1.「第8回PX寺子屋」開催!
2.コロナ禍でのPXの展望
3. 今後の予定
1.「第8回PX寺子屋」開催!
日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では3月5日にオンラインの勉強会、「第8回PX寺子屋」を開催しました。
コロナ禍のなかでオンライン開催とした勉強会も今回で8回目。PX(Patient eXperience;患者経験価値)に関連するトピックを毎回取り上げています。
冒頭では初参加の方に向けた「PX概論」を運営メンバーが講師としてお話ししており、医療法人社団松井病院看護部長の菊池明美さんがPXの考え方や、PXとPS(patient Satisfaction;患者満足度)の違いなどについて説明しました。PXにも関連する考え方として、企業が提供するサービスや商品について顧客がどの程度満足したかを数値化したCX(Customer eXperience;顧客経験価値)がありますが、顧客が考える「価値の4段階」について、行きつけの寿司店に行った時のエピソードを交えながら紹介しました。
この日の寺子屋のテーマは、「PXとHCDの親和性」。近年注目されているコミュニケーションデザイン領域のなかのHCD(Human Centered Design;人間中心設計)について研究している、HCD-Net理事で神奈川大学経営学部准教授の飯塚重善さんがPXに関連づけて語りました。
HCDはISO9241-210規格で、「人間のことを理解し、ユーザーにとって使いやすいシステム作りをめざそう」という考え方のもとで設計されています。システムの仕様に焦点を当て、人間工学およびユーザビリティの知識と手法を適用。インタラクティブシステムをより使えるものにするための、システムの設計および開発へのアプローチ法です。
HCDはPDCAと同様、サイクル化することで使いやすさを継続的に向上していきます。「ユーザーと一緒に考えることで、手戻りが少なくなります。個人の主観でなく、人間の特性や理論で説明ができるものであり、ユーザビリティを超えた付加価値のある体験を設計するというUX(User eXperience;ユーザー経験価値)を行ううえでHCDは活用できます」と飯塚さんは指摘。「HCDサイクルのなかにPX指標を取り入れることで、改善の仕組みがシステムとしてできると思います。現場の医療者とも一緒にコラボレーションしていきたいです」と語りました。
次回、第9回の寺子屋は7月23日開催予定です。扱うテーマ、講師などが決まりましたら当研究会ホームページやこのメールマガジンでご案内します。
2. コロナ禍でのPXの展望
米ニューヨーク州にあるコロンビア長老派教会医療センターのCXO(Chief Experience Officer) のRick Evansさんは米国における2022年のPXの展望について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが収まらないなか、「今年も非常に厳しい年になると見ています。再建、回復、変革の3つにエネルギーを集中させる必要があると思います」と指摘しています。米メディアプラットフォームのBecker’s Healthcareの掲載記事を紹介します。
コロナ禍での医療現場のPXについて、Rickさんはベッドサイドへの訪問や家族の同席の制限、人材配置の課題や不足、サプライチェーンの課題、スタッフの燃え尽き症候群や疲労といった点を挙げたうえで、「今年が回復だけでなく、PXをどのように測定し、評価し、改善するかについて、より長期的な変革をもたらす年になるとも信じています」と話します。
「組織の基盤を再構築するために最優先すべきは、人員配置です。人手が足りないのに、患者さんとのつながりやベストプラクティスの実践について語るのは難しい。より効果的にスタッフを採用するだけでなく、新入職員や新卒の臨床医をチームに迎え入れ、サポートする方法を見出す必要があります」と言及。さらに、「臨床医をはじめとするスタッフをベッドサイドに戻すという基本的な努力に加え、チームの回復を支援する必要があります。セルフケアを促進するためのプログラムを整備しておく必要があります。人員削減のプレッシャーが和らぐと、チームは自分たちの健康に気を配る余裕を持ち始めます。また、この2年間の経験を整理する手助けも必要です」とRickさんは語ります。
また、スタッフの離職については、「患者さんと仕事のベルトコンベアーに乗っているような気がして、もう降りたいと思う人もいます。しかしなかには、コロナ禍における自分たちの役割を理解できるようになっている人もいます。彼らは、これが終わること、そして私たちがともに達成できたことに意味があることを理解しています。病院は個人として、チームとして、私たち全員が自分自身を取り戻すためのプログラムをサポートする必要があります。この癒しと回復のプロセスは、短絡的であったり、省略されたりするものではありません。これは、私たち全員が歩むべき、“森から抜け出すための道”なのです」としています。
そして回復を超え、変容へと向かう必要があるという認識を持っています。「パンデミックの体験には、将来に向けて再評価され、リセットされるべき側面があります。例えば、パンデミックでは、ベッドサイドにいる家族の存在がいかに重要であるかを教えてくれました。従来は「訪問」と考えていたものを、「家族のケアへの参加」と捉え直し、それに基づいてアプローチを再構築する必要があります」。Rickさんは、「私たちは医療において、チームと患者さん、そして患者さん同士のつながりがいかに重要であるかを学びました。患者さんとのつながりはPXの核心であり、そのための時間と空間が必要です。パンデミックにおいて、人とのつながりは対面である場合もあればバーチャルである場合もあることを学びました。必要性に迫られ、私たちはテクノロジーを新しい方法で使い、互いに協力し合うようになりました。また、患者の自律性とケアへの参加は、テクノロジーを熟考して使用することで強化できると学びました。これからの数年間は、私たちが学んだことを統合し、対面式とバーチャルな要素を組み合わせた、つながりのためのエコシステムを構築していくことが必要です」と結論づけています。
全文は下記リンクから読むことができます。
3. 今後の予定
PX研究会では医療機関や企業でPXを広めるエバンジェリストとして、PXE(Patient eXperience Expert)の認定を行っています。現在、2022年度の第4期生を募集中です。PXについて体系的に学べる内容となっており、多くの方のエントリーをお待ちしています。詳細と申し込みはリンクからお願いします。
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※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。
編集部から
来月開催のマラソン大会にエントリーしてしまったため、練習不足を補うために減量中。お店ではケースに入ったケーキにいつも釘づけです笑。(F)