1.PX部門のためのリソース
2.PXとAI
3.今後の予定
1.PX部門のためのリソース
米国では多くの病院でPX(Patient eXperience;患者経験価値)に関する部門を設置していますが、人やお金などのリソースは限られています。アラバマ州にあるウィットフィールド地域病院のPXディレクターのAshley CoplinさんはPXツールキットを作成し、各部門で活用することで、労働力や予算に限りがある地方の病院でもPXに取り組めるとしています。
ウィットフィールド地域病院はPX部門を設置して2年目で、スタッフはAshleyさん1人です。「地方の小規模病院では病院業務の性質、限られた財源、人員不足のため、リソースやトレーニングをタイムリーに提供することに課題があります。さらに、研修はシフトの変更や多様なタイプの従業員(常勤、パートタイム、PRN)に対応できなければなりません」と説明します。
そこで作成したツールキットは、PXの定義、ペイシェント・ジャーニーとタッチポイント、従業員がPXに与える影響、トレーニングツール、HCAHPSやOAS CAHPSなどのPXサーベイなどについて触れている、PXガイドです。また、患者からのフィードバックをどのように受け取り、病院の各部門に広めるかも示しています。問題発生時の従業員への期待とともに、サービスの回復についても概説しています。
「ツールキットはアクセスしやすく、病院のトレーニングとリソースに特化しています。ツールキットのPXトレーニングには、ベッドサイドハンドオフ、パーパス・フル・ラウンディング、AIDETなど、臨床と非臨床の両方の内容が含まれています」「ツールキットは研修の代わりではなく、研修を補完するものです。各部門がツールキットを確実に活用できるよう、各部門責任者に対して継続的な注意喚起と連絡を行います。各部門の責任者にレビューと編集を依頼したため、彼らの意見を参考に、将来的には新入社員オリエンテーションに使用したり、部門別のツールキットを開発することも検討しています」
ツールキットは、冊子にして各部署で共有することも、オンラインのフリップブックとして閲覧することもできる文書です。フリップブックは、使いやすさを追求したものです。https://heyzine.com/flip-book/cdf7c27e0c.html#page/1
2. PXとAI
人工知能(AI)を活用したCX(Customer eXperience;顧客経験価値)テクノロジーを提供するグローバルプロバイダーであるTalkdeskが米国で実施したヘルスケア調査では、優れたPXにはケアにおける人のタッチだけでなく、管理業務やデリケートな健康に関する問い合わせなどはAIが受け入れられることがわかりました。
調査は2024年8月にオンラインプラットフォームPollfishで実施され、米国18歳以上の男女1000人から回答を得ました。患者の62%は、過去1年間に医療提供者がペイシェント・ジャーニーを通して提供したサポートが悪化した、または停滞していると感じていました。多くの患者が医療制度の複雑さに不満を表明しており、23%の患者は予約や保険の問題などを解決するために複数の診療科に対応することの難しさを挙げています。また、患者は将来を見据え、AIによるPX向上への期待が高まっています。回答者の半数(51%)は、今後1年以内にAIがPXを向上させると考えています。このような回答をしたのは特に男性の間で強く、ほぼ5人に3人(59%)がAIの潜在的利益について楽観的な考えを示しているのに対し、女性は5人に2人強(44%)に過ぎません。また、ミレニアル世代はAIに最も大きな期待を寄せており、60%がAIのPXを改善する能力を信じています。調査ではさらに次のようなことがわかっています。
◾️AIは医療提供者とのやり取りを効率化する
医療従事者が、患者への連絡事項の作成、新規予約のスケジューリング、メモの作成などの管理業務に費やす時間を短縮できるため、患者の約半数が、AIによってより効率的なPXが実現すると期待しています。回答者の4分の3以上(82%)は、AIによって予約や投薬スケジュールのリマインダーが自動化されると考えており、75%は異なる医療提供者間のより良いケアの調整が促進されると考えています。さらに、81%はAIが予約変更など臨床以外の問い合わせへの対応を迅速化すると予想しています。
◾️ペイシェント・ジャーニーの一部では人間の要素が依然として重要である
回答者の81%は、医療上のアドバイスについて人に相談することを好み、74%は自動化されたエージェントではなく人と個人的な健康情報について話し合いたいと考えています。しかし、住所変更などの基本情報の更新(60%)、処方箋の再処方依頼の管理(56%)、定期的な予約のスケジューリング(42%)などの管理業務については、AIでも問題ないと回答しています。
◾️AIはケアへの障壁を取り除くことができる
30%の人が、自分の健康状態を代理人に相談するのが恥ずかしい、あるいは不快だという理由で、医療を受けるのを避けています。67%が、デリケートな健康問題の予約は人間のスタッフよりもオンラインチャットボットの方が安心できると回答しており、AIがスティグマ化した健康問題のケアへの障壁を取り除くうえで重要な役割を果たす可能性を示唆しています。実際、米国人が挙げたヘルスケアAIチャットボットのポジティブな点のトップは「判断しない」(48%)、次いで「患者を急かさない」(38%)、「理解できないことがあってもバカにしない」(36%)でした。
◾️AIをめぐる懸念は依然として残っている
医療におけるAIの利用について患者が抱いている不安のトップは、AIの回答の不正確さ(26%)、データ・プライバシーの問題(24%)、介護における人間味の喪失の恐れ(24%)です。また、患者は臨床現場でのAIの使用についてより多くの監視が必要だと考えており、現在適切な規制があると答えた回答者はわずか23%でした。
全文は下記リンクからご一読ください。
Link:https://www.businesswire.com/news/home/20240829831934/en/
3. 今後の予定
PX研究会ではPXに関する研究を推進するための助成金制度を設けています。助成対象はPX、EXを測定するサーベイを実施、そのうえでPX、EXを向上させる取り組みを⾏い、その成果を評価するまでの⼀連の研究・実践となります。病院、診療所、介護保険サービス提供事業所のほか、製薬企業や医療機器企業の職員、保健医療福祉に関係する⾏政職員が対象です。申請期間は10月31日までです。
https://www.pxj.or.jp/joseikin-2024/
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※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。
編集部から
夏休みや体調不良などで更新できず申し訳ありませんでした。今後は週1の更新をしていきます。散歩がてら近所にある大きなイチョウを見に行き、コーヒーを飲むのが最近の楽しみです。(F)