1.ライフサイエンス企業はPXをどう捉える?
2.連載「Patient Stories」第12回 素晴らしい医師の見つけ方
3. 今後の予定
1.ライフサイエンス企業はPXをどう捉える?
前回のメールマガジンで紹介した、日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会の第29回勉強会ではマーケティングにおけるCXからPXを考えてみました。タイミングよく、米ヘルスケアマーケティング業界誌『PM360』でPX関連の記事を見つけたのでご紹介します。ライフサイエンス企業がPXをどう捉えているのか、興味深い内容となっています。
同誌は製薬、バイオテクノロジー、医療機器メーカーのマネジメント層向けに毎月発行。最先端の戦略、技術革新、ブランディング、広告とプロモーション、患者と専門教育、市場調査、組織リーダーシップなど、製品マネジャーや医薬品マーケティングの専門家に必要な実用的な情報を提供しています。
記事は「Four Key Questions About Patient Experience in 2019」のタイトルで、患者により良いサービス提供するために企業がどう変化していかなければならないのかを、4つの質問をもとに、PXの識者に聞くというものです。
4つの質問は、以下になります。
①ライフサイエンス企業が患者に提供するサービス、エクスペリエンスで改善や橋渡しをする必要があるものとは?
②ジャーニーを通じて、企業が患者にシームレスなエクスペリエンスを提供するため、すべての部門がベクトルを合わせられる社内体制づくりは?
③リアルタイムでの患者情報へのアクセスを増やすことが、患者をよりよく理解し、PXを改善することにどう役立つのか? どんな患者データがPX向上に最も有用か?
④患者がライフサイエンス企業に対応する際、相互作用を望んでいると考えれば、企業はどのように患者とのかかわりを改善し、より信頼関係を築くことができるか?
これらの問いに対する12人の識者のコメントが紹介されています。
医療デジタルマーケティング会社closerlookのManaging DirectorであるNikkie Jonesさんは、「患者の信頼を築くための1つの方法は、シンプルにコミュニケーションを図ること。有用でわかりやすい情報を提供することは、患者との強固な関係づくりで大いに役立ちます」と回答。企業がリスク回避のためにあえて複雑な言い回しをすることにより、伝えたいことが顧客に理解されず、誤解と不信につながっていると指摘します。患者が自身のヘルスケアを理解できるような取り組みとして、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社が医学用語を簡単に説明するUPL(Universal Patient Language)を、患者も参加して開発した事例を挙げ、患者の信頼と強い友好関係がつくれたとしています。
そのほかの識者のコメントは、以下のリンクで読むことができます。多くの人が、患者や関係者間のコミュニケーションの重要性と、テクノロジーを活用したアプローチに言及していることに注目です。
Link: https://www.pm360online.com/four-key-questions-about-patient-experience-in-2019/?GTTabs=0
2.連載「Patient Stories」第12回 素晴らしい医師の見つけ方
クリーブランドクリニックの患者ストーリーを紹介する「Patient Stories」。第12回は、誤診のために呼吸能力が下がった女性が同クリニックで治療を受けて、QOLを改善するまでの話です。同クリニックでは一人ひとりの医師を五つ星でレーティングし、ホームページで公開。患者と医療者が検査結果などを供覧できるMyChartというアプリの活用にも触れています。有用な情報提供、ICTなどテクノロジーの活用が、高いPXにつながることがよくわかりますね。
☆人生と声を取り戻せた!
ペンシルバニア州ウォーレンに住む75歳のSandra Mickleさんは喘息と誤診され、数年間吸入器を使用していましたが呼吸能力が下がり、喘鳴と喉がうっ血した感じがありました。「徐々に芝刈り機や除雪機を使うことができなくなり、階段を上ることも困難になりました。まだいくつかできることはありましたが簡単な動きをするのも難しく、私の世界は徐々に小さくなっていきました」とSandraさんは振り返ります。
Sandraさんを診たかかりつけ医は同州内の呼吸器専門医を紹介し、その医師は原因が特定できない特発性の声門下狭窄(iSGS)と診断。地元の外科医を紹介されましたが、Sandraさんは友人の多くがクリーブランドクリニックで素晴らしい治療を受けたことを思い出し、最高の治療を受けられる病院(医師)を探し、同クリニックボイスセンターの耳鼻咽喉科医Paul Brysonさんにたどり着きました。
「内視鏡検査で確認したところ、彼女の気管は80%も狭まっていました」とPaulさんは述べます。iSGSは比較的まれな状態であること、男性より女性に多く診られることなどをSandraさんに説明しました。初診から1週間後、Paulさんは特別なスコープを使った低侵襲手術でバルーンを使い、気管拡張しました。
「私は術後、回復室に入ってきた娘に『素晴らしい気分! 息ができた!』と言いました。病院を出た帰りに、店にぶらりと立ち寄ることもできました」とSandraさんは、その時の喜びを語ります。
Sandraさんは帰宅後、クリーブランドクリニックの健康管理ツールアプリ「MyChart」を使用し、電話とオンラインでPaulさんとやりとりしました。空気を吐き出す量を測定するピークフローメーターの数値は、手術前は60だったのが術後は300、現在は平均290まで増えています。Paulさんは術後のフォローアップ訪問を行い、Sandraさんは運動に耐えられる力がつき、生活の質が大幅に改善されたと判断しました。
「素晴らしい医師を見つけられたことたこと、彼が私の人生、そして声を取り戻してくれたことに非常に感謝しています。友人は私が術後、話している間に息がきれなくなったことに気づいたと言っていました。時間が経って再発したとしても、彼は私に起こる問題を何とかしてくれると確信しています」とSandraさん。「クリーブランドクリニックの全スタッフの素晴らしい、思いやりのあるケアに心から感謝します。私のストーリーをシェアすることで、ほかの人もケアを受けるため、ここにたどり着くことを願っています」
出典:https://my.clevelandclinic.org/patient-stories/306-subglottic-stenosis-patient-gets-her-breath-back
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日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では今年から、PXの高い医療機関を投票によって決める「PXアワード」を開催します。医療従事者、患者、企業の方、どなたでも投票可能です。PXの高い医療機関として推薦する医療機関名と推薦理由、あなたの患者としてのストーリーをお寄せください。
3. 今後の予定
10月19日(土)に第30回勉強会を開催します。患者側から語っていただくゲストを初めてお呼びします、ぜひご参加ください。
第30回 PX研究会 勉強会
10月19日(土)13:30-15:30
場所:(株)セントラルユニ マッシュアップスタジオ
http://www.central-uni.co.jp/mashup-studio/
※通常と開催場所が異なります。間違えのないようにお越しください。
「PX概論」 国際医療福祉大学大学院教授 斎藤 恵一
「8カ月に及ぶがん治療における私のPXについて」 ティーペック株式会社 がん対策推進企業アクション 認定講師 花木 裕介
会費:勉強会参加費 1000円(研究会員は無料)
※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。
編集部から
朝晩めっきり涼しくなってきました。寝苦しい夏の夜は苦手ですが、季節のなかで一番好きかもしれません。今年もプールでたくさん泳ぎました。(F)