日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.303

1.今年のPXE養成講座が修了
2.「第16回PX寺子屋」を開催
3.今後の予定

1.今年のPXE養成講座が修了


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会は11月9日、第5回PXE養成講座をオンライン開催しました。第6期の最終回の講座ではPX研究会理事で鶴巻温泉病院副院長の出江紳一さんが講師を務め、「PXを高めるコミュニケーション」をテーマにコーチングの基礎を学びました。

出江さんはPX(Patient eXperience;患者経験価値)を高めるコミュニケーションとして、脊髄小脳変性症の患者に電話によるコーチングを行い、インタビュー記録の内容分析を行った結果、患者の自己効力感を増大させることができた研究を紹介。「コーチングは日常の場で自分の話ができ、新しい視点に気づき、自分ができることを新たに始めて継続することを支援できる」などと説明しました。

また、コーチングが問題解決のための指導ではなく、患者の主体性を引き出し行動を促進する双方向性の対話型コミュニケーションであることに言及。患者とのコミュニケーションに加えて多職種でPX向上に取り組む際にもコーチングを活用できる、としました。

グループに分かれて議論するエクササイズでは、「最近1週間のコミュニケーションを『会話』『対話』に分けて、その違いを話し合う」「前回の講座でペイシェントジャーニーマップを作成した患者(ペルソナ)のPXを高めるようなコミュニケーションを図る」といった課題に取り組みました。

「自身または家族が病気をした時のコミュニケーションを振り返り、相手に説明する」という課題では受講生から、「患者さんとのコミュニケーションは正直であるほうが受け入れてもらいやすい。実際の声がけだけでなく、タッチングなど非言語的なコミュニケーションも重要な要素だと感じた」「相手のこれまでの生活歴も踏まえてどのような考え、価値観をもっているのか想像しながら質問の言葉を選んだ」「患者は些細なことであっても、『医療従事者に丁寧に扱われていない、忙しさのなかで雑に扱われている感じがする』ということが積み重なると、失望や不満につながっていくことがわかった」などの感想が寄せられました。

PXE受講生は講座修了後に認定試験を経て、PXEとしてさまざまな医療機関や企業で活躍いただきます。第7期PXEは来年7月開講予定です。募集開始となりましたら、当メールマガジンで告知したいと思います。

2. 「第16回PX寺子屋」を開催


同日にオンライン勉強会である「PX寺子屋」も開催しました。

初めての方にPXを知っていただく「PX概論」は、渋川医療センターの菅原猛志さんが講師を務めました。菅原さんは、「従来からのPS(Patient Satisfaction;患者満足度)調査では結果を活用できていないと感じていた時にPXのことを知った。『病院と地域住民が協働し、よい医療サービスを築き上げるための概念』『患者に選ばれる病院づくりが求められており、患者の真のニーズに耳を傾ける必要がある』などと聞いて着目した」と話しました。

PXとPSの違いや海外での取り組み状況などを説明したほか、自身の入院経験を米経営コンサルタントであるカール・アルブレヒトの提唱した「価値の4段階」に落とし込んで説明しました。「当院の看護師から、『食生活改善のため少しお話しをさせてもらえませんか?』と声をかけられ、有益なアドバイスをもらえたのが予想外価値だった。その看護師は腸活アドバイザーの資格を持っており、EX(Employee eXperience;従業員経験価値)向上にもつながったのではないか」と振り返りました。

続いて「国立病院機構 現在のPXの動き」と題して、国立病院機構九州グループ医療担当参事の西本祐子さんがPXの取り組み状況を紹介しました。「従来から実施していた国立病院機構でのPS調査結果をみても、『この病院に行きたい』と患者は思わないのではないか」という考えから、西本さんは所属する九州医療センターでPXサーベイを開始。2021年に同機構幹部からのヒアリングを経て、2022年には設問票の第1版(急性期、慢性期向けの2パターン)を完成させ、2023年から同機構の全病院でPXを取り入れたサーベイを実施しています。西本さんは、「各病院の評価項目にもPXが含まれていて、組織全体でPXの浸透とPDCAが奨励されています。ポートフォリオ分析から優先的に改善すべき項目がわかり、改善活動について具体的な報告を行っています」と説明しました。

PX寺子屋は年3回実施しています。次回は来年3月15日を予定しています。内容などが決まり次第、ホームページやメルマガでお知らせします。

3. 今後の予定


第7回PXフォーラムを12月7日14:00-17:00にオンライン開催します。テーマは「働き方改革で考える医療機関の展望−PXとEXの視点−」。2024年4月から医師の働き方改革を受けて、PXとEX(Employee eXperience;従業員経験価値)の視点から、医療従事者のエンゲージメントを高めるキャリア支援のあり方を考えます。厚生労働省で働き方改革を担当した聖路加国際病院の医師である藤川葵さんによる特別講演「働き方改革とPX・EX(仮題)」をはじめ、EXサーベイの実施報告などの講演を企画。医療現場で働き方改革を推進する医師や看護師によるシンポジウムを行います。

PX研究会会員は無料です。参加申し込みは、下記リンクのフォームからお願いします。
Link:https://www.pxj.or.jp/pxforum2024/

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

編集部から


朝晩は肌寒い季節となりました。うちの猫もいつの間にか冬毛に変わり、もふもふしていてかわいさ倍増です!(F)