日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.248

1.ChatGPTからわかるPX
2.Inside-OutからOutside-Inへ
3.今後の予定

1.ChatGPTからわかるPX


日本においてChatGPTの活用が個人だけでなく、企業や自治体などにも広がりつつあります。先日、海外のPX関連のミーティングに参加した際にも話題となりました。ChatGPTを使ってPXについて質問してみたところ、思いがけず的確な回答が返ってきましたので共有します。

米国のOpenAI社が開発したChatGPTは、人工知能(AI)による対話型の自動応答システムです。質問を入力すると、人と話をしているような自然な言葉で回答が寄せられます。AIがネット上の情報を集めて学習するため、現状では事実の誤り、著作権侵害、個人情報の流出などがリスクとして挙げられていることを書き添えておきます。

2022年11月から無料で公開されており日本語対応もしていますが、海外での知見が深いことから英語で質問しました。

PX(Patient eXperience;患者経験価値)は、「患者が医療サービスを受ける過程で得られる体験や満足度の価値を指す」としています。医療提供者や医療機関は、患者の視点や要求を考慮し、質の高いケアを提供することでPXを向上させることが求められているとしています。

医療の質を上げるPXの価値についての見解として、以下のような回答がありました。

患者のアウトカム改善: 患者のポジティブな体験は、臨床のアウトカム改善と関連しています。患者が自分のケアに満足し、治療の過程に参加していると感じれば、治療計画を守り、医学的なアドバイスに従い、自らの回復に積極的にかかわる可能性が高まります。その結果、健康状態の改善、再入院率の低下、well-being向上につながる可能性があります。

患者満足度の向上: PXに焦点を当てることで、全体的な満足度を高めることができます。患者が思いやりのある個別ケアを受け、ニーズや好みを考慮されることで、価値と尊敬を感じやすくなります。その結果、患者満足度の向上、好意的なフィードバック、患者ロイヤルティの向上につながります。

信頼とコミュニケーションの強化: 患者のポジティブな体験は、医療従事者と患者の間の信頼と効果的なコミュニケーションを促進します。医療従事者が患者の悩みに耳を傾け、意思決定に参加し、病状や治療法について明確に説明していると患者が感じれば、医療チームを信頼する可能性が高まります。信頼と効果的なコミュニケーションは、患者と医療従事者の関係をより良いものにし、治療のアドヒアランスとアウトカムにプラスの影響を与えることができます。

患者エンゲージメントの向上: PXに焦点を当てることで、患者の医療活動への関与を促進します。エンゲージメントの高い患者は、自分の健康管理に積極的に関与し、十分な情報を得たうえで意思決定を行い、自分の健康に責任を持つことができます。医療従事者は、患者を支援し、力を与える環境を提供することで、患者が意思決定の共有、自己管理、予防医療に参加することを促し、健康状態の改善につなげます。

競争上の優位性と評判: PXを優先する医療機関は、競争上の優位性を獲得できます。患者の良い体験は、口コミによる推薦やオンラインレビューにつながることが多く、新規患者の獲得や組織の評判を高めることができます。消費者主導の医療がますます進むなか、患者中心の医療を優先し、優れた体験を提供する医療機関は、競合する医療機関から抜きん出ることができます。

コスト削減: PXに投資することで、長期的なコスト削減につながります。予防医療、患者教育、治療のアドヒアランスを重視することで、医療機関はコストのかかる合併症、再入院、不必要な医療費の利用を防ぐことができます。さらに、良好なPXは、医療過誤のクレームや訴訟のリスクを軽減するなど、大きな財務的影響を与える可能性があります。

スタッフの満足と定着: 患者中心のアプローチは、医療スタッフにもメリットをもたらします。医療従事者は、自分の努力の結果、良い結果が得られ、患者満足度が向上すれば、仕事への満足度や職業的な充実感を高めることができます。満足したスタッフは、その組織に留まる可能性が高くなり、ケアの継続性の向上、チームワークの改善、そしてポジティブな職場文化につながります。

まとめると、PXを優先することは、患者アウトカムの改善、満足度の向上、信頼とコミュニケーションの強化、患者エンゲージメントの向上、競争優位、コスト削減、スタッフの満足度と定着率の向上など、複数のメリットをもたらします。患者中心のケアに焦点を当てることが、医療機関においては前向きで協力的な環境を作ることにつながります。

ここで挙げたPXに取り組むメリットは、これまで海外文献などでも指摘されていましたがAIにも認識されていることがわかりました。情報の精度については疑問視されていますが、それを踏まえたうえで活用するのはありだと思います。

2. Inside-OutからOutside-Inへ


ヘルスケア分野は患者を中心としたシームレスなサービス提供で遅れをとっている。患者はかつてないほど力を持っていることからも、かかわり方を再考すべき――。米国のヘルスケア関連のビジネスに関する主要なオンラインメディアであるMedCity Newsの記事を紹介します。

デジタル化によって検査結果などは簡単に手に入るようになっています。しかし患者エンゲージメントの最も重要な真の指標である、患者が健康やウェルネス全般を自己管理する能力や医療従事者との関係をサポートする体験の実現などが欠けてしまっていては、より大きな価値を得る機会を逃してしまうことになります。

患者エンゲージメントに対して、これまでヘルスケア業界ではInside-Outなアプローチをとることが多いことを目の当たりにしてきました。患者ニーズや視点を優先するのではなく、医療機関は既存のプロセス、ワークフロー、システムに適合するものに焦点を当てています。その結果、多くの人が不満に思うようなPXが生まれてしまいます。

例えば、デジタルポータルの導入が進んでいるにもかかわらず、患者は医療機関で紙のフォームに記入しなければなりません。また、デジタルポータルは異なる医療機関間で統合されていないため、連携したケアを受けることが難しくなっています。医療におけるデジタルデバイドも問題を悪化させています。特に地方のコミュニティでは、多くの患者がテクノロジーを使用せず、アクセスもできないため、不利な状況に置かれています。

患者エンゲージメントを高めるためには、患者が慢性的な健康問題に日々どのように対処しているのか、患者中心の理解に視点を移す必要があります(Outside-Inの視点)。このアプローチでは、まず「患者」を一人の人間として評価し、彼らの全体的なニーズは何か、日々の管理で何が有効か、そして彼らがどのようにかかわりたいのか、といった点を重要視します。

例えば、医療従事者や看護師は、ある症状や病気の治療プロトコルに基づき、その人に何が必要だと思うかについて、独自の視点や専門的な偏見を持っているかもしれません。しかし、患者にとっては、病状は日常生活で管理している多くの事柄のひとつに過ぎません。そのため治療効果を高めるためには、推奨される治療過程を、患者の日常生活やライフスタイル全般にどのように組み込めばより便利かを、患者と一緒に考えていくことが重要です。

医師と患者のコミュニケーション、正確な電子カルテ、全体的な管理効率の向上など、ヘルスケアへの取り組みを促進する技術やデジタル介入は数多く存在します。しかし、最大の価値を提供するためには、これらのツールやプラットフォームは、技術的な能力ではなく、まず人間のユーザーのために設計される必要があります。

Outside-Inの視点であらゆるプログラム、手順、実践を厳しく評価し、ケアの選択肢を求め、個人として扱われる尊厳をもち、威圧的なプロセスに直面しても明確さを求める顧客の視点から、エンゲージメント体験を設定することが必要です。

一例として、ペンシルバニア大学で開発された先進的な介入策であるHeartSafe Motherhoodでは、産後の血圧モニタリングにテキストメッセージを活用することで、患者さんは自宅で血圧を記録し、診察室に足を運ばずにケアチームとコミュニケーションをとることができます。このプログラムは、再入院と罹患率を80%削減しています。

私たちはこのOutside-In、患者中心の考え方を念頭に置きながら、ヘルスケア領域でテクノロジーを応用していく必要があります。 体験の充実に主眼を置いたメタバースが成熟していくにつれ、患者エンゲージメントの新たな可能性を考えてみてください。新しい体験は患者ニーズと視点からデザインすることが保証されている、と理解する必要があります。

Inside-OutからOutside-Inへの転換は簡単なことではありません。しかし、患者ニーズや好みを優先的に理解することで、患者とシステムの双方に大きな価値をもたらし、最終的に健康状態を改善する、より優れたエンゲージメント・チャネルとプラットフォームを構築することができます。

全文は下記リンクから読むことができます。

Link: https://medcitynews.com/2023/05/from-inside-out-to-outside-in-rethinking-patient-engagement/

3. 今後の予定


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では第5期生のPXEの募集を開始しております。

2023年7月開講の全5回の養成講座では、PXの基本的な考え方からPXサーベイの実践、患者ジャーニーマップの作成、患者の思いを引き出すコミュニケーション法などを学ぶことができます。

患者視点の医療サービス提供を実現したい方であれば、医療者に限らず、どなたでも受験可能です。医療現場や職場でPXを向上させる旗振り役として、私たちと一緒に活動しませんか?

概要および申し込みは下記リンクからお願いします。

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PX研究会では今年から新たにEX(Employee Experience;従業員経験価値)講座を開講します。

EXは医療現場で働く人が経験する、すべての体験を指します。EXを高めることで組織目的の達成のためのエンゲージメント向上、従業員のwell-being向上、患者へのよりよいPXにつながるとされています。実際に、海外の知見ではEXとPXの関連性が示されています。講座ではEXの定義、EXを高めるうえでどのような視点が重要なのか、医療期間でどのような取り組みができるか、そしてPXとの関連性について初学者向けに解説します。

申し込みは下記リンクからお願いします!

https://www.pxj.or.jp/ex/

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

編集部から


美味しいものが多いエリアにオフィスがあります。写真は最近ランチで食べたエスニックな味つけのピタパンです。体調が悪くても食べることへの意欲は衰えません!(F)