日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.265

1.16歳未満のがん患者のPXサーベイ
2.Google CloudのAIソリューション
3.今後の予定

1.16歳未満のがん患者のPXサーベイ


医療や社会的ケアの分野で活動する慈善団体Pickerは、2019年から英国でNHSとのパートナーシップのもと、16歳未満の小児がん患者へのPX(patient eXperience;患者経験価値)サーベイ、U16 CPES(Under 16 Cancer Patient Experience Survey)を実施しています。このほど、2026年までサーベイの運営を継続することを発表しました。


U16 CPESは英国のPTC(principal Treatment center)という小児がんの治療拠点施設で治療を受けた、16歳未満の患者と親または介護者を対象に実施しています。2021年実施の調査では、対象となる3672人の親子にアンケートを送り、960人から回答を得ています(回答率26%)。

調査は0~7歳の親/介護者向け、8~11歳、12~15歳の患者向け(一部親/保護者が回答)の3つに分かれており、がんおよび腫瘍の治療や病棟、病院スタッフの対応などをたずねています。8~11歳の患者向けのサーベイは、患者が回答する設問は28、親/介護者が回答する設問は43です。

8 ~11歳の患者向けサーベイでは、患者に対する設問として「がん・腫瘍」「病院スタッフ」「ケアと治療」「病棟」「自宅でのケア」などの項目があります。具体的な設問項目は、下記リンクで確認できます。

Link:https://www.under16cancerexperiencesurvey.co.uk/sites/default/files/inline-files/P3313_U16_Questionnaire_8-11Children-V5.2-060820_FINAL.pdf


2021年のサーベイ結果では、77%の患者が「がん・腫瘍の治療で、医療スタッフからとてもよいケアを受けている」と回答。病院での全体の経験について、89%の親/介護者が10点中8点以上と高く評価しています。診断が下された経緯、スタッフとのコミュニケーション、治療に関する情報、ベッドサイドでの対応とスタッフへの信頼などの項目は、いずれも平均で80%を超えており、高く評価されている一方で、ケアの継続性とスタッフの連携、親/介護者のケアへの関与、ケアと治療の適切な時期などは比較的低いスコアとなっています。最も低いのは病棟設備で、「病院内がいつも静かで眠れる」と回答したのは28%でした。

Pickerはサーベイの実施で、以下のようなプラス面が期待できるとしています。

質の向上: 調査データは、医療提供者が得意とする分野や優先的に改善すべき分野を特定するのに役立ち、最終的に若年がん患者に提供されるケア全体の質を高める。
サービスの調整: 若年がん患者特有のニーズや課題を理解することで、医療機関や慈善団体は、そのニーズに合ったサービスや支援を提供することができる。
コミュニケーションの強化: 調査のフィードバックはコミュニケーションのギャップを明らかにし、医療従事者がそのギャップを埋めることを可能にする。

サーベイのサマリーおよび詳細は下記リンクから確認できます。

Link:https://www.under16cancerexperiencesurvey.co.uk/visual-summaries

2. Google CloudのAIソリューション


米国ネバタ州ラスベガスで10月8~11日まで開催された、ヘルスケア分野のエコシステムイベント「HLTH 2023」 では、医療業界が直面している最も重要な問題として「慢性的な人材不足と管理コストの上昇」が挙げられ、PXに大きく影響を及ぼす人材不足や医療従事者の燃え尽き症候群の問題を軽減するためのソリューションがトピックとなりました。

GoogleはHLTH 2023において、Google Cloud でヘルスケアおよびライフ サイエンス分野に有望とされるAIソリューション「Vertex AI Search」の新しい機能について発表しました。生成 AI (Gen AI) と、医学的に調整された検索機能を活用しており、「今日の医療提供が直面する差し迫った問題のいくつかに対処するのに適している」としています。

Vertex AI Searchの新たな検索機能では、患者記録、クリニカル・ノート、FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)などのデータ・ソースなど、膨大な量の構造化・非構造化情報をふるいにかけることができます。その結果、患者情報の包括的かつリアルタイムなビューを、医療従事者の手元で利用できるようになるといいます。医療従事者はかつてない効率のよさで包括的な臨床情報にアクセスできるようになり、その結果、臨床上の意思決定がサポートされ、医療の質が向上し、PXも改善されます。

特に患者中心のケアに注力していて、データアクセスを簡素化、情報提供を強化することで、医療機関はペイシェント・ジャーニーをパーソナライズすることができます。小売業に期待されるようなシームレスで摩擦のない、より顧客中心のエクスペリエンスを提供することができるとのことです。

ペイシェント・ジャーニーをAIが作成する時代が来たとは驚きですね。詳細は下記リンクをご一読ください。

Link:https://www.googlecloudpresscorner.com/2023-10-09-Google-Cloud-Adds-New-Features-to-Vertex-AI-Search-for-Healthcare-and-Life-Science-Companies

Link:https://cloud.google.com/blog/topics/healthcare-life-sciences/google-cloud-talks-generative-ai-at-hlth-23?hl=en

3. 今後の予定


PX研究会は12月9日、第6回PXフォーラム 「選ばれる医療機関の条件~EX~」をオンラインにて開催します。今年のテーマは「EX(Employee eXperience;従業員経験価値)」です。詳細および申し込みは、下記リンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxforum2023/

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11月18日12:30‐13:30、オンライン勉強会「第13回PX寺子屋」を開催します。

・「PX概論」 幌西歯科医院 院長 濱田 浩美

・ゲスト講師(テーマ等は決まり次第ホームページにUPします) 

研究会会員は無料、非会員は1000円です。申し込みは下記リンクからお願いします!

https://www.pxj.or.jp/events/

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

編集部から


昨日のランチは、「富士山盛り」で有名な海鮮丼を食べました。生魚が得意でないのにこの量……夜までお腹いっぱいで何も食べられませんでした!(F)