1.HCAHPSの見直し案
2.EXを学びませんか?
3.今後の予定
1.HCAHPSの見直し案
米国のPXサーベイを開発しているCMS(Center for Medicare and Medicaid Services)は2023年3月、病院向けのHCAHPS( Hospital for Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)の調査プログラムの変更案を発表しました。この変更案は、今年の6月上旬までコメントを募集しています。HCAHPSの変更の背景などについて、ニューヨーク・プレスビテリアン病院の患者サービス担当上級副社長兼CXO(Chief Experience Officer)のRick Evansさんが米国メディアプラットフォームのBecker’s HOSPITAL REVIEWで語っています。
約15年前にHCAHPSが登場し、その公開報告と報酬の仕組みが、病院や医療システムのPX(Patient eXperience;患者経験価値)を向上させました。医療に携わる多くのリーダーが知っていることですが、HCAHPSは、成人の入院患者に義務付けられており、「バリューベース購買」システムの一部となっています。つまり、この調査結果は公に報告され、病院の診療報酬に影響を与えるのです。さらに近年では、HCAHPSのスコアが格付け評価に反映され、消費者や患者の共感を呼んでいます。
HCAHPSの内容もプロセスも、2008年の開始以来、大きく更新されていないことが課題です。調査の主な実施方法は、紙媒体のままです。質問項目もほぼ固定されています。近年、調査の回答率は劇的に低下しています。このため、HCAHPSが更新されなければ、患者のニーズや嗜好に関する信頼できるデータ源としての信頼性が危うくなるという状況に至っています。
CMSが示した新しい調整案は、いくつかの重要な問題に対処しています。
第一に、デジタルな管理方法を取り入れた調査実施方法を追加したことです。これは必要とされる前進です。PXの改善が行われる入院ユニットレベルで、有効で実用的なデータを得るために必要な回答数を確保し続けるには、さまざまな管理方法が不可欠です。
新しい調整案では、PXサーベイが始まった当初から存在する現実、患者がアンケートに回答できないときに、患者の身近な愛する人がアンケートに回答することも認めています。私たちは患者がよく、愛する人たちを伴って来院することを知っています。このような人たちが患者ケアに重要な役割を果たすこともあるのです。当院では、すべての人の利益のために、家族や愛する人と積極的に連携することを求めています。今回の変更は、この現実を認識したものです。
また、調査データの収集期間を延長しています。HCAHPS データの研究では、この期間を延長することでスパニッシュや黒人といった、より幅広い回答者からの回答率が向上することが示されています。私たちは皆、より多様な回答者の声を聞きたいと思っています。特に、健康の公平性がこれまで以上に重視されるようになった今、多くの患者の声を求めています。
調査の質問事項の変更と調整についても言及しています。現在、「医師と看護師のコミュニケーション」「ナースコールへの対応」「病院の療養環境」「薬に関する教育」「退院プロセス」について質問していますが、「ケアトランジション」についての質問もあり、やや重複して混乱する内容になっています。当院での体験では、これらの質問に対する患者の理解は大きく異なります。そのため、問題に対処するための有意義な介入策を開発し、展開することが難しくなっています。今回の調整案では、質問セットの変更について具体的に説明していませんが、将来的に新しい質問と領域を導入する可能性について言及しています。CMSに、多様な人々とつながることに特に重点を置いて、このような変更の可能性をより広く検討することを勧めたいです。質問は、患者の最も深い優先事項に焦点を当てるだけでなく、病院がケアの提供において取り組むことができる要素に関連づける必要があります。
これらの調整案は、完全に採用されれば今後数年間で施行される可能性があります。そして全国の多くの同僚はPXに関するフィードバックをよりよく集める方法について、さらに広い夢をまだ持っています。人工知能の出現により、患者のユニークな体験に焦点を当てた、カスタマイズされたアンケートを送ることができるようになるはずです。コメント、手紙、電子メール、その他医療システムとのコミュニケーションに含まれる非構造化データを利用して、洞察を得ることができるようになるはずです。
今後数年間で、より多くのイノベーションが実現することを願っています。しかし、CMSが現在示している改善の可能性も歓迎します。患者や家族を理解し、彼らのニーズを満たすために提供するケアを構築するジャーニーは、医療への信頼を育むために進化し続けなければならないのです。
全文は下記リンクからご一読ください。
Link: https://www.beckershospitalreview.com/patient-experience/newyork-presbyterian-cxo-rick-evans-new-proposed-changes-to-hcahps-from-cms-are-encouraging.html
2. EXを学びませんか?
日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では今年から、EX(Employee Experience;従業員経験価値)講座を開講します。日本の医療機関で働く職員のEXを向上させることで、PX向上を推進していきたいと考えています。
EXは医療現場で働く人が経験する、すべての体験を指します。EXを高めることで組織目的の達成のためのエンゲージメント向上、従業員のwell-being向上、患者へのよりよいPXにつながるとされています。実際に、海外の知見ではEXとPXの関連性が示されています。講座ではEXの定義、EXを高めるうえでどのような視点が重要なのか、医療期間でどのような取り組みができるか、そしてPXとの関連性について初学者向けに解説。PX研究会のメンバーが講師を務めます。
講座は全1回2時間のオンラインでの開催となります。PXを知っていることを前提としており、企業の方も参加できます。
9月7、19、27日、それぞれ18:00〜20:00の開催となります。スタッフの満足度やモチベーションを高めたい、高いパフォーマンスを引き出したい、離職防止といった課題に対応する内容です。これからEXに取り組みたい方はぜひご参加ください。下記リンクから申し込みができます。
Link: https://www.pxj.or.jp/ex/
3. 今後の予定
日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では第5期生のPXEの募集を開始しております。
2023年7月開講の全5回の養成講座では、PXの基本的な考え方からPXサーベイの実践、患者ジャーニーマップの作成、患者の思いを引き出すコミュニケーション法などを学ぶことができます。
患者視点の医療サービス提供を実現したい方であれば、医療者に限らず、どなたでも受験可能です。医療現場や職場でPXを向上させる旗振り役として、私たちと一緒に活動しませんか?
概要および申し込みは下記リンクからお願いします。
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※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。
編集部から
今年は暖かくなるのが早く、あっという間に春というか初夏になりそうですね。暑くなると辛いものが食べたくなリます。最近食べたブータン料理、見た目以上の刺激的な味でした。(F)