1.在宅医療の質の評価と活用
2.UAEの新しい医療保険サービス
3. 今後の予定
1.在宅医療の質の評価と活用
サービス業に限らず、医療においてもCS(Customer Satisfaction;顧客満足度)の視点は重要です。在宅医療におけるサービスの評価、その活用をテーマとしたオンラインセミナーが6月15日に開催されました。日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会の運営メンバーである講内源太さんが登壇し、海外の先行事例を絡めてPX(Patient eXperience;患者経験価値)について話しました。
訪問看護師や在宅医療従事者を対象にした「ソフィアメディ在宅療養総研セミナー」は、訪問看護事業を展開するソフィアメディ株式会社、株式会社楓の風のマネジメントスタッフが登壇しました。
在宅医療領域におけるサービス評価について、▽療養者本人・家族の看取りの希望と実際の死亡場所別の満足度は、本人はどこで死亡しても差はあまりないが、家族は希望どおりでないとCSが低くなる、▽在宅医療の質は、病院医療で重視される患者のアウトカムだけでなく、患者の生活状況の把握や、患者・家族への支援・理解、患者・家族の満足、組織間の連携など患者・家族のQOLを踏まえながら幅広く考慮する必要がある――と指摘しました。
CS調査については、両社とも2018年あたりから実施しています。ソフィアメディは、「利用者と向き合うために実施した結果を原点として、教育体制整備や採用、地域連携活動に活かしていこうと思いました」とし、楓の風は「営業パンフレットの作成を機に、提供するサービスについて利用者や主治医、ケアマネジャーが満足しているか、連携ができているかのリアルな声を聞き、それらを自分たちの強みにしたいと考えました」と説明しました。
ソフィアメディのCS調査の質問項目は自社のビジョン・ミッション・スピリッツに根ざしたサービスが提供できているかが回答からわかるように設計。利用者の重症度や介護度、利用日数などのセグメントと日本看護協会のクリニカルラダーに沿った看護の実践能力を示すスコアを参考に、項目を設けています。
楓の風では調査結果を営業面だけでなく、教育や人材確保・定着、業務改善に活用しています。ソフィアメディではドナベディアンモデルによるストラクチャー・プロセス・アウトカムの3つの側面から調査結果を評価。「ソフィアエクスペリエンス」として顧客からの評価、スタッフのスキルレベル、「療養生活の方針を決めることができていると感じているか」を問う、顧客の選択度などをスコア化しています。
楓の風では、「CS調査を行う目的を絞ることで労力やコストをコントロールできます。実際に利用者が感じている課題や改善点、よい点についても知ることができ、各ステークホルダーの声はスタッフのモチベーションとなりました」としています。
日本PX研究会の講内さんは、プライマリ・ケア施設の第三者評価プログラムが各国で展開されているほか、オランダとイギリスにおける質の担保について説明しました。
日本で医療の質評価、改善活動などが浸透しない理由として、①医療提供者が医療の質に関する教育を受ける機会の不足、②質評価・改善ツールの不足、③電子カルテの普及率および質評価における利便性の問題、④第三者評価プログラムの不在、⑤経済的インセンティブの欠如――の5つを挙げました。そのうえでPXと医療の質との関係性、在宅医療においては利用者家族へのエクスペリエンス調査の実施状況などを語りました。
前回のメールマガジンで紹介したプライマリ・ケア連合学会学術大会での反響も含め、在宅医療でCS、PXが注目されています。在宅医療でのPX向上に興味があるという方、当研究会と一緒に取り組んでいきませんか。
2. UAEの新しい医療保険サービス
UAE(アラブ首長国連邦)でPX向上につながる新しい医療保険サービスを開始する、とUAE発行されている英語の日刊紙「Khaleej Times」が報じています。
同国保健予防省(MoHAP)はこのほど、医療保険業務を管理・規制するための新たなサービスを開始しました。Riayati Post Office が実施するサービスでは、国の医療システムを統一し、UAEのすべてのサービスプロバイダーをつなぐことを目的としています。これによりPXを改善し、臨床データへのアクセスを容易にすることで治療の質と成果を高め、カスタマージャーニーを向上させることができます。
データ共有の仕組みとして「E-Claims Post Office」を採用。このプラットフォームは、集団健康管理の効率、品質、パフォーマンスの向上、患者データのアクセス性向上、健康情報システムの構築、健康品質システムの構築を目的として設計されています。サポートサービス部門担当次官補のAhmed Ali Al Dashtiさんは、「Riayatiプラットフォームを国際基準に基づく持続可能な医療システムとして構築することは、デジタルヘルス分野でUAEの世界的地位を築くという大望を支えます」と強調しました。「最新のテクノロジーを搭載したこのプラットフォームは、患者の現在の臨床データを表示する、ユニークで統合されたデジタルシステムを提供します」
また、AhmedさんはMoHAPが国民医療システムの近代化、特にデータを扱うためのスマートテクノロジーの分野であらゆる努力を払うと述べました。MoHAPのデジタルヘルス部門ディレクターのAli Al Ajmiさんは、「Riayatiプラットフォームは保険請求処理の合理化と効率化をさらに進め、より迅速な作業サイクルを実現します」と話しています。
国の医療保険サービスによってPX向上を目指すという、この取り組みは注目です。詳細がわかりましたらお伝えしたいと思います。
3. 今後の予定
PX研究会では医療機関や企業でPXを広めるエバンジェリストとして、PXEの認定を行っています。現在、2022年度の第4期生を募集中です。PXについて体系的に学べる内容となっております。詳細と申し込みはリンクからお願いします。
PXEの第1~3期生は5000円で受講可能です。改めてPXを学び直したいという方もぜひエントリーください。残席わずかなのでお早めにお願いします!
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第9回PX寺子屋を、7月23日(土)12:30-13:30に開催します。PX概論のほか、病院でのPX向上の取り組み事例を紹介します。
「PX概論」
松下記念病院 看護師 小松 良平
「小松市民病院におけるPX向上推進WG立ち上げについて」
小松市民病院 看護部長 湯野 智香子
研究会会員は無料、非会員の方は1000円です。
下記リンクから申し込みできます、奮ってご参加ください!
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※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。
編集部から
夏至が過ぎて夏の到来です。夏野菜がたっぷり入ったプレートランチが最近の定番です!(F)