1.第4回PXE養成講座を開催
2.介護士のEXを高める
3. 今後の予定
1.第4回PXE養成講座を開催
日本ペイシェント・エクスペリエンスでは11月12日、第4回PXE養成講座を開催しました。
PXE(Patient eXperience Expert)は、医療現場や企業でPX(Patient eXperience;患者経験価値)を普及させるエバンジェリストを養成するもので、2019年度からスタートしています。全5回の講座も終盤に差しかかっています。過去3回の講座ではPXとPS(Patient Satisfaction;患者満足度)との違いや、PXの指標を測るサーベイおよび結果を受けた改善活動について取り上げました。
第4回は、入院から退院までのプロセスを患者の視点で俯瞰し、改善につなげるペイシェント・ジャーニーマップの作成を行いました。作成によりPXの向上、患者・顧客ロイヤルティ創出などが期待できるものです。
ジャーニー・マップは、①テーマ設定、②対象となる患者像(ペルソナ)シートの作成、③対象者の行動の洗い出し、④行動の分類、⑤対象者との接点の明確化、⑥感情の明確化、⑦対応策(課題・改善ポイント)の決定――の流れで作成します。
講師を務めた日本PX研究会代表理事の曽我香織さんの説明のもと、講座ではあらかじめテーマとペルソナを設定したうえで、オンライン上でグループにわかれて③以降から取り組みました。入院から退院(転院)までの患者や家族の行動を分類。その過程での感情の変化を洗い出したうえで、課題・改善ポイントを検討していきます。完成したジャーニーマップから改善に向けたアクションプランを考えました。
ジャーニー・マップはさまざまなテーマ設定をもとに、実際に病院で活用できるものです。過去のPXEの受講生でも、自院で実践したという報告もあります。学んだことを活かして患者中心の医療、PX向上に役立てていただけるとうれしいです。
2. 介護士のEXを高める
米国オハイオ州にあるクリーブランド・クリニックでは2020年6月、経営戦略に携わる介護士であるCCO(Chief Caregiver Officer;最高介護責任者) という新しいポジションをつくりました。初代CCOはEX(Employee eXperience;従業員経験価値)にいかに取り組んだのでしょうか。米メディアプラットフォーム、Becker’s Hospital Reviewの最新記事を紹介します。
初のCCOに就任したKelly HancockさんにはEX、従業員のエンゲージメントを高めるための戦略的開発と推進という任務が課せられました。 現在、Kellyさんはこの任務を継続し、人事と看護チームのオペレーションを監督していますが、その過程で学んだ教訓を心に留めています。リッチファミリー財団の介護士のトップでもあるKellyさんは機敏さと快活さを身につけることができたと語っています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの最中で状況が変化している時でした。「この部門をつくることは、私たちのところで働く7万6000人の介護士を気にかけていること、そして彼らがクリーブランド・クリニックで繁栄し、成長してほしいと願っていることの真の証しだったのです。このビジョンと “Why “を拠りどころとして、私は変化に対応し、日々を過ごしてきました」と振り返ります。
さらに質問に対し、以下の回答を寄せています。
Q:従業員が燃え尽きたり、イベント等への参加割合が低下したりする兆候が見え始めたとき、どのようにして快活さを保つのでしょうか?
COVID-19の大流行がもたらした明るい兆しは、多くの人が物事を前向きに捉えられるようになったことです。慢性的な仕事のストレスや長時間通勤を見直すきっかけになったり、ワークライフバランスを見直すきっかけになったりしました。
私たちは、従業員が組織の一員でありたいと思うような環境を提供することを目指しています。例えば健康に関する模範となるリーダーシップとしては、個人的な休暇をとる、瞑想する、昼間の散歩を優先する、介護士が悩んでいるのに気づいたらwell-beingリソースを紹介するなどです。
管理職のかかわり方も、私たちが重視している項目のひとつです。管理者が介護士の様子を頻繁に確認し、何がうまくいっていて、何が改善されなければならないかを尋ねているかを確認するのです。介護士が「自分を見てくれている、話を聞いてくれている」と感じる時間をつくることで、燃え尽き症候群や離職を未然に防ごうとしているのです。
Q: 2023年に向けての最優先課題は何でしょうか?
2023年も引き続き、人材確保を重要な重点分野のひとつに位置づけています。当然ながら、介護士を確保すればするほど、採用の必要性は低くなります。私たちは、介護士がクリーブランド・クリニックで長期的かつ有意義なキャリアを築いてほしいと願っています。
現在、そして将来にわたって、介護士を維持するためのさまざまな取り組みを行っています。そのひとつが、福利厚生戦略を進化させる取り組みです。私たちは従業員の増加に伴い、介護士のニーズがそれぞれ異なることを知っています。ある介護士にとって重要なことが、別の介護士にとっては重要でないかもしれません。しかし、目標は彼らに柔軟性と選択肢の両方を提供することです。
私たちは今、希望する福利厚生に対応するための土台を築き、介護士が好む変化に素早く対応するための機能を構築しています。私たちの目標は、クリーブランド・クリニックが医療業界で最も働きやすい職場であることを保証する、優れた福利厚生のエクスペリエンスを提供することです。
強固な福利厚生戦略の構築、可能な限りの柔軟な対応、教育・トレーニングプログラムの提供、従業員の多様性と包括性の確保など、人材確保に向けた取り組みが最重要課題として残っています。
Q: 他の医療機関へのアドバイスはありますか。
「感謝」と「現在に存在すること」のパワーを見逃してはいけません。従業員の仕事ぶりや貢献を認めることは、従業員エンゲージメントの最も重要な原動力のひとつであり、特に私たちが労働力の問題に直面し続けている今、重要です。また、表彰は従業員の定着率を高め、離職率を低下させることがわかっています。
表彰は簡単で、アクセスしやすく、意義のあるものにしましょう。アンケートやリスニングセッションを通じて正式に、あるいはリーダーシップラウンドを通じて非公式に、介護士の声に耳を傾ける時間を持ちましょう。従業員に十分な注意を払い、あなたが存在し、耳を傾け、理解していることを示しましょう。
全文は下記からお読みください。
3. 今後の予定
PX研究会では11月26日、第10回PX寺子屋を開催します。今回のトピックは、医療機関の大きな課題となっている働き方改革にPXを関連づけたお話しです。
11月26日12:30~13:30
「PX概論」 松本卓 やまと診療所医師
「PX・EXを高めるスマートホスピタル実現に向けた取り組みのご紹介」
小倉環 大成建設デジタルファシリティソリューション室
参加費1000円(会員は無料)でどなたでも参加できます。下記リンクから申し込みください。
Link:https://www.pxj.or.jp/events/
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PXの認知度向上のための年1回の一大イベント、第5回PXフォーラムを12月10日14:00~17:00に開催します。テーマは「各国の取り組みから学ぶ ~グローバルにおけるPX~」。医療機関でのPX導入が進んでいる海外事情、日本でのPX導入・改善事例などを紹介します。
目玉となる企画は、フランス「French Patient Experience Institute」のCEOであるAmah Koueviさんによる特別講演「Patient experience: universal vision, specific actions(PX:普遍的なビジョンと具体的なアクション )」です。
参加費3000円(会員は無料)です。詳細および申し込みは下記からお願いします。
Link:https://www.pxj.or.jp/pxforum2022/
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「患者・家族メンタル支援学会 第6回学術総会」が11月12日、東海大学医学部松前記念講堂(神奈川県伊勢原市)で開催されます。PXをテーマにしたシンポジウムでは、日本PX研究会のメンバー、関係者などが登壇します。登壇者およびテーマは次の通りです。
1.医療の質とペイシェント・エクスペリエンス
青木拓也(東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター臨床疫学研究部)
2.日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会の活動
曽我香織(日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会)
3.新型コロナ・パンデミックにおけるペイシェント・エクスペリエンス
小坂鎮太郎(練馬光が丘病院総合診療科)
4.ペイシェント・エクスペリエンスとコーチング
出江紳一(東北大学大学院医工学研究科リハビリテーション医工学分野)
当研究会理事で、学会長を務める東海大学医学部内科学系血液・腫瘍内科学教授の安藤潔さんによるシンポジウム「がん哲学外来とは」をはじめ、PXの学びにつながる内容となっています。
詳細は学術総会ホームページからご確認ください。
http://smspf.org/6th/index.html
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※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。
編集部から
入場規制が緩和されたので先日、姪を連れて上野動物園にパンダをみにいきました。何をしても歓声が上がり、動物園のアイドルでした!(F)