日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.172

1.米国サーベイの最新化
2.日本のPXフォーラム
3. 今後の予定

1.米国サーベイの最新化


米国医学研究所が米国のヘルスケアシステムの基本となる6つの目的の1つに「患者中心のケア」を掲げて約20年。研究を重ねてきた結果、PX(Patient eXperience;患者経験価値)と臨床結果の向上、患者の安全性の向上、医療サービスの適正化が高い相関を示していることがわかっています。

患者中心主義の高まりから、CMS(the Centers for Medicare and Medicaid Services)によるPXを評価するためのCAHPS(the Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems;米国のPXサーベイ、病院向けのものはHCAHPS)が標準化され、重要な役割を果たしてきたものの、過渡期を迎えています。データへのアクセスの改善や、サーベイ結果が誰にとっても理解しやすい、最新のものに変えていく必要性が指摘されています。

 

☆PXサーベイを最新化するための次のステップ

医療機関に有意義なフィードバックを行い、十分な回答率を維持するために必要な変更として以下が挙げられています。

・患者、家族、医療者からのインプットに基づいたサーベイのコンテンツの定期的な更新

・自由回答形式の質問プロトコルを実装することで患者のナラティブとコメントを反映させる

・効率的かつ迅速にフィードバックできる調査とデータ管理方法の開発

・サーベイの対象となる患者集団のニーズに合わせるなど、「案内メッセージ」をより洗練させる

・サーベイの調査フィールドの平準化(地域やコミュニティ、医療機関によるスコアの偏りの調整)

 

PXを評価する際には、「量的アプローチ(PX尺度を用いたサーベイによってPXを数値として定量化)」「質的アプローチ(患者の言葉や観察した事象を分析)」の2つがあり、どちらも欠かせない重要なものとされています。自由回答形式の質問によって患者の「語り」を記録すると、コンシューマー向けの公開レポートに価値が生まれ、医師による改善を推進することに役立ちます。そして患者が能動的に自身のPXを報告する動機となる可能性があります。

CAHPSを測るためのすべての機器に、自由回答形式の質問プロトコルを実装することが進められています。量的アプローチから得られたデータを補完、もしくは拡張するPXに関する貴重な情報を引き出せるとされています。

 

また、PXサーベイの中立性をいかに担保するかについても指摘があります。ステップとして次の項目が挙げられています。

☆サーベイデータを民主化するための次のステップ

PXサーベイのデータを使いやすく、よりアクセスしやすく、サーベイの透明性を高めることが、多くの情報に基づいた患者の意思決定を可能とし、継続的な医療の質改善には不可欠。そのためには次のことが推奨されています。

・中立性が保たれた状態での比較ベンチマークデータの公開

・患者のサーベイ対応への負担軽減とデータ収集の際の医療機関のコスト軽減につながるサーベイの測定要件の調整

・患者の意識を高め、医療機関が使用しやすくするなど公開レポートの強化

 

全文は以下リンクからお読みください。

Link:https://www.healthaffairs.org/do/10.1377/hblog20200309.359946/full/

 

 

2. 日本のPXフォーラム


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会ではPX(Patient eXperience;患者経験価値)を知っていただく機会として、2018年からPXフォーラムを開催してきました。今年は12月4日(土)14:00~17:00、オンラインにて行います。

 

第1回と第2回のフォーラムでは、PX研究会が発足当初から取り組んできたPXサーベイの開発と実施事例を中心に、PXについて紹介。昨年の第3回は、PXと関連が深いとされるEX(Employee eXperience;従業員経験価値)をトピックとして取り上げました。米国からCaring Accentの近本洋介さんがライブで参加し、米国におけるPXの機動力の変遷と最近のトレンド、特にEXが重視されるようになった背景について話してくださいました。

第4回となる今年のテーマは、「変革から成熟へーWithコロナ時代のPXがもたらすものー」。PXは世界において、もちろん日本でもCOVID-19の影響抜きには語れなくなっています。患者と医療者との直接的なコミュニケーションが難しくなっているなかで、PXもニューノーマルへの対応が迫られています。PX研究会では、PXによって日本の医療に変化をもたらすのではなく、どのような時にでも必要とされるPXのあり方を考え、深めていく段階に来ているとの思いから、今回のフォーラムのテーマ設定をしました。

 

フォーラムは2部構成。第1部では「Withコロナ時代のPX」について医師3人が語るシンポジウムを企画しています。急性期から在宅までと、医療のさまざまな段階でCOVID-19はどのような影響をもたらしているのか、そしてPXはどうあるべきなのかといった話を展開する予定です。第2部のディスカッションは、医療現場や職場でPXを広めるための人材育成としてPX研究会が認定するPXE(Patient eXperience Expert)の第2期生に、PXEで学んだことをどのように活用しているのかを語っていただきます。日本の“PX先進病院”である国立病院機構九州医療センターのPXサーベイの導入や分析結果をもとにした改善例についても紹介します。

当メールマガジンでは今後、PXフォーラムの詳細、見どころを紹介していきます。

 

PX研究会会員(法人・個人)は無料。第1・2部で3000円となります。第1部、第2部のみ(各1500円)参加も可能です。現在、エントリーを受付中です。申し込みは下記リンクからできます。

Link:https://www.pxj.or.jp/pxforum2021/

 

 

 

3. 今後の予定


PX研究会では2021年は勉強会を「PX寺子屋」と銘打ち、全国展開していく予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、すべてオンラインでの開催といたします。「第7回PX寺子屋」は11月13日(土)12:30 ~、開催です。申し込みは下記リンクからお願いします!

 

「PX概論」       原町赤十字病院  引田紅花

「摂食嚥下の学会報告」 幌西歯科(札幌市)院長 濱田浩美

https://www.pxj.or.jp/events/

 

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


中学の修学旅行以来から時を経て、石庭で有名なお寺を訪問しました。若いころには理解できなかった侘び寂びの世界。清々しい空気が流れていて心地よかったです。(F)