日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.273

1.ついにPX書籍を出版しました!
2.PXフォーラムでのEX特別講演
3.今後の予定
※今年のメールマガジン配信は終了となります。次は2024年1月4日を予定しています。

1.ついにPX書籍を出版しました!


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会ではこのたび、PX(Patient eXperience;患者経験価値)を紹介する書籍『ペイシェント・エクスペリエンスー日本の医療を変え、質を高める最新メソッド』(三輪書店)を出版しました。「PXとは何か」という本質的な問いに対する答えから、日本の医療機関での実践事例まで、1冊でPXを網羅した内容になっています。

書籍は、大きく分けて「基礎編」「実践編」の2部構成です。

基礎編はPXとPS(Patient Satisfaction;患者満足度)との比較、CX(Customer eXperience;顧客経験価値)やEX(Employee eXperience;従業員経験価値)とPXとの関連について説明。日本でも多くの病院で使われている米国の病院版PXサーベイ、HCAHPSの日本語版の展開、海外のPX事情などを盛り込んでいます。

実践編は、PX研究会で早い段階からPXサーベイを実施してきた病院や、PXE(Patient eXperience Expert)による自施設での取り組みを、さまざまな視点から紹介しています。

PX研究会は2016年に医療者の有志数人が集まり、PXについて学ぶところからスタートしました。勉強会の開催、PXサーベイの開発、PXEによる人材育成など、この7年間で得られた知見を集め、日本の医療をよりよくしたいと日々奮闘する同志たちで作った一冊となっています。

三輪書店のオンラインショップhttps://shop.miwapubl.com/products/detail/2713 やAmazon https://www.amazon.co.jp/dp/4895908062?ref_=cm_sw_r_cp_ud_dp_TQ04SWYRV6624N0S4X4K 、全国の書店から購入できます。

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PXE養成講座の第5期が終わったばかりですが、早くも2024年度のPXE6期生の募集を開始しました。全5回で、PX概論からペイシェントジャーニーマップの作成、PXに欠かせないコミュニケーションなどを学ぶことができます。「患者視点のサービスを考えたい」「患者に選ばれる医療機関をつくりたい」といった課題意識に応える内容です。PXE同期、卒業生とのネットワークにより、PX実践につながる交流も図れます。

医療者だけでなく企業勤務の方も受講可能です。申し込みは下記リンクからお願いします。https://www.pxj.or.jp/pxe6/

※6期からは前に紹介している書籍『ペイシェント・エクスペリエンスー日本の医療を変え、質を高める最新メソッド』をテキストとして使用しますので、受講生の方は各自でご購入をお願いします。

2. PXフォーラムでのEX特別講演


前回のメールマガジンで12月9日に開催された第6回PXフォーラム「選ばれる医療機関の条件~EX~」についてレポートしましたが、そこで触れられなかった特別講演の概要を紹介します。

EXをテーマとしたフォーラムの特別講演「EXをさげるPX、PXをあげるEX」は、D&Fクリエイツ株式会社代表取締役の矢野健一さんに登壇いただきました。ヒト中心の発想による経営戦略を展開している矢野さんは講演のなかでビジネス、経営の立ち位置から患者の幸せ(=PX)と従業員の幸せ(=EX)を両立させる、さらには、お互いの向上が相乗効果となって高め合う運営ができないかを問いかけました。

「日本はヒトづくりのビジネスモデルに失敗している。エンゲージメント(自発的な貢献意欲)を高めることが、イコールEX(従業員自体の欲求)だと解釈してしまい、企業と従業員の価値観のズレを修正できなかった。EXを上げても業績につながらないと考えた結果、従業員よりも顧客重視に陥っている」と矢野さんは指摘。そのため、従業員のエンゲージメントは業績と連動しているが、日本の従業員エンゲージメントは世界最低レベルであることや、医療・介護・福祉の労働生産性が低いといったデータを示しました。

エンゲージメントを高めるために大事なポイントとして、「組織として確固としたパーパス(目的)やバリュー(価値)と人を活かした業績評価」を挙げたうえで「組織にとって人は代替がきくコストではなく、代替がきかない資産である。そのために仕事にやりがいを持たせることを考えなければならない」と矢野さんは説明しました。

また、EXとCXの満足は相乗し、そこにエクスペリエンス(体験価値)が生まれるとしたうえで、従業員と製品に価値を生み出すブランディング事例として、ビール会社でのビアマイスター資格制度の導入を紹介。矢野さんは、「従業員がマイスター認定を受けて働くことでEXが高まり、製品の価値を上げたことでCXもついてきた。医療機関においてもパーパスやバリューを、従業員が“自分ごと化”することでエンゲージメントが高まる。従業員への負荷がかからないように生産性を上げること、医療機関としてEX指標をつくることが重要」と話し、締めくくりました。

2024年のPXフォーラムは12月7日(土)開催です。次回も充実した内容でお伝えできればと思っております。

3. 今後の予定


※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

編集部から


今年1年、メールマガジンをご笑覧くださりありがとうございました。PX研究会として活動を始めて7年目でしたが、PXの認知度や期待がこれまでになく高まった1年でした。2024年はさらなる高みを目指し、研究会として新しいことにも取り組んでいきたいと思っております。よいお年をお迎えください!(F)