日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.237

1.クリーブランドクリニックの年次講演
2.PXデータをMyChartに統合
3. 今後の予定

※メールマガジンの配信が遅れましたことお詫び申し上げます

1.クリーブランドクリニックの年次講演


PX(Patient eXperience;患者経験価値)への先進的な取り組みで知られている米オハイオ州にあるクリーブランド・クリニックが開催した2023年の年次講演で、PXやEX(Employee eXperience;従業員経験価値)が低下している現状を指摘。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関しては楽観的な展望を示しました。PX、EXにフォーカスし、講演の内容をお伝えします。

 

クリーブランド・クリニックのCEOであるTom Mihaljevicさんによる講演では、COVID-19パンデミック後に医療が直面する課題について説明。患者、介護者、コミュニティへのコミットメントを強化すべきと指摘しました。医療に混乱をもたらすいくつかの傾向として次の4つを挙げています。

・アメリカ人の健康状態やPXが低下している

・多くの医療従事者が燃え尽き、早期退職やキャリアからの離脱を余儀なくされている

・大多数の病院が財務的損失に耐えている

・地域社会では、医療の公平性における格差が拡大する恐れがある

 

★患者さんへのケア

「ヘルスケアにおいて、私たちは危害を防ぐこと、命を救うこと、コミュニケーションをとること、アクセスを作ることを期待されています」とTomさんは言いました。さらに、「重要な仕事をすることで、患者さんの苦しみを取り除き、患者さんの人生、そして私たちの人生に喜びを取り戻します」と指摘します。

 

患者ケアの中核となる考え方は、安全、品質、PXです。最近、クリーブランド・クリニックで開発された「Code Sepsis」という新しい診療があります。敗血症を治療するための専門家チームです。敗血症を早期に発見し、治療を開始することで、このチームは昨年、500人の命を救いました。その他にも、コミュニケーションを強化するための毎日の「Plan of Care Visit」や、重大な安全事故を防ぐための安全チェックリストなどがあります。

クリーブランド・クリニックは、年間4億5000万ドルを研究・教育に再投資しています。Tomさんは、「研究、革新、教育を通じて、私たちは明日の医療を発明します。クリーブランド・クリニックの研究者は、世界の医療とケアを変革します」と力を込めました。

 

★従業員へのケア

COVOD-19のパンデミックは世界中の医療従事者に負担をかけ、燃え尽き症候群や早期退職を招き、世界的に200万人近い医療従事者が不足する事態となりました。

Tomさんは、「クリーブランド・クリニックでは、記録的な数の患者を治療し続けています。これは、私たち全員が、私たちの使命に献身的に取り組んでいること、そして、困っているすべての人を助けるという私たちの共通の責任を示しています」と述べました。クリーブランド・クリニックは、現在のケアスタッフの努力に報い、新たな人材を惹きつけるために、医療界で最高の福利厚生を提供し、看護師の紹介に対するボーナスなどのインセンティブを追加することを約束しました。

 

★組織への配慮

2022年は、パンデミック時の医療サービスの休止、労働力不足とそれに伴う賃金上昇、インフレによる供給や薬剤費の影響などにより、患者のニーズは高かったにもかかわらず、半数以上の病院が赤字となりました。クリーブランド・クリニックは2億ドル以上の営業損失を見込んでいるとTomさんは報告しましたが、「ここからさらに盛り返すことを全面的に信頼しています」と付け加えました。

「戦争、不況、パンデミック、1929年のキャンパスでの悲劇的な火災にもかかわらず、我々は100年以上にわたって使命を果たすことができました。クリーブランド・クリニックは、良い時も悪い時も、一貫した姿勢を貫いています。最も困難なときでも、目標に忠実であり、診療に妥協することはありません」

「クリーブランド・クリニックの使命は、希望と可能性を体現するものです。クリーブランド・クリニックのケアモデルは、ヘルスケアのあるべき姿を示すモデルです。私たちの共通の責任は、それを洗練させ、患者さんのニーズに応え、希望を失った人々に届けることです」

 

全文は下記リンクからお読みください。

Link:https://newsroom.clevelandclinic.org/2023/01/18/cleveland-clinic-ceo-president-tom-mihaljevic-m-d-envisions-optimistic-future-in-annual-state-of-the-clinic-address/

 

 

2. PXデータをMyChartに統合


米イリノイ州にあるPress Ganey社は多くの医療機関でPS(Patient Satisfaction;患者満足度)調査を行い、PX向上をサポートしています。Epic社と協業し、PXデータをMyChart(患者と医療者が検査結果などを共有できるアプリ)に統合すると発表しました。

 

この統合の目的は、医療機関が患者やスタッフのケアの質とエクスペリエンスを全体的に向上させるためにフィードバックを収集し、活用することを支援します。

Epic社とPress Ganey社のコラボレーションは、パーソナライズされたエクスペリエンスとすべての患者の全体的な理解をサポートすることで、ケアの向上を目指すものです。これにより、3億件を超える患者記録へのPXデータは、MyChart患者ポータルとCheers CRMに今年中に統合される予定です。

 

この統合ソリューションは、患者からのフィードバックに対するリアルタイムの洞察をサポートする重要なステップです。プロバイダーは懸念事項に対して迅速かつ効率的に対応できるようになります。

「患者、プロバイダー、支払者などをつなぐ国家的な医療ITインフラを構築する作業を続けるなかで、エクスペリエンス・マネジメントは重要な役割を担っています。Press Ganeyはリーダーであり、当社が日々使用しているワークフローに直接重要な洞察を提供し、患者さんによりパーソナライズされたエクスペリエンスを提供することに貢献するでしょう」とEpic社の副社長であるAlan Hutchisonさんはコメントを寄せています。

 

全文は下記リンクからご一読ください。

Link:https://www.pressganey.com/news/press-ganey-announces-collaboration-with-epic-to-advance-integration-of-patient-experience-insight-into-electronic-medical-records/

 

 

3. 今後の予定


3月25日にPX研究会のオンライン勉強会、「第11回PX寺子屋」を開催します。病院に日本初のPX部門を開設した、やわたメディカルセンターのPXについての取り組みを紹介します。

 

3月25日(土)12:30-13:30

「PX概論」PX研究会 笹野 孝
「PXの取り組み」やわたメディカルセンター 安田 忍

参加費は会員は無料、非会員の方は1000円となります。下記リンクから申し込みください。

https://www.pxj.or.jp/events/

 

***********

第5期生のPXEの募集を開始しております。

2023年7月開講の全5回の養成講座では、PXの基本的な考え方からPXサーベイの実践、患者ジャーニーマップの作成、患者の思いを引き出すコミュニケーション法などを学ぶことができます。

患者視点の医療サービス提供を実現したい方であれば、医療者に限らず、どなたでも受験可能です。医療現場や職場でPXを向上させる旗振り役として、私たちと一緒に活動しませんか?

概要および申し込みは下記リンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxe5/

 

***********

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


少し前のことですが、ワインのテイスティングに初めて挑戦してみました。産地を当てるのは難しかったですが自分の好きなワインが少しわかった気がしました(F)