日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.293

1.日本医療マネジメント学会でのPX
2.言葉を言い換える
3.今後の予定

1.日本医療マネジメント学会でのPX


6月21、22日に開催された第26回日本医療マネジメント学会学術大会では、日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会のメンバーがPX(Patient eXperience;患者経験価値)のさまざまな取り組みを発表しました。

PX研究会では2017年から同学会に参加し、発表しています。今年は、「PXを推進して、組織はどう変わったか?」(国立病院機構九州医療センター・西本祐子さん)、「PXE(Patient eXperience Expert)の普及に向けて」(PX研究会・曽我香織さん)、「PXの概念を用いた訪問看護事業における業務改善の報告」(訪問看護ステーションアクティホーム・講内源太さん)、「高齢者を対象としたPX調査の問題点」(日本原病院・平尾由美さん)の4つの発表がありました。

曽我さんは、PX研究会が開講する「PXE養成講座」の5年間の成果と問題点についての分析結果を紹介しました。同講座は、PXEが医療現場でPXを伝え、活用するためのプログラムです。2023年時点で202人が認定を受けています。今後の課題として、1)多くの実技や討論を含むインタラクティブな内容であることから、受け入れ可能な参加者数の上限が課題となる。大人数でも開催可能な体制整備が求められる、2)病院管理者の理解が得られなければPX改善に向けた活動が困難となることがあり、PXE認定者が活躍できるようにPXを推進する医療機関の増加に向けた活動や人材紹介ーーを挙げました。

平尾さんは自施設で高齢患者を対象に、PXサーベイを実施した結果を公表しました。退院が決まった入院患者を対象に実施したものの、平均年齢84歳で約8割が認知症患者(HDS-R20点以下)であったことから回答が困難だったため、サーベイ実施によるPX向上を断念。そのため、PXを測る方法を変更しました。PXとコーチングを各部門の主任が身につけたうえで、PXをタイムリーに調査するために入院期間の各イベントの直後に「感情カード」を用いて点数化し、PXを測定します。現在調査を実施中とのことで、結果がまとまり次第、発表するとのことでした。

また、曽我さんが運営するコーチング会社・スーペリアによるランチョンセミナーを開催しました。テーマは、「『医師の働き方改革』を考えるーPX/EX の視点で働き方改革をデザインするー」。東海大学医学部客員教授の安藤潔さんを座長に、PXEでもある都立広尾病院の小坂鎮太郎さんを講師に招いて実施しました。

医師の働き方改革が推進される一方で、人口減少と高齢化、キャリアや手当の支援の遅れから医療・福祉業界では人材不足となっており、タスクシフトや持続可能な医療の実現が進まないのが現状です。セミナーではその解決策として、PXとEX(Employee eXperience;従業員経験価値)の視点で、患者と働くスタッフのエンゲージメントを高める支援をどう行っていけばいいのかを示しました。

PX研究会では来年、仙台市で開催の同学会でも発表を行います。多くの方に聴講、または演者として参加いただきたいと考えています。

2. 言葉を言い換える


スタッフが患者や家族の意に沿わない発言をしていないかーー。医療機関における患者コミュニケーションとして、言葉掛けが重要であると、ハミルトン・ヘルスケアシステムのPXディレクターのSusan Osborneさんは指摘しています。米国のPX推進団体である、The Beryl Instituteの投稿記事を紹介します。

患者や家族とのコミュニケーションは、医療に携わる私たちの日々の役割の一部です。キーフレーズは、なぜそのようなことをするのかという点と点を結びつけ、患者に情報を提供するのに役立ちます。また、思いやりのある働き方と患者への敬意を示すのにも役立ちます。

Susanさんは、患者の不安を減らし、より安心して治療を受けられるような言葉掛けをいくつか紹介しています。以下に、「言ってはいけない言葉→言うべきこと」の言葉の言い換え例を挙げます。

★あなたはまた当院の救急部門に戻ってきたようですね。今度は何をお望みですか?→以前、当院の救急部門でお世話になったことを覚えています。今日は何が一番心配ですか?

★何が必要ですか? 何がお望みですか?→ 私はあなたの要望にお応えします。

★それは私の仕事ではありません。→それは組織の価値観ではありません。私たちは皆、お客様のニーズに応えるオーナーシップを持っています。

★あなたはただ待つしかないのです。→現在の待ち時間は約2時間です。1時間ごとに待ち時間を更新し、必要に応じて再評価します。

「私たちが使う言葉は、患者の記憶に残ります。患者を慰め、理由を説明し、不安を軽減できるような言葉を選んで使ってください。 私たちはケアする者であり、患者を助けたいのです。 それは、より良いコミュニケーションから始まります」とSusanさんは話しています。

言葉掛けの言い換え例など、全文は下記リンクをお読みください。

Link:https://theberylinstitute.org/product/what-to-say-instead-of/?mkt_tok=NzUzLVpWWC03MTYAAAGUDf_bT7RTenZAAJuHdqXryRLCXcqlBvrN-85Zvl38W4DSHuaUBYXB67BpSzWqBdBrb8LKn4Jj5uOgxHNAonUamzzpHWbtXMZQCvAO

3. 今後の予定


今週末、7月6日(土)12:30-13:30に、PXの勉強会「PX寺子屋」をオンライン開催します。今メルマガでも触れている、日本医療マネジメント学会学術大会の発表の詳細をご報告しますのでぜひご参加ください!

「PX概論」富士通株式会社 治田 茂

「医療マネジメント学会発表報告①」国立病院機構 九州医療センター 小児外科医長・MCCセンター長
国立病院機構 九州グループ 診療専門職 西本 祐子

「医療マネジメント学会発表報告②」社会医療法人清風會 日本原病院 平尾 由美

「医療マネジメント学会発表報告③」コーチ 講内 源太

「医療マネジメント学会発表報告④」PX研究会代表理事 曽我 香織

PX研究会会員は無料、一般の方は1000円となります。申し込みは下記リンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/events/

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

編集部から


最近流行っているCOVID-19にかかり、ダウンしておりました。近所の病院のスターバックスに折り紙が置かれていて、「四つ葉クローバーを折ってください」とのことでした。子どものころ以来、折り紙作ってみました。(F)