日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.72

1.若者×シニアで理想の病院づくり
2.連載「Patient Stories」第13回 アスリートの4500マイルの旅
3. 今後の予定

1.若者×シニアで理想の病院づくり


イギリスやアメリカにおいて、PXは病院の設計や運用に欠かせない要素となっています。実際にPXを重視したレイアウトやインフラを整備した病院づくりが行われています。日本でそのような医療機関をつくるのが日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会の目指すところであり、理想です。

今回のトピックは、9月7日に開かれた理想の病院づくりのワークショップ(主催団体:特定非営利活動法人Bizjapan、一般社団法人日本クールシニア推進機構、合同会社Colonb’s、任意団体Global Shapers Community 横浜ハブ)を紹介します。若い世代とシニア世代が一緒に描いた理想の病院とは、どのようなものでしょうか。

 

ワークショップは、若者とシニアの協業を目指す「はなさかさん」プロジェクトが、医療とヘルスケアに特化したデザインチームである合同会社Colonb’sと共同で企画。高校生、大学生の若い世代とアクティブシニアの約40人が参加しました。

現実の制約を取り払った理想の病院を考えることで、現実の世界で理想的な医療、病院のあり方が見えてくる――という前提でワークショップは進められました。グループに分かれて病院の課題と、「人生で楽しかったこと、よかったこと」を挙げて、それぞれを組み合わせることにより理想の病院のアイデアを具体化していきました。

挙がったアイデアから気づいたことがあります。さまざまな課題の根幹にあるのが、患者にとって医療は専門性が高すぎる、ハードルが高いことです。そこから生じるコミュニケーション不足をいかに補っていくかが、PXを高めることにもつながっていくと感じました。

 

理想の入院病棟を考えたグループでは「病院食」「対人コミュニケーション」「病棟環境」「医療関係者」「治療へのモチベーション」を課題として挙げ、「達成感」「非日常を感じる」「自由」「美味しさ」「つながり」というポジティブな感情と組み合わせてアイデアを出していました!

 

各グループのシニアと若者が2つのアイデアを描いたものを説明しながら発表。世代を越えた共創から、わくわくするアイデアが生まれていました。
「はなさか病院」の待合室、診察室、病棟での患者と家族、そして家(在宅)での理想の医療サービスのアイデアがずらり。「飲み切りたくなる良薬システム」「夢の国を楽しめる待合室」「温泉とベンチだらけの病湯(病棟)」など、具現化できたらいいなぁと思うものばかりでした!

「はなさかさん」プロジェクト  https://cool-seniors.org/?page_id=309

合同会社Colonb’s https://colonbs.com/

 

 

2.連載「Patient Stories」第13回 アスリートの4500マイルの旅


「Patient Stories」の第13回の主人公は、マラソンランナーです。肝臓の良性腫瘍を摘出しなければならなくなった時、いかに早くマラソンを再開できるかを考えた彼女は、クリーブランドクリニックでの腹腔鏡下手術を選択しました。患者が自身のライフスタイルを崩さないために医療、病院を選択すること、患者の思いに医療者がいかに応えるかの大切さが理解できるストーリーです。

 

☆自分に最適な治療を見つける

ハワイ在住のメークアップアーティストであるRachel Parkerさんは、30を超えるフルマラソンと100マイルのウルトラマラソンを完走しているアスリートです。2019年に入ってから気管支炎と肺炎の発作を起こしたうえ、腎臓の感染症で入院しました。胸郭に鈍い痛みがあり、検査を受けたところ、血管周囲類上皮細胞腫瘍(PE Coma)が見つかりました。良性でしたがその後の検査で腫瘍が大きくなっており、悪性になる可能性があるため切除する必要がありました。

「ハワイの外科医は手術できると言いましたが、私はアスリートなので回復までの期間を延ばしたくないことを彼は理解していて、『あなたはアメリカで一番の外科医のところに行く必要がある』と言いました」とRachelさん。Rachelさんは、世界の外科医でほんの一握りしかできない腹腔鏡下での肝臓の切除ができる、クリーブランドクリニック消化器病外科研究所の腹腔鏡肝臓手術のディレクターである Choon Hyuck David Kwonさんの診察を受けるため、ハワイから約4500マイル離れたオハイオ州クリーブランドに足を運びました。 腹腔鏡下手術での肝臓の切除は「箸でレゴを組み立てる」と表現されるほど、繊細な手技です。Choonさんは「切開が小さければ痛みは少なく回復が早く、ヘルニアの発生率も下がります」と説明します。

Rachelさんは肝臓の右葉の腫瘍を摘出し、手術後2日で退院しました。「3カ月間は走れるとは思っていませんが、通常の開腹手術よりはかなり早く、マラソンが再開できると思うわ」と話し、12月のホノルルマラソンのスタートラインに立つことを目標としてます。

クリーブランドクリニックでは、肝臓切除のほぼ半数は腹腔鏡下手術で行っています。これは全米の平均の5倍以上の実績です。Choonさんは今後、この術式による生体肝移植を考えています。

Rachelさんは積極的に病気と向き合い、自分に最適な治療方法を見つけることができたことを喜んでいます。「怖いからといって健康上の問題を無視しないことが私のアドバイスです。私と同じように、治療に役立つ最高のチームを見つけてください」。

 

出典:https://my.clevelandclinic.org/patient-stories/320-marathon-runner-plans-next-race-thanks-to-minimally-invasive-surgery

 

☆☆☆

日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では今年から、PXの高い医療機関を投票によって決める「PXアワード」を開催します。医療従事者、患者、企業の方、どなたでも投票可能です。PXの高い医療機関として推薦する医療機関名と推薦理由、あなたの患者としてのストーリーをお寄せください。

PXアワード2019

 

3. 今後の予定


10月19日(土)に第30回勉強会を開催します。患者側から語っていただくゲストの話を聞ける好機です。多くの方の参加をお待ちしています。

 

第30回 PX研究会 勉強会

10月19日(土)13:30-15:30

場所:(株)セントラルユニ マッシュアップスタジオ

http://www.central-uni.co.jp/mashup-studio/

※通常と開催場所が異なります。間違えのないようにお越しください。

 

「PX概論」 国際医療福祉大学大学院教授 斎藤 恵一

「8カ月に及ぶがん治療における私のPXについて」 ティーペック株式会社 がん対策推進企業アクション 認定講師 花木 裕介

 

会費:勉強会参加費 1000円(研究会員は無料)

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


先週、夏らしいもこもこした雲を見つけてうれしくなりました。でも空は高く感じられ、「天高く馬肥ゆる秋」の言葉が頭をよぎりました。馬のごとく肥えないようにしたいです。(F)