1.PX向上に必要な投資とは?
2.米のPX関連イベント
3. 今後の予定
1.PX向上に必要な投資とは?
医療機関はプロバイダー(医師をはじめとした医療従事者)のエンゲージメントとPXをよりよくするために、スタッフに投資する必要がある――。PXの高い組織をつくるためには人材育成が欠かせないことを提案する、米ヘルスケア関連メディア「Patient Engagement HIT」の掲載記事を紹介します。
プロバイダーの燃え尽き症候群によって、PXとケアの質が低下することが懸念されています。確信的なPXというのは「単なる満足度」以上、ラグジュアリーなホテルで簡単に見つけられる“付け足しの機能”以上のものです。「確信的なPXは、患者を中心とした安全で質の高いケアから生まれます」とPXサーベイの分析などを行っている米Press Ganey社の戦略的コンサルティングパートナーのMartin Wrightさんは言います。そして達成するには、熱心で回復力のある(すぐに元気になる)スタッフを雇用することが必要だとしています。
Press Ganeyのデータによると、プロバイダーのエンゲージメントと回復力は本来あるべきところにありません。2014年にプロバイダーのエンゲージメントは5段階評価の4.13に達しましたが、2018年は4.11と、頭打ちになっています。「現在労働市場は人手不足でひっ迫しており、熟練したスペシャリストを見つけるのが難しい。患者や組織のニーズに対応できる重要なスキルをもったスペシャリストへの需要は高いですが、供給は多くありません。医療機関は優秀な人材を引き込むだけでなく、定着させるために組織の足元を強化する必要があることを認識しています」とMartinさんは指摘します。
プロバイダーのエンゲージメントが頭打ちになっているのをみると、ヘルスケア業界はエンゲージメントに投資せず、プロバイダーは優先事項ではないというメッセージがヘルスケア市場に伝わります。特に、ヘルスケア業界の労働力が縮小しているのがわかると、実際に結果として現れます。Martinさんによると、就労1年以内の看護師の離職率は約17.5%、2年目には33.5%、3年目には43%に達します。
組織はスタッフと彼らの仕事の深い接点となるところを探しており、それは臨床医や最前線で働く医療者も同じです。「エンゲージメントが『5』ということはスタッフが組織と強い絆をもっていること、仕事場として最適であり、患者がケアを受ける場としても最適だと推奨できることを意味します。組織とプロバイダーがこのようなつながりを持つには投資が必要です。チームリーダーを育成し、患者のニーズを満たすためのツールを提供しなければなりません」
Martinさんは続けて、「組織内で一体感を生み出すことが、ポジティブでエンゲージメントの高い労働力を生み出します。第一に、組織が進むべき方向にコミットする必要があります。多くの組織はプロバイダーと最前線で働く医療者の組織文化的な接点として、危害をゼロにすることを約束しますが、そのほかの病院では患者中心主義を指針に置くかもしれません。重要なのは行動が言葉よりも雄弁になることです」と言います。多くの組織が患者を中心に置くことを話し合っていますがその一方、多くの病院文化においては、実際はこれに従わないことも指摘しています。
他業界と同様に、病院も過労や利用されているといった負の感情、仕事に不満を持つスタッフは仕事にコミットしていない可能性があります。特に医療機関では、臨床医や最前線で働く医療者を阻害する労働条件、息苦しく思われる職場の要素を改める必要があります。同時に、リーダーを育成し、その役割を強化するために取り組む必要もあります。「私たちはヘルスケアのリーダを育成するための労力をほとんど費やしていません。個々のスタッフのスキル開発の機会を提供し、彼らの能力に投資し、臨床的だけでなく人として優れた臨床医がチームを率いる取り組みはできていません」とMartinさん。そこで、リーダーシップトレーニングを提供することで、組織は高いパフォーマンスのなかで強い意志を育み、いい仕事が何かを認識し、スタッフが大変な努力を続けることができるようになるといいます。
最後に重要なこととして、組織はプロバイダーが患者とかかわりやすくする環境をつくる必要があります。熱心で回復力のあるスタッフの育成に取り組む一方、質の高いケアを提供するプロバイダーに対し、阻害する要素にも目を向ける必要があります。院内のさまざまなプロセスが複雑ではないか、ケアを文書化することなどに時間を費やしていないか、患者とのかかわりの邪魔になる管理タスクがあるか、といったことです。「エンゲージメントとレジリエンスを結びつけると最前線の看護師、患者ケアを提供する看護助手などが最も活性化されることがわかっています。彼らは公平で、個別ケアを提供しているように感じ、その相互作用から理解するのです」
全文は下記リンクからご一読ください。
2. 米のPX関連イベント
アメリカのPX推進団体であるThe Beryl Instituteが主催するPXイベント「ELEVATE PX2022」の開催スケジュールが決まり、現在参加者を募集しています。
「ELEVATE PX2022」は2022年3月28~30日、米インディアナ州のJWマリオットホテルで開催されます。世界でPX向上に取り組むヘルスケアに携わる人たちによる講演やセッションを通して、PXに関するさまざまな先進的な取り組みを知ることができるイベントです。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、ここ2年はオンライン開催でしたが、今回は現地でも開催される予定です。開催要件としてCOVID-19ワクチン接種が強く推奨されているほか、対面による会議スペースは最初は定員の50%以下でのエントリー受付となり、COVID-19の感染状況に応じて定員を増やすことが検討されています。すべてのセッションはオンラインで視聴が可能です。
内容としては、▽エグゼクティブリーダーシップ、▽医師や看護師のリーダーシップ、▽PXとPS(Patient Satisfaction;患者満足度)、▽サービスの卓越性、▽患者と家族のアドボカシー、▽マーケティング/コミュニティへの働きかけ、▽医療の質/安全なオペレーション、▽人事/組織開発、▽臨床教育/スタッフ育成、▽患者と家族のアドバイザー――といった分野について学べるセッションが3日間にわたり繰り広げられます。
また、主なトピックとして、▽反人種差別への取り組み、▽患者のメンタルヘルスサポート、▽病院のCOVID-19への適応策、▽コミュニケーションスキルのトレーニング、▽公平性、多様性を実現するためのバーチャルコミュニティの再考、▽テクノロジーの活用によるPXカルチャーの定着、▽患者のクレーム管理、▽ヘルスケアシステム全体のリーダーシップ、▽PXとEX(Employee eXperience;従業員経験価値)のナビゲーションーーなどが挙げられています。
参加登録もすでに開始しており、今年10月末までの申し込みではオフラインは会員1000ドル、非会員1150ドル。オンラインの場合は会員425ドル、非会員525ドルとなっています。
Link:https://web.cvent.com/event/bc16b2ff-05b0-4480-8fe3-51a959233fb1/summary
3. 今後の予定
日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では「第4回PXフォーラム 変革から成熟へーWithコロナ時代のPXがもたらすものー」を12月4日に開催します。COVID-19の影響により、今年はオンラインのみでの開催です。PX研究会会員(法人・個人)は無料。会員外の方は第1・2部で3000円となります。第1部、第2部のみ(各1500円)参加も可能です。フォーラムの詳細と申し込みは下記リンクからお願いします。
https://www.pxj.or.jp/pxforum2021/
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PX研究会では2020年は勉強会を「PX寺子屋」と銘打ち、全国展開していく予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、すべてオンラインでの開催といたします。「第7回PX寺子屋」は11月13日(土)12:30 ~、開催です。申し込みは下記リンクからお願いします!
「PX概論」 原町赤十字病院 引田紅花
「摂食嚥下の学会報告」 幌西歯科(札幌市)院長 濱田浩美
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※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。
編集部から
コロナ禍でワインが売れず、大量の在庫を抱えている山梨のワイナリーを少しでもサポートできないかと思い、一升瓶ワインを4本購入しました。有名な日本酒銘柄の段ボール箱に入って送られてきた、マグナムボトル的なやつです(笑)。こういう時だからこそ家飲みを楽しみたいと思います。(F)