日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.244

1.次の時代のEXは?
2.5G導入でPX向上を目指す
3.今後の予定

1.次の時代のEXは?


従業員に価値観とポジティブな影響を与えられる企業がEX(Employee eXperience;従業員経験価値)の高い組織である-ー。英国を拠点とする一般消費財メーカー・ユニリーバ社の前CEOであるPaul Polmanさんのチームはこのほど公表した従業員調査では、良い給料やwell-beingの高さだけでなく、社会的意義や充足感などを求めているとしています。EXを考えるうえでのトレンドとなる調査の概要を紹介します。

調査は2023年1月に、従業員250人以上の英米の民間企業で働く4000人を対象に実施したものです。

景気が不安定な状況にあっても、約半数(英:45%、米:51%)が会社の価値観が自分の価値観と一致しない場合、退職を検討すると答えています。3分の1はすでに辞めたと答えています。多くの従業員が、気候変動や不平等といった社会的・環境的な大きな課題に対して、会社が何らかの行動を起こしていることを知っていても、3人に2人は「まだ十分ではない」と答えています。「個人」のwell-beingを優先するところから、次は社会や環境に与える影響といった「世界」の次元に目を向けることが重要だとしています。これらの数字はすべて、「パーマクライシス(長期化する不安的な状況)」時代に社会人となった、未来の労働力であるミレニアル世代とZ世代でより高くなっています。

調査では退職を促す要因として、雇用主と従業員の価値観のずれを指摘しています。人材の維持に努めたい組織トップは、仕事のやりがいと企業の社会・環境的インパクトには極めて重要な関連性があることを認識しなければならないとしています。

現在、そして未来の従業員の期待やニーズから外れ続ければ、その組織は魅力的でなくなり、生産性も低下し、最終的には成功しなくなります。逆に、ステップアップした組織はモチベーション、イノベーション、ロイヤリティを高めることができます。そしてより持続可能で、責任感があり、収益性の高いビジネスを構築するための努力を加速させることができるのです。私たちは「ネット・プラス」企業と呼んでいますが、これは、取る以上のものを与えることによって繁栄し、長期的な価値を提供する企業のことです。

企業がこれを実現するための3つの主要な方法として次の3つを挙げています。

自社の価値観と影響力について、より高い志を示す
このことをもっと上手に伝える
従業員に力を与える

特に最後の「従業員に力を与える」が、最も優れた洞察だと言います。従業員は、会社が広い世界に与える影響を改善するミッションに参加したいと願っています。従業員からの協力の申し出は、行動する準備ができているトップにとっては大きなチャンスです。多くの従業員が気にかけているという事実は、賢明で責任感のある企業への贈り物と言えるでしょう。今こそビジネスリーダーたちは、自分たちもそのような価値観を持っていることを証明するときです。「もう少し給料を増やして、在宅勤務も増やしてジムの会員証を渡せば人材争奪戦に勝てると考えているトップは、失望することになるだろう」とPaulさん述べています。

全文は下記リンクからご一読ください。

Link: https://www.paulpolman.com/wp-content/uploads/2023/02/MC_Paul-Polman_Net-Positive-Employee-Barometer_Final_web.pdf

2. 5G導入でPX向上を目指す


米国オハイオ州のクリーブランド・クリニックは今年7月、米国の病院で初となる5Gを組み込んで一から建設される新病院「Cleveland Clinic Mentor Hospital」をオープンします。5G技術を利用して、患者ケアの強化、介護者とのネットワーク接続性の向上、PX(Patient eXperience;患者経験価値)の向上を実現する方法を見つける予定です。

ç社とクリーブランド・クリニックは、オハイオ州メンターの新病院で5G技術を利用する方法を開発するために提携します。この病院には、入院患者用の部屋と観察室、救急部、手術室、画像処理設備が設置される予定です。プライベート5Gネットワーク上に構築可能なユースケースとしては、患者用チェックイン発券機、拡張デジタルディスプレイ、患者用の組み込み式インフォテインメント番組、資産トラッキング、拡張もしくは仮想現実の採用などが考えられます。

ベライゾン・ビジネスのCEOであるKyle Maladyさんは、「人々の健康をケアする場合、その瞬間での対応と医療施設のネットワークインフラは、患者のケアから施設の運営に至るまで重要です」と述べています。「クリーブランド・クリニックのチームは、医療におけるグローバルリーダーであり、テクノロジーが施設での体験全体に与える影響について明確に理解しています」

ベライゾン・ビジネスは、サイバー攻撃への対応や医療への需要が高まっている今、5Gはより高いセキュリティとスピードを可能にすると主張しています。同社が開催するHealthcare Information Management and Systems Societyのグローバルカンファレンスで、接続性を阻害する画像処理装置など大病院では、5Gが特に重要になる可能性があると語っています。地上ではWiFiにアクセスできないため、施設内での患者の移動に支障をきたす可能性があるとのことです。

同社は近年、5Gへの投資を活発化させています。デジタルインクルージョンを加速させることを目的とした「1 Billion Lives Challenge」の一環として、ベライゾンは若者や中小企業のデジタルスキル強化のために30億ドルを拠出しました。また、2021年3月、ベライゾンは600億ドル近くを投資してCバンドスペクトルを取得し、全国的なカバレッジを拡大しました。

「クリーブランド・クリニックの最高情報責任者であるMatthew Kull,さんは、「このコラボレーションは、完全なデジタル病院インフラをつくるという我々の長期的なビジョンをサポートします。私たちの施設に5Gの広帯域を提供することができれば、より効率的になり、患者が自宅に移る際のケアの継続性を高め、介護士と患者の体験を向上させることができます」と話しています。

詳細は下記からご一読ください。

Link: https://www.fiercehealthcare.com/health-tech/verizon-cleveland-clinic-team-new-hospital-5g-enabled

3. 今後の予定


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では第5期生のPXEの募集を開始しております。

2023年7月開講の全5回の養成講座では、PXの基本的な考え方からPXサーベイの実践、患者ジャーニーマップの作成、患者の思いを引き出すコミュニケーション法などを学ぶことができます。

患者視点の医療サービス提供を実現したい方であれば、医療者に限らず、どなたでも受験可能です。医療現場や職場でPXを向上させる旗振り役として、私たちと一緒に活動しませんか?

概要および申し込みは下記リンクからお願いします。

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編集部から


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