1.第2回GC開催
2.燃え尽き症候群とPX
3. 今後の予定
1.第2回GC開催
米国のPX推進団体「The Beryl Institute」が立ち上げた「Global Council」(GC)の第2回目となるミーティングが8月26日にオンラインで開催されました。日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会を代表して私、藤井が参加しました。
GCはPX(Patient eXperience;患者経験価値)のグローバル基準をつくるため、各国でPXを推進する組織のメンバーで構成されています。ブラジル、シンガポール、コロンビア、スペイン、カナダ、サウジアラビア、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イスラエル、パキスタン、南アフリカ、ラトビア、ベルギー、そして日本と15カ国23人になります。
第1回のミーティングでは主要なアクションとして、次の項目を掲げています。今回は実現に向けた具体的なアクションを起こしていくためのアイデア出しを行いました。
- 組織としてPX・HXを支持/ヘルスケアの未来をリードする
- 新しいPXの測定方法を開発/患者と全スタッフの声を聞く
- PXにおけるエビデンスのある実践をマッピング、強化する(グローバルな構成・ローカルな適用性を考慮)
- PXの質とアウトカムの関連を強める
- 研究を通じてPXの影響力を拡大する
- 患者パートナーシップの重要性・価値を高める
- より広い視点、HXから公平性と格差の問題を考える/健康をグローバルな優先事項とする
- エクスペリエンスの学習や知識に影響を与えるために教育・アカデミアに取り組む
取り組みの優先順位の高さとして、世界基準でPXの測定方法を標準化することが挙げられました。▽JCI(Joint Commission International)で使われている医療の質評価の一部をPXと関連づけることができないか、▽グローバル/地域/ローカルにおけるデータ共有のフレームワークを作成する、▽患者とスタッフ両方のPXを理解する方法を考える、▽PFAB(Patient and Family Advisory Board;患者と家族の諮問委員会)を始めとする、さまざまな人たちと協同し、生の声から情報を得られるようにするかーーといった視点で作業を進めていくとしました。また、PX向上につながった優れた事例をグローバルで収集し、シェアしていくこと、学習や教育ツールづくりについても検討していきます。
これらを進めていくうえで考慮すべきこととして、▽医療スタッフの不足によりPXに集中できる環境でないこと、▽知的理解を超え、人々の心を引き込むためのPXの語り方、▽PXをより広げた概念であるHX(Human eXperience;人としての経験価値)にイノベーションとテクノロジーを関与させる――などの意見が寄せられました。
PXの測定による医療の質、アウトカムを示すこと、その際に患者や家族にいかに寄り添い、彼らの声を受けとめるかといったことが、PXを推進するにあたってのグローバルな課題となっています。今後もGCでの活動や議論の内容などについて、報告していきたいと思います。
Global Council -The Beryl Institute
Link:https://www.theberylinstitute.org/page/GlobalCouncil
2. 燃え尽き症候群とPX
医師の燃え尽き症候群(バーンアウト)はPXを考える際のトピックの一つです。燃え尽きへの対応は、PXジャーニーで医師とパートナーとなりたいという患者やすべての人たちにとって重要だからです。日本だけでなく、世界をみても医師不足や医療現場の疲弊が問題視されており、特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、PX向上のために医師のエクスペリエンスを再考する流れとなっています。医師の燃え尽きとそれに対応するコストについての考察記事を紹介します。
COVID-19によるパンデックで、医師は自身や家族の感染などを心配しつつ、長時間働いていることに気づきました。その解決法として示されるのは、多くが問題の根本にある制度やシステムの改善ではなく、ウェルネスプログラムの提供など、個人に焦点を当てたものとなっています。燃え尽き症候群は定量化が困難な場合があり、コストに直接関連しているとも限らないことが対応を難しくしています。
燃え尽きによる医師の退職は、ほかの医師の採用とトレーニングにかかる費用など、コストの測定は簡単です。一方、燃え尽きによる不満を持っている医師がほかのスタッフや患者と接することで組織に二次的なコストが発生します。スタッフの不満と離職率が上がること、そしてPXに影響するからです。PXが下がれば医療機関から患者が離れていき、その経済的な影響はとても大きくなります。
ほとんどの医療機関では医師の極度の疲労やストレスによる、燃え尽きのリスクを認識しています。一部のリーダーは問題がどこまで及んでいるかを評価せず、リスクを減らすための措置をとります。ほかの多くのリーダーは燃え尽きがどこまで深刻か、どこに集中して改善すべきかを判断し、改善の度合いを測定します。燃え尽き症候群を評価するものとして、Maslach Burnout Inventory(診断テストを行うバーンアウトの尺度)が有名ですが、米ミネソタ州のメイヨークリニックや米国医師会でも同様のものがあります。
燃え尽きはすぐに解決するものではなく、早期の介入と、燃え尽きに対応する包括的なプログラム、そして患者だけでなく医療者のwell-beingを大事にする文化をつくるための継続的な努力を必要としています。全文は下記リンクから読むことができます。
Link:https://www.medicaleconomics.com/view/the-true-cost-of-physician-burnout
3. 今後の予定
日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では「第4回PXフォーラム 変革から成熟へーWithコロナ時代のPXがもたらすものー」を12月4日に開催します。COVID-19の影響により、今年はオンラインのみでの開催です。PX研究会会員(法人・個人)は無料。会員外の方は第1・2部で3000円となります。第1部、第2部のみ(各1500円)参加も可能です。フォーラムの詳細と申し込みは下記リンクからお願いします。
https://www.pxj.or.jp/pxforum2021/
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PX研究会では2020年は勉強会を「PX寺子屋」と銘打ち、全国展開していく予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、すべてオンラインでの開催といたします。「第7回PX寺子屋」は11月13日(土)12:30 ~、開催です。申し込みは下記リンクからお願いします!
「PX概論」 原町赤十字病院 引田紅花
「摂食嚥下の学会報告」 幌西歯科(札幌市)院長 濱田浩美
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※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。
編集部から
夏の最後に赤ワインのフローズンドリンクを飲みました(ワインを火にかけてアルコールを飛ばしています)。9月に入った同時に、東京は夏が終わってしまいましたね。寂しいです。(F)