日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.260

1.燃え尽きの5つの要因
2.医療安全用語集にPX
3.今後の予定

1.燃え尽きの5つの要因


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、医療者の燃え尽き症候群(バーンアウト)による離職が国内外問わず、大きなトピックとなっています。バーンアウトする従業員と高い相関のある5つの要因とは、どのようなものでしょうか。

最近のギャラップ社の調査によると、7500人のフルタイムの従業員のうち、23%がとても頻繁にまたは常にバーンアウトしていると回答しました。さらに44%は時々バーンアウトしているとの回答しており、フルタイムの従業員のうち約3分の2が仕事でバーンアウトを経験していることになります。

バーンアウトのコスト負担は組織にとって多大なものです。バーンアウトした従業員はそうでない従業員と比べ、病欠を取る可能性が63%高く、積極的に転職活動を行う可能性は2.6倍です。仮にバーンアウトした従業員が組織に残っても、自分のパフォーマンスへの自信は13%低く、パフォーマンスの目標達成に関して管理者に相談する可能性は半分です。

また、バーンアウトの度合いが継続して高い従業員は長時間労働のため、「家族に対して責任を果たすのが難しい」という問いに対し、2倍以上の可能性で「強く同意」しています。さらにバーンアウトした従業員は緊急処置室を訪問する可能性が23%高いです。

この調査結果は、従業員を気遣う組織のリーダーに難題を投げかけるものです。従業員には燃え尽きて欲しくないものの、同時により高い生産性と業績を従業員に対して求めています。ただしバーンアウトを引き起こす主な要因は、勤勉さとハイパフォーマンスへの期待とはあまり関係がありません。むしろ、従業員がどのように管理されているかがカギとなります。

バーンアウトと相関関係が高い5つの要因は、次の通りです。

1. 不公平な扱いを仕事で受ける

不公平な扱いとは偏見、えこひいき、同僚による嫌がらせ、不公平な報酬や企業方針などです。従業員が管理者、チームメンバー、経営陣などに対する信頼を失うと、仕事を有意義と思う心理的な絆が断たれます。

2. 過度な仕事量

高いパフォーマンスの従業員は管理不能な過度な仕事量を与えると、見方がすぐに楽観的なものから絶望的に変わることがあります。仕事量がコントロールできなくなると、従業員は達成できること、できないことまたは支援者を探すのに管理者を頼ります。

3. 役割が不明確

責任と期待される目標が常に変化する場合、従業員は何が求められているかを考えるだけで疲弊してしまいます。最も優れたマネジャーは、責任とパフォーマンス目標について従業員と話し合い、従業員に対する期待を明確にするとともに、目標についても合致するように協力します。

4. 管理者とのコミュニケーションとサポートの欠如

何かおかしいと従業員が察知しても、マネジャーからの支援と頻繁なコミュニケーションがあれば、管理者は味方とみなされ、従業員の心理的なクッションとなります。マネジャーがサポートしてくれると感じている従業員は定期的にバーンアウトする可能性が70%少ないと報告されています。

5. 不当な時間的プレッシャー

従業員が「しばしば、または常にすべての仕事を完了する十分な時間がある」と回答する場合、高いバーンアウトを経験する可能性は70% 低くなります。特に、救急対応を行う医療者や消防士などの職種は常に時間に追われているので、高いバーンアウトリスクに晒されています。その他の業種では、質の高い仕事をするまたは優れた顧客サービスを提供するために必要な時間がわからない人々が、無理な時間の制約を従業員に課します。

全文は下記リンクからご一読ください。

Link:https://www.gallup.com/cliftonstrengths/ja/305177/%E5%BE%93%E6%A5%AD%E5%93%A1%E3%81%AE%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%88-%E7%87%83%E3%81%88%E5%B0%BD%E3%81%8D%E3%82%8B%E5%BE%93%E6%A5%AD%E5%93%A1-%E7%AC%AC%EF%BC%91%E9%83%A8-%E3%81%9D%E3%81%AE%EF%BC%95%E3%81%A4%E3%81%AE%E8%A6%81%E5%9B%A0.aspx?gclid=CjwKCAjwrranBhAEEiwAzbhNtfvvV4lxiI1xCTF-n9JIHed8qMkWft3CyNuENde_Ki_rHDPdg_wxgRoCmScQAvD_BwE

このギャラップの記事は3部構成となっています。第2部は下記リンクとなります。https://www.gallup.com/cliftonstrengths/ja/305195/%E5%BE%93%E6%A5%AD%E5%93%A1%E3%81%AE%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%88%E7%AC%AC2%E9%83%A8-%E3%83%9E%E3%83%8D%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8.aspx

2. 医療安全用語集にPX


日本医療安全学会、医療の質・安全学会では今年、合同で「医療安全用語集」を作成しました。医療安全に関する重要な57の用語をまとめたもので、PX(Patient eXperience;患者経験価値)が含まれています。学術団体がPXを取り上げるなど、日本の医療界においてもPXの概念が浸透してきています。

PXは「患者経験調査(Patient experience surveillance)」という用語として収録されています。「患者安全や医療の質を測定・監視するための指標であり、医療の質や患者安全の向上を目的とする」と説明。「患者が受けた対応についての調査であり、患者満足度と比較して、患者の期待度に影響されない」としています。

入院患者を対象とする尺度として、米国のHCAHPSを翻訳して日本の医療の評価向けに開発されたものと、英国のNHSのPXサーベイを基に当研究会が日本版として開発したPXサーベイについて言及されています。

PXに関連する用語として、患者中心志向(Patient-centeredness)、共同意思決定(Shared-decision-making)なども紹介されています。

用語集は一般に公開されています。

Link:https://www.jpscs.org/wp-content/uploads/2023/05/Grossary_on_patient_safety_Japanese-English_20230509-1.pdf

3. 今後の予定


日本PX研究会では「ゼロから学ぶEX講座」を9月7、19日、27日の3日間開催します。海外では一般的な概念として定着していて、日本でも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを受け、重視する医療機関が出てきているEX(Employee Experience;従業員経験価値)を取り上げます。

講座は全1回、2時間で修了となります。各回最少催行人数5人。

以下から申し込みください。

https://www.pxj.or.jp/ex/

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11月18日12:30‐13:30、オンライン勉強会「第13回PX寺子屋」を開催します。

・「PX概論」 幌西歯科医院 院長 濱田 浩美

・ゲスト講師(テーマは決まり次第ホームページにUPします) 

 岡山大学病院 医師 卒後研修センター助教 佐藤 明香

研究会会員は無料、非会員は1000円です。申し込みは下記リンクからお願いします!

https://www.pxj.or.jp/events/

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

編集部から


本格的に減量を始めました。昼食はサラダです。野菜を摂ると胃が軽いし、心なしか頭もクリアになっている気がします。(F)