1.第4回PX寺子屋を開催!
2.COVID-19での患者対応
3. 今後の予定
1.第4回PX寺子屋を開催!
日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では5月15日、オンライン勉強会「第4回PX寺子屋」を開催しました。
勉強会はPXについての理解を深める場として、2016年からスタート。毎回さまざまなテーマでスピーカーを招き、医療者や企業の方など、職種の垣根を越えたディスカッションを行っています。今回は函館五稜郭病院のPXに関する取り組みを取り上げました。
講師はPXE(Patient eXperience Expert)1期生である同院の放射線技師の小林聖子さんに務めていただきました。日本の放射線治療の利用率が低いという背景から適正活用のため、放射線治療科では2年に1回、患者満足度調査を実施してきたものの、課題抽出ができないといったことがあったといいます。そこでPX研究会が開発した日本版PXサーベイ(PXを定量化し、比較・分析を行う調査)を設問をカスタマイズしたうえで導入しました。
プレテストを行ったうえで設問数を36に絞り込み、2020年7~12月に治療を行った患者を対象に実施。101人(回答率71%)から回答を得ました。PXスコアは8.79(10段階評価)と、同院が実施している別の調査の病院全体のスコアと大きな差はありませんでした。
サーベイ結果から、放射線治療科の強みは「信頼感(看護師)」「誠実な対応(看護師)」「職員の協力」である一方、課題として「精神的なケア」「痛み・症状のケア」「情報提供量の適切さ」などがわかりました。小林さんは「委員会で結果を報告したところ、院長や看護師長から『普段から課題だと感じていたものが適切に抽出された。病院全体で取り組み、改善していきましょう』と言われました。設問の設定、統計学的解析が適切かといったサーベイ実施にあたっての課題をクリアしたうえで続けていき、アドヒアランス向上や改善活動につなげたい」と話しました。
続いて、同院企画情報システム課企画係の久米田聖人さんがPXサーベイ結果をPFM(Patient Flow Management;入退院支援)に活かす取り組みについて紹介。「診療科によって入院食事栄養指導料の算定にばらつきがあるなど、以前からの課題がPXサーベイでも明らかになりました」と久米田さんは指摘、PFMを担う医療総合SCの再構築に病院として取り組んでいくことになったといいます。院長の発案で従来のPFMに、より患者視点を取り入れたマネジメントの仕組み、退院に向けた支援を行っていくPXM(Patient eXperience Management)を打ち出しています。
PXサーベイを病院全体で行わなくても、PX向上につながる活動は可能です。今回ご紹介したように、PXEには医療機関でのPXの向上、改善活動に取り組んでいただいています。7月から第3期生の養成講座が始まります。現在受講生を募集しています、ぜひエントリーください!
Link:https://www.pxj.or.jp/pxe/
寺子屋の資料については、研究会会員の方は会員専用ページから閲覧可能です
Link:https://www.pxj.or.jp/memberonly/
2. COVID-19での患者対応
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、医療従事者は現場に混乱を起こさせる患者行動の矢面に立たされており、質の高いケアの提供に悪影響を与える可能性がある――。ジョージタウン大学の経営学教授であるChristine PorathさんとクリーブランドクリニックのCXO(Chief experience Officer)のAdrienne Boissyさんがハーバードビジネスレビューに投稿したレポートの概要を、米ワシントンD.C.にあるヘルスケア関連のコンサルティング会社Advisory Board社の記事から紹介します。
COVID-19では「通常より激しい怒りとさらなるフラストレーション」を抱える患者の矢面に立たされています。そして疲労を抱える患者の粗暴さにさらされることはメディカルチームに悪影響を及ぼすといい、4500人を超える医師と看護師を対象としたある研究では「71%が混乱を起こさせる行動(見下したり、侮辱的、失礼な行動を含む)と医療過誤の間には関連性があり、27%は実際に患者の死につながるような行動に関係したことがある」と当レポートには書かれています。
患者と医療従事者の双方を守るため、無礼な行為と悪い行動を減らすための6つの方法として以下を挙げています。
1.安全なトレーニング方法
医療従事者はNAPPI( Non-Abusive Psychological and Physical Intervention;非虐待的心理的および身体的介入)などの定期的な安全トレーニングを実施するための対応を推奨する。クリーブランドクリニックでは潜在的な暴力を緩和するために地元の警察と提携。院内には「暴力は許されない」ことを示す看板を掲げ、対応する委員会を設置。定期的なアラームテストの実施とともに、EHR(電子健康記録)でスタッフへの暴力を起こす可能性のある患者にフラグを立てている。
2.患者と医療提供者を「ナッジ」する
さまざまな状況で「ナッジ(行動科学の知見により、望ましい行動をとれるよう後押しする)」が役立つとしており、いくつかの病院や医療システムが安全プロトコールの一環として採用した。
3.トレーニングで期待を高める
期待を高めるトレーニングは、医療提供者が不安定な状況下で何をする必要があるのか、敬意をもっての対処法を知るのに役立つ。クリーブランドクリニックは2011年から、共感と人間関係に焦点を当てたコミュニケーションスキルのトレーニングを提供しており、「マスクをつけながら患者との話し合い方」といったガイダンスを行っている。
4.人々のありのままと向き合う
パンデミックは医学的だけでなく心理的トラウマ、身体的損傷、感情的被害を引き起こすことを認識する。組織はトラウマに基づいたケアを行うことを推奨。一時解雇を回避したり、ピアサポートグループの設立など、あらゆる種類の非難に対処するためのポリシー、言葉遣い、トレーニングを開発する。
5.リカバリーのときをつくる
混乱を起こさせる行動への組織的な戦術は「非難の声を完全にとめる」ことではない。そのような行動に直面したときは、深呼吸をしたり、集中できる小さなルーティンをつくるなどして、ひと息つくことを勧める。
6.仲間を見つける
あらゆる仕事においてポジティブな関係性をつくることの重要性を強調。リーダーは医療従事者に対し、活力を与えること、精神を高める声掛けをする義務がある。それは患者のケアをするのと同じように、自分と他者の成功を高めることである。脳は他者のボディランゲージと感情に反応するようになっていて、幸福、平和、共感は伝染するものなので、1つのジェスチャーで自分自身やチーム、そして世界を変えることができる。
詳細は下記リンクをご一読ください(全文をダウンロードするには会員登録が必要です)。
Link:https://www.advisory.com/daily-briefing/2021/05/19/patient-disruption
3. 今後の予定
PX研究会では12月4日(土)に「第4回PXフォーラム 変革から成熟へーWithコロナ時代のPXがもたらすものー」をオンラインで開催します。PX研究会会員(法人・個人)は無料。会員外の方は第1・2部で3000円となります。第1部、第2部のみ(各1500円)参加も可能です。フォーラムの詳細と申し込みは下記リンクからお願いします。
https://www.pxj.or.jp/pxforum2021/
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第5回寺子屋を8月21日(土)に開催します。詳細は決まり次第、PX研究会ホームページと当メールマガジンでお知らせします。
第5回PX寺子屋
・日時:2021年8月21日(土)13:00-14:00
・テーマ:「PX概論」ほか
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※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。
編集部から
時間があるときはどこまでも歩きます。最近、自分史上最高の相棒を見つけました。(F)