファロー四徴症(TOF)という先天性の心臓疾患に苦しんでいることがあります。肺動脈の入口が狭く、血液が肺に流れにくく大動脈に流れやすいため静脈血が全身に流れてしまうことで血液中の酸素濃度が不足し、肌が青みがかった色(チアノーゼ状態)になります。通常、生涯を通じて1回以上の外科的修復により治療が可能です。

「私たちはGabrielleに対し、Kierstenと同じようにできる限りのことをさせようとしました。彼女が望むことは何でもトライさせました」と母親の Leilaさんは話します。「Gabrielleに限界を押し付けることなく、彼女がやりたいことを自分で決めさせたかったのです」

Gabrielleさんは生後5カ月の時に手術を受け、普段の生活にはほとんど影響しませんでしたが、ハードなスポーツのみ制限がかかりました。Kierstenさんと同じくサッカーをしていましたが、8年生の時に断念しました。大きなフィールドを絶えず走り回らなければならず、試合中にあまりにも多くの休憩をとる必要があったからです。「それぞれにスポーツには特徴があり、一部のスポーツは持続的なランニングを必要としません」とクリーブランドクリニックの小児心臓専門医であるKenneth Zahkaさんは説明します。「身体と目の状態が普通であるならば、短距離を走ればいいソフトボールは理想的なスポーツです」

Gabrielleさんは毎年検査を受けて、病気の状態を確認しています。高校1年から2年にかけての検査結果で、肺動脈弁を交換するタイミングだとわかり、2年生の時に手術しました。「心臓の大きさと運動能力が合っていませんでした。手術後、彼女は元気になり、魔法の力を取り戻しました」とKennethさんは振り返ります。

2回目の手術により、Gabrielleさんは3カ月運動できず、6カ月ソフトボールに復帰できませんでした。「肉体的にも精神的にもつらい時でした。もう二度とプレイできないかもしれないと思い、怖かったです。でも一生懸命頑張って復帰しようと、決して諦めないことが重要でした。あきらめてしまったら心臓手術は無益なものとなってしまったでしょう」

Gabrielleさんは大学でソフトボールを続ける予定です。そして今後のキャリアとして運動心理学を学ぼうと意気込んでいます。「スポーツは私にとって非常に大きな意味があります。ほかのアスリートが困難を克服するのを助けたいと思っています」

Kennethさんはほかの患者のロールモデルとして、Gabrielleさんを誇りに思っています。「先天性心疾患で自分自身を決めつけず、自分が人としてどうありたいのかで決めてください。Gabrielleはまさにそれを行っています」

 

出典:https://my.clevelandclinic.org/patient-stories/311-high-school-athlete-overcomes-complex-heart-condition-becomes-softball-standout

 

☆☆☆

日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では今年から、PXの高い医療機関を投票によって決める「PXアワード」を開催します。医療従事者、患者、企業の方、どなたでも投票可能です。PXの高い医療機関として推薦する医療機関名と推薦理由、あなたの患者としてのストーリーをお寄せください。

PXアワード2019

 

3. 今後の予定


第30回勉強会を10月19日(土)に開催します。患者の声を聞くことでPXを考えたいと思います。多くの方の参加をお待ちしています。

 

第30回 PX研究会 勉強会

10月19日(土)13:30-15:30

場所:(株)セントラルユニ マッシュアップスタジオ

http://www.central-uni.co.jp/mashup-studio/

※通常と開催場所が異なります。間違えのないようにお越しください。

 

「PX概論」 国際医療福祉大学大学院教授 斎藤 恵一

「8カ月に及ぶがん治療における私のPXについて」 ティーペック株式会社 がん対策推進企業アクション 認定講師 花木 裕介

 

会費:勉強会参加費 1000円(研究会員は無料)

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


すっかり秋になりましたね。服オタには楽しいシーズンの到来です。ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリと来春のファッションコレクションが開催中で、気分転換にネットサーフィンしています。リチャード・セラの彫刻からインスパイアされたヒールの靴にときめきました。(F)