1.2024年のPXトレンド
2.PXによる医学的介入の評価
3.今後の予定
1.2024年のPXトレンド
2024年も日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会をよろしくお願いいたします!
新年最初のトピックは、今年のPX(Patient eXperience;患者経験価値)トレンドについてです。米国ニュージャージー州の実践マネジメントに関するリソースを提供する、PHYSICIANS PRACTICEの記事を紹介します。
最近のテクノロジーの飛躍的進歩、より良い体験を求める患者の要求、患者のWell-beingに対する全体的アプローチ(臨床、社会、行動)により、ケア提供システムの近代化が必要となります。スタッフの燃え尽き症候群を減らすという重要なニーズは、医療機関の運営方法や患者とのかかわり方をさらに再構築することになります。
2024年は以下の分野で、次のような変化が起こると予想されます。
★超パーソナライズされた消費者体験の創造
2024年には、ハイパー・パーソナライゼーションがPXを左右するようになるでしょう。医療提供者は、高度にパーソナライズされたケアを提供するためにテクノロジーを活用しています。これは治療計画にとどまらず、患者のコミュニケーション嗜好、ライフスタイルの選択、個々のニーズを理解することにも及びます。個別化されたアプローチにより、医療従事者は患者とのより深いつながりを築き、治療費の削減と同時に、治療のアドヒアランスとアウトカムの改善につながります。
★医療アウトカムを予測するジェネレーティブAI
人工知能(AI)は従来の診断を補強し、医療アウトカムの強力な予測因子となります。生成AIアルゴリズムは、医療提供者がより高い精度でアウトカムを予測できるようにすることで、患者ケアに革命をもたらしています。広範なデータセットと高度なアルゴリズムの活用により、医療従事者は潜在的な健康の軌跡を予見し、積極的な介入と個別化された治療計画を可能にします。この予測能力により、迅速かつ正確な意思決定が容易になり、最終的には患者のケアと予後が改善されます。
★ホリスティック・ケア: 包括的なWell-being
ホリスティック・ケアへのパラダイム・シフトが、従来の医療モデルを再構築しつつあります。健康は病状だけで定義されるものではないことを認識し、開業医はより包括的なアプローチを採用しています。症状を治療するだけでなく、社会的、行動的、栄養的、身体的要因など、患者の生活の相互関連性を考慮するようになったのです。このホリスティックなアプローチは、患者のWell-beingをより深く受け入れ、予防医療を重視し、長期的な健康アウトカムを向上させます。
★統合医療管理プラットフォーム: 業務の簡素化
合理化された管理プロセスの必要性は、特に複数拠点を持つ医療機関にとって顕著な課題となっています。場所によってPXに格差があることから、最高のベンチマークを標準化することが急務となっています。統合医療管理プラットフォームは請求、スケジューリング、患者記録のためのバラバラのソフトウェア・プログラムの寄せ集めをプラットフォームに統合するソリューションとして台頭してきています。これらのプラットフォームが統合されれば、管理業務が合理化され、拠点間で標準化された手順が守られ、事務スタッフの負担が大幅に軽減されます。
★合理化されたスクリーニングによるメンタルヘルスへの対応
米国で深刻化するメンタルヘルス・クライシスは、早期発見の重要性を強調しています。医療機関は、リスクのある患者にフラグを立て、スタッフに警告するために、スクリーニングを優先的に取り入れています。これまで完了を妨げていた障壁を取り除き、結果を電子カルテにプッシュするメンタルヘルス・スクリーニング・ツールを統合することで、このプロセスを近代化し、効率的なデータ取得を保証すると同時に、管理チームのストレスを軽減します。研究によると、患者はプライベートのスクリーニングや遠隔スクリーニングの場合、プライマリ・ケア医と直接話す場合よりも、メンタルヘルス問題について率直に話す傾向があることが分かっています。
患者中心のアプローチ、予測技術、全人的ケアモデル、近代化された管理プロセスの融合は、ヘルスケアの展望を再定義し、PXを向上させるのに役立ちます。このようなトレンドを取り入れることで、医療提供者は患者アウトカムを改善し、スタッフの負担を軽減するだけでなく、より個別化、包括的、効率的なシステムへと医療提供の未来を再構築することができます。
全文は下記からご一読ください。
Link: https://www.physicianspractice.com/view/patient-experience-trends-shaping-healthcare-in-2024
2. PXによる医学的介入の評価
PXに関するデータを利用することで医学的介入を適切に評価するための指南本として2023年、IQVIAが発行した『Using Patient Experience Data to Evaluate Medical Interventions(医学的介入を評価するためのPXデータの使用)』があります。
医学的介入は患者ニーズ、優先事項、嗜好に対応することが重要です。これらは、PXに関するデータによって最もよく理解され、測定されています。科学的に厳密で、解釈しやすく、かつ実行可能なPXに関するデータは、研究者や臨床医が治療法の開発や商業化の際に極めて重要な決定を下すのに役立ちます。しかし、この分野は複雑であり、適切な集団から適切なPXに関するデータをいつ、どのように収集するかを決定することは困難です。
IQVIAは米国を拠点に、世界的にバイオ、医療、製薬、デジタルおよびAI戦略およびオペレーション経営コンサルティングサービスを展開しています。この書籍は、同社の患者中心ソリューションチーム(The Patient Centered Solutions ;PCS)の調査結果に基づき、まとめられたものです。 最新のガイドライン、科学的基準に則して、介入開発中にどのようにPXに関するデータを作成し、規制当局、支払者、医療従事者、患者レベルでの意思決定にどのように活用できるかについての概要を示しています。
現在は英語版のみですが、PXデータを臨床や研究にどう活用するかを考える一助になると思います。興味がある方はAmazonなどでご購入ください。
Link:https://www.iqvia.com/blogs/2023/05/new-patient-centered-solutions-book
3. 今後の予定
※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。
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2024年度のPXE6期生の募集を開始しました。全5回で、PX概論からペイシェントジャーニーマップの作成、PXに欠かせないコミュニケーションなどを学ぶことができます。PXE同期、卒業生とのネットワークにより、PX実践につながる交流も図れます。
医療者だけでなく企業勤務の方も受講可能です。申し込みは下記リンクからお願いします。https://www.pxj.or.jp/pxe6/
※6期からはPX研究会編著の書籍『ペイシェント・エクスペリエンスー日本の医療を変え、質を高める最新メソッド』(三輪書店)をテキストとして使用しますので、受講生の方は下記から各自でご購入をお願いします。
三輪書店オンラインショップhttps://shop.miwapubl.com/products/detail/2713
Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4895908062?ref_=cm_sw_r_cp_ud_dp_TQ04SWYRV6624N0S4X4K
※全国の書店でも購入できます。
編集部から
新年早々、大きな災害や事故が発生していて心が痛みます。人は、雨風をしのげる暖かい場所でぐっすり眠れて食事が摂れるという、ごくごくシンプルなことが大切だと思います。国内外問わず、すべての人に、そのようなひとときが早く訪れることを願っています。(F)