日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.296

1.HCAHPSを超えたPXの測り方
2.AmazonがヘルスケアAIに参入
3.今後の予定

1.HCAHPSを超えたPXの測り方


PX(Patient eXperience;患者経験価値)を測る、米国のサーベイとして知られているHCAHPS(Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)は標準化されている一方で、PXを把握するのに不十分という指摘があります。HCAHPSに別の設問を加えて患者のコメントを分析した結果、PXの指標となる、新たな項目がわかりました。PXジャーナルvol.9に寄稿された、フロリダ・アトランティック大学などの研究者による論文の要旨を紹介します。

医療従事者にとっての重要な懸念は、標準化された患者調査が、患者にとって重要なトピックのすべてを完全に捉えていない可能性があるということです。その結果、医療従事者はPXの全体像を把握できない可能性があります。この研究では、最先端の自然言語処理技術を利用して、患者から寄せられた構造化されていないコメントを理解し、病院のPXについてより深く、より広い理解を得ることです。

調査は、米国中西部の大都市にある11の病院を対象に、米国最大のPXサーベイのベンダーであるPress Ganey社が収集した入院患者調査回答の大規模データセット(48,592人の患者が65,998のコメントを生成)を分析したものです。HCAHPSのドメインごとにグループ化された、ベンダー固有の質問項目が含まれています。患者コメントはアルゴリズム分析を行い、650以上のコメントのグループ化、さらに4つのトピックドメイン内の20のサブドメインに分類されました。

サーベイのドメインでは完全に捕捉されないドメインをテキストデータから発見しました。これらのドメインは、医療サービスの質の階層モデルの構成要素(対人的質、技術的質、環境的質、管理的質)と一致。つまり、構造化されたサーベイでは測定されない全く新しい問題が患者のコメントで発見され、また患者のコメントが標準化されたサーベイで発見された特定の領域(例えば看護師のコミュニケーション、退院など)に割り当てられる場合でも、新しいサブトピックは患者のPXのより微妙な理解を提供します。患者のコメントに見られる新しいサブトピックには、▽臨床医の診断スキル、▽思いやりのあるケア、▽チームコーディネーション、▽転院プロセス、▽ルームメイトーーなどが含まれます。医療機関は、患者のコメントから洞察を得るために最先端の方法を活用し、洞察を行動に移すために必要なプロセス、リソース、能力を確保すべきです。

全文は下記をご一読ください。

Link:https://pxjournal.org/cgi/viewcontent.cgi?article=1641&context=journal

2. AmazonがヘルスケアAIに参入


多国籍テクノロジー企業であるAmazonは、イリノイ州ダウナーズ・グローブのアドボケート・ヘルスケア、マサチューセッツ州サマービルぼマス・ジェネラル・ブリガム、ニューヨーク州のマウント・サイナイなどの医療機関と協力し、AIによってPXと患者アウトカムをどのように改善できるかを調査しています。米国メディアプラットフォームであるBecker’s Healthcareが発行する「Becker’s HOSPITAL REVIEW」の掲載記事です。

Amazonはこれらの医療機関に加えて、ブルー・シールドやプライム・セラピューティクスなどの保険会社と協力し、AIを活用して患者を観察したり、コンピュータ・ビジョンや自然言語処理を活用して医療専門家の日常的な管理作業を自動化したりすることを目指しているといいます。

これまでもヘルスケア企業のデジタル革新を支援しており、目標の1つとしてPXを掲げています。2019年9月には「Amazon Care」を開始し、「バーチャルケアと対面ケア、それぞれのよいところを組み合わせたハイブリットケア」で、オンデマンドの緊急医療とプライマリ・ケアのサービスを提供しています。

さらにAIヘルスケアツールの開発にも取り組んでいます。8月7日のニュースリリースによると、その1つが「HealthScribe」で、生成AIを活用して医師と患者のやりとりから臨床ノートを自動生成するHIPAA準拠のサービスです。ヘルスケア分野に参入する大手テック企業がAIにフォーカスしています。Googleは、テネシー州ナッシュビルのHCAヘルスケアと、救急外来のサマリーや看護師のハンドオフのためのジェネレーティブAIで協業しています。一方、Microsoftの子会社であるニュアンスは、AIを活用した臨床文書作成に大きく貢献しています。

Link:https://www.beckershospitalreview.com/disruptors/amazon-diving-deeper-into-healthcare-ai.html

3. 今後の予定


PX研究会ではPXに関する研究を推進するための助成金制度を設けています。助成対象はPX、EXを測定するサーベイを実施、そのうえでPX、EXを向上させる取り組みを⾏い、その成果を評価するまでの⼀連の研究・実践となります。病院、診療所、介護保険サービス提供事業所のほか、製薬企業や医療機器企業の職員、保健医療福祉に関係する⾏政職員が対象です。申請期間は8月1日〜10月31日です。

https://www.pxj.or.jp/joseikin-2024/

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

編集部から


暑い日が続きますね。わが家の茶トラは、なぜかカーペットがお気に入りです笑(F)