1.デジタルツールがPXとEXを向上させる
2.PXジャーナル最新号
3.今後の予定
1.デジタルツールがPXとEXを向上させる
質の高いケアを実現するには、PX(Patient eXperience;患者経験価値)とEX(Employee eXperience;従業員経験価値)を高めることが重要だと、米国の多くの医療機関では認識されています。米国メディアプラットフォームであるBecker’s Healthcareのポッドキャストで2人のエクスペリエンスデザインの専門家が対談し、PXおよびEXに関連したデジタルツールについて語りました。4つの要点を紹介します。
1. 意図的なエクスペリエンスの設計が必要
近年、患者の医療への期待は、他の業界でのCX(Customer eXperience;消費者経験価値)に大きく影響を受けて変化しています。医療機関は、現状のエクスペリエンスでは患者から受け入れられないことを認識しています。「従来、私たちは患者がケアを必要としていることを理解したうえで、医療チームを中心に医療のナビゲーションを設計してきた。しかし今では、患者と医療スタッフにとって意義のあるエクスペリエンスを設計するには、積極的かつ意図的に取り組む必要がある」とNRC HealthのCXOであるJennifer Baronさんは述べています。
2. リアルタイムのフィードバックが不可欠
かつて医療機関は患者アンケートを送り、3カ月後にデータを受け取っていました。 現在では、毎日新しいフィードバックを提供するリアルタイムシステムを採用しています。 「多くの医療機関では患者が受診している間に、サービス現場でのフィードバックに重点を置いている。 これにより、チームは問題を即座に修正し、サービスの回復をサポートすることができる」とJenniferさんは指摘します。
3. 戦略的なエクスペリエンス設計において「傾聴」を重視
ニュージャージー州にあるVirtua Healthは「傾聴」を非常に重視しています。NRC Healthと提携し、患者が退院後24~48時間以内にアンケートを送っています。「NRC Healthからは、どの第三者評価機関よりも迅速に情報がフィードバックされる。私たちはその情報に基づいて迅速に行動することができる」とEVP兼最高臨床責任者であるReginald Blaberさんは話します。
また、Virtua Healthは、約3万5000人の参加者による音声起動型パネルを通じて患者の意見を聞いています。「当社のケアについて疑問がある場合や、新しいサービスラインを追加する場合、このパネルに質問を投げかける。収集した情報は当社にとって非常に重要です」とReginaldさんは言います。
4. AIとデジタルツールは患者に向き合う時間をつくりEXを高める
NRC Healthは、数千件の患者コメントからテーマを浮き彫りにするのを支援する、AI対応のプラットフォーム「Huey」を立ち上げました。 「AIは特定の質問を投げかけ、実行可能な洞察を数秒以内に特定する方法を提供してくれる」とJenniferさんは述べています。 「リーダーやチームは管理業務に多くの時間を費やす必要がなくなり、患者と有意義な関係を築くことに時間を費やすことができる」
医療従事者のエンゲージメント、EXには、時間のゆとりが不可欠です。「医療従事者がベッドサイドで過ごす時間が長ければ長いほど、彼らのエンゲージメントも高まる」とReginaldさんは指摘します。「私たちは、医療従事者たちが医療に携わるようになった当初の情熱を再び呼び起こそうとしている。そのエネルギーが、次の患者に派生していく」
2. PXジャーナル最新号
米国のPX推進団体であるBeryl Instituteはこのほど、「PXジャーナルvol.11」を発行しました。PXに関する研究論文など学術的な寄稿で構成されていて、すべてダウンロードして読むことが可能です。
そのなかの1つ、「PXの巨人:先駆者たちと今後の道筋」はPX研究の基礎を築いた学者や実務家に焦点を当てています。引用頻度の高い論文を特定した「Foundational PX」の分析を基に、患者中心のケアの形成における彼らの重要な役割を強調した内容です。
「PXの巨人」たちは、患者と医療提供者間のコミュニケーション、ケアの格差、患者の視点の質的評価への統合など、PXのさまざまな側面における先駆的な枠組みを構築してきました。 グローバルな連携、新しい測定ツール、戦略的な洞察を通じて、PXを医療の中心的な優先事項として位置づけました。 今後は労働力不足、技術の進歩、政治的・経済的圧力などの複雑な課題に取り組むために、新たなPXリーダーたちの必要性が高まることが強調されています。
医療におけるデジタル変革は、アクセスとパーソナライゼーションの改善を期待させる一方で、患者中心主義に対する潜在的なリスクをもたらす可能性があり、共感的かつ人間中心のケアを維持するためにはデジタルへの警鐘が必要となります。さらにシステム全体にわたって公平に PX を確保するには、文化的に適切かつアクセス可能なケアモデルが必要です。多様な患者集団のニーズと進化する医療環境にPX を適応させながら、この重要な取り組みを進展させていきます。
以下のリンクにあるPXジャーナルの目次から、読みたい論文にアクセスできます。
3. 今後の予定
日本PX研究会は「第7回PXフォーラム」を12月7日14:00-17:00にオンライン開催します。テーマは「働き方改革で考える医療機関の展望−PXとEXの視点−」。2024年4月から医師の働き方改革を受けて、PXとEXの視点から、医療従事者のエンゲージメントを高めるキャリア支援のあり方を考えます。厚生労働省で働き方改革を担当した聖路加国際病院の医師である藤川葵さんによる特別講演「働き方改革とPX・EX(仮題)」をはじめ、EXサーベイの実施報告などの講演を企画。医療現場で働き方改革を推進する医師や看護師によるシンポジウムを行います。
PX研究会会員は無料です。参加申し込みは、下記リンクのフォームからお願いします。
Link:https://www.pxj.or.jp/pxforum2024/
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※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。
編集部から
食欲の秋。キノコ類(シイタケを除く)が大好物なのでキノコを食べまくっています。大皿に載ったマッシュルームは眼福でした(もちろん完食しました)。(F)