1.信頼性の高い医療機関の4つの習慣
2.看護への投資がPXを高める可能性
3.今後の予定
1.信頼性の高い医療機関の4つの習慣
PX(Patient eXperience;患者経験価値)を高めるには、継続的改善を業務に組み込んだケアシステムとプロセスをどのように設計するかが重要ですが、米国の病院においても経営幹部は苦心しているようです。改善し続けることができる組織にある4つの特徴について言及している、米国病院協会のインサイト記事を紹介します。
改善計画の修正は通常、リーダーに対して、▽より大胆な目標を設定する、▽スタッフが最高の仕事ができるようにする、▽従業員からのフィードバックに対応するーーの3つが必要とされていました。しかしIHI(Institute for Healthcare Improvement;米国医療改善研究所)の3人のリーダーは、働く人々の行動よりもシステムを修正する必要があり、はるかに多くの問題を解決できると主張しています。今後、医療のリーダーは、設計が不十分で最適化されていないシステムによる労働力への負担を考慮し、システムに焦点を当てた改善プログラムを作成しなければならないとしています。
継続的改善をサポートするダイナミックな運営システムを構築するために必要な組織のあり方について、次の4つを挙げています。
1|スタッフのコミットメントと情熱を認め、祝福する
継続的改善を永続させた個人やチームを表彰する機会を探しましょう。例えば、ペンシルバニア州にあるジェファーソン・ヘルスのリーダーは、四半期ごとの全社会議において、大規模な改善やリスク軽減につながる潜在的な安全性リスクの特定など、「素晴らしいキャッチボールをした」個人やチームを称えています。
2|システムの改善にこだわる
日々のワークフローはオペレーティング・システムの中心です。品質と安全のチームリーダーは、オペレーティング・システムがどのように機能しているかについてのフィードバックを得る方法にこだわっています。リアルタイムの業務上の課題を日々特定し、トリアージすることで解決につながります。このような組織では、クオリティ・チームは消極的で、取り締まりや点数管理をしているのではなく、第一線の臨床医の最大の支持者だとみなされています。
3|厳格なプロセス改善手法にとどまらない
TQIをはじめ、信頼性の高い組織づくりを目指すプログラムは、医療を他の分野で実証された生産プロセスへと導いてきました。しかし、多くの医療機関はこのような取り組みによって漸進的な改善しか達成していません。その主な理由のひとつは、日々の学習を推進し、システムのパフォーマンスを継続的に最適化するために、従業員や顧客をうまく巻き込めなかったことにあります。重要なのは、組織改善の取り組みを率いる人々が、労働力からより多くを得ようとすることよりも、システムから得られるものを最大化しようとすることに重点を置くことです。これは、バーンアウト(燃え尽き症候群)と世界的な医師・看護師不足というヘルスケアの課題を考えるうえで、非常に重要な概念です。
4|フィードバックで成長する
成功するシステム重視の業界は、第一線で働く人たちと、どうすれば仕事を改善できるかという抽象的な方法、原則、理論について話し合うことに定期的に時間を費やすことはありません。彼らはフィードバックを求め、課題を理解することに時間を割いています。そうすることで日常業務を設計または再設計し、現場の仕事を楽にすると同時に、システムの生産性を向上させることができるのです。ヘルスケアのリーダーは、今後進むべき道を考えるにあたり、労働力への負担を考慮し、成功のために意図的かつ注意深く設計されていないシステムで働くことほど、不満を生むものはないことを認識しなければなりません。
2. 看護への投資がPXを高める可能性
米国のPXサーベイであるHCAHPS(Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and System)と関連する看護要因についての最近の研究では、人員配置と学位を持つ看護師の割合の高さ、良好な職場環境がHCAHPSの評価、つまりPXに良い影響をもたらすことがわかりました。Medical Care誌に掲載された、イエール大学の博士研究員である Kathleen Rosenbaumさんの研究概要を紹介します。
HCAHPSは、患者中心のケアの尺度であるPXを定量化するように設計されています。米国の病院は、メディケア・メディケイド・サービスセンターを通じて、高い HCAHPS 評価を達成するための金銭的インセンティブを受けていますが、より高い HCAHPS 評価に関連する病院の改善要因についてはほとんどわかっていません。
調査は、2016 年にリンクされた複数のデータソースの二次分析により、病院の HCAHPS 評価、病院の看護リソース、およびその他の病院の属性 (規模、教育、テクノロジーの状態など) に関する情報を取得。カリフォルニア州、フロリダ州、ニュージャージー州、ペンシルベニア州の 540 の急性期病院と、それらの病院で働く 1万1786 人の登録看護師を対象としています。
より高い評価がいくつかの重要な要素と関連していることが調査結果から判明しました。▽1人の患者に対する看護師の人員配置が高い、▽学士号以上の学位を持つ看護師の割合が高い、▽ 「臨床的自律性と専門職間のチームワーク 」の高さによって示される、より良好な職場環境ーーです。この研究では、看護職員総数に占める正看護師の割合で測定されるスキルミクスなどの変数も調査に加えています。
HCAHPS評価との関連は、職場環境が最も高く、次いで良好な人員配置でした。Kathleenさんらは、「最も良好な業績を上げた病院は、そうでない病院よりも優れたリソースを有していた」と結論づけ、職場環境と人員配置の両方が改善されることで、PXが相乗的に向上する可能性があることを示唆しました。職場環境の最も予測しやすい側面は、スタッフの能力開発と継続的な看護教育、および病院や看護委員会への看護師の参加であるということです。これらの知見に基づき、看護師のプリセプターシップに焦点を当てた新たな介入と、病棟や病院のガバナンスにおける看護師の意見を増やすことが、前向きな職場環境を促進し、ひいてはPXを高めるための最も効果的な方策の一つであることを示しました。「看護への投資がPXやケアの質を大幅に改善する可能性がある」と強調しています。
3. 今後の予定
PX研究会ではPXに関する研究を推進するための助成金制度を設けています。助成対象はPX、EXを測定するサーベイを実施、そのうえでPX、EXを向上させる取り組みを⾏い、その成果を評価するまでの⼀連の研究・実践となります。病院、診療所、介護保険サービス提供事業所のほか、製薬企業や医療機器企業の職員、保健医療福祉に関係する⾏政職員が対象です。申請期間は8月1日〜10月31日です。
https://www.pxj.or.jp/joseikin-2024/
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※【お知らせ】日本PX研究会について※
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編集部から
体調を崩して1週間以上、睡眠がとれていません。深夜に手軽に読める本や雑誌、コミックを大人買いしました。虫好きにはたまらない一冊ですが、袋とじが唯一苦手な虫を扱っていて、怖くて開けられません。(F)