1.2023年の医療ITとPX
2.患者による医療従事者への支援
3. 今後の予定
1.2023年の医療ITとPX
医療機関のCIO(最高情報責任者)やその他のリーダーにとって、医療ITにおける3つの領域が、最高のアウトカムを確保するための鍵となるだろうと、ある専門家は予測しています。そのうちの1つがPX(Patient eXperience;患者経験価値)です。ITを通じて医療界の方向性や技術の向上を目指す組織であるHIMSS(The Health Care Information and Management System Society) のメディア記事を紹介します。
ヘルスIT企業PatientIQのCEOであるMatthew Gitelisさんは、2023年の医療情報技術について、いくつかの考えを示しています。
ひとつはこれからの時代、“PXが王様になる”ということです。CMS(the Centers for Medicare and Medicaid Services)がCAHPS(the Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems;米国のPXサーベイ、病院向けのものはHCAHPS)におけるPXの比重を倍増させるという、患者報告アウトカムに関する新しいパフォーマンス指標を最近発表したことから、「2023年に患者が最優先されることは明らかだ」とMatthewさんは述べています。
次に2023年のアナリティクスを「スマート」と「よりスマート」と分けて考えます。2023年、医療機関は「よりスマート」なアナリティクス・アプリケーション(予測能力と説明能力を統合し、機械学習技術を活用して効果を上げるアプリケーション)を活用しなければならないとも主張します。
さらに、医療機関は「データドリブン(売上やマーケティング、WEB解析などのデータに基づいて判断・アクションを起こすこと)医療」への移行を受け入れる必要があるとも述べています。米国のヘルスケア・アナリティクス市場は、2020年から2030年にかけて4倍に拡大すると予測されています。医療においてデータほど強力なものはありませんが、今日に至るまで、多くの臨床判断がそれを裏付ける十分な定量的・定性的データなしに行われていると、Matthewさんは指摘しています。
記事ではこれらの予測をもとに、医療機関のCIOやその他の医療ITリーダーは、2023年にどういったアクションを起こしていけばいいのかをQ&Aで聞いていますが、“PXが王様になる”と予測した理由について、Matthewさんは次のように語っています。
「PX向上は新しい目標ではなく、何年も前から医療の最前線にありました。しかし、私たちが問わなければならないのは、私たちの努力と技術が実を結んだものの、針を動かしたリスクは決して小さくなっていないからです。
たとえばCMSが発表した患者報告アウトカムに関する新しいパフォーマンス指標ですが、同時に医療機関は奨励金支払いの可能性をめぐって激しい競争にさらされているのです。医療機関は、PXを向上させることは、もはやよい目標ではなく、不可欠な目標であることを明確に示しているのです。
さらに、PXを十分に向上させないことが財政的・経営的な影響を及ぼすだけでなく、患者が自分のケアについて悪い印象を持ち、患者の期待が下がった場合、臨床結果が悪化する可能性があることを私たちは知っています。医療の質、そして患者の質の認識を向上させることは、かつてないほど重要な課題となっています。
医療機関には、大変な苦労がかかります。特に、それを効果的に行うためのインフラがない場合、医療機関全体のPXを向上させることは困難な作業です。医療機関はCOVID-19の大流行の影響から脱し、すでに疲弊しているリソースを戦略的に投入していかなければならないのです。
2023年、医療機関は引き続きデジタル・フロントドア(患者が医療機関で出会う、バーチャルな接点の総体)を優先し、医療・介護体験に関する患者からの報告を収集、測定、行動する能力に投資する必要があります。臨床的・業務的な成果は、それにかかっているのです」
CAHPSでよりPXが重視されるようになると、医療機関におけるPXの優先度はより高くなりますね。全文は下記リンクにあります。
2. 患者による医療従事者への支援
米国のPX推進団体「The Beryl Institute」は、グローバルでの患者・家族アドバイザリーボード(GPFAB)を立ち上げています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によって、医療従事者の疲弊、燃え尽き症候群などにより、患者と医療者間での信頼関係の崩壊は、より重大かつ複雑になっていることを受け、GPFABでは医療従事者への支援を行う”Standing Up for the Workforce (すべての働く人を守る)”というキャンペーンを展開しています。
組織やリーダーが従業員を大切にするためにできること、またすべきことはたくさんありますが、患者や家族ができる7つの原則として、以下を挙げています。
1.医療従事者とスタッフには、患者自身が求めるのと同じ敬意と共感をもって接すること。医療従事者とスタッフは、人を助ける人間であることを常に念頭に置く。
2.私たちは、医療のエコシステムと文化の一部であることを認識する。私たちの行動や言動は、肯定的にも否定的にも、医療界の幸福と質に貢献する。
3.患者は医療の消費者であることを自覚する。患者の権利と責任に関する文書、非礼の定義、その他の患者関連の方針と手順が提供されている場合は、それを認識し、確認するよう努力する。
4.明確な質問をする。私たちは皆、コミュニケーションが非礼がエスカレートする際に果たす役割を知っている。患者や家族もまた、効果的なコミュニケーションを維持するために重要な役割を果たす。
5.医療従事者と接する際には、ストレス、緊張、期待のレベルを確認する。愛する人が医療危機に瀕していることほどストレスのかかることはないと思っているので、軽々しくこのようなことは言えません。私たちは、医療従事者にミラクルワーカーとしての役割を期待しすぎる傾向がある。
6.自分自身の精神的な健康にも気を配り、利用可能なリソースを広く活用する。医療危機は、患者にとっても家族にとっても消耗の激しい体験。大きな健康問題に伴う心理的な問題に対処することなく、身体的な問題にエネルギーを注いでしまいがちである。
7.医療従事者に感謝し、サポートする方法を見つける。時には、友人や家族の前に立ちはだかり、このような行動を促すことも必要かもしれません。
「これらの7つの原則を、PFAC(患者および家族諮問委員会)や他の患者支援団体と共有してください。組織の文化や現在の環境を改善するために、最も有意義な方法でこれらを使用する方法を考えてみてください」とGPFABの共同代表であるIsabela CastroさんとTony Serge さんは話しています。
3. 今後の予定
第5期生のPXEの募集を開始しております。
2023年7月開講の全5回の養成講座では、PXの基本的な考え方からPXサーベイの実践、患者ジャーニーマップの作成、患者の思いを引き出すコミュニケーション法などを学ぶことができます。
患者視点の医療サービス提供を実現したい方であれば、医療者に限らず、どなたでも受験可能です。医療現場や職場でPXを向上させる旗振り役として、私たちと一緒に活動しませんか?
概要および申し込みは下記リンクからお願いします。
Link:https://www.pxj.or.jp/pxe5/
***********
※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。
編集部から
明けましておめでとうございます。2023年もPX研究会をよろしくお願いいたします。年始の大役(姪にお年玉を渡す)を果たしたら、「袋がかわいかったから飾ったよー!!」と写真が送られてきました。目に入れても痛くないとはこのことです。(F)