日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.152

1.8つのPXトレンド
2.今週末は「PX寺子屋」です!
3. 今後の予定

1.8つのPXトレンド


前号から続きますが、PX(Patient eXperience;患者経験価値)のトレンドを取り上げます。米フォーブス誌に掲載された、エクスペリエンスのマネジメント会社Qualtricsのグローバルヘルスケア部門の責任者Patty Riskindさんの寄稿を紹介します。

 

「PXと経営の相互作用を理解することで、ヘルスケアシステムの回復と成長のために、どこにフォーカスを当てればいいかを特定できる。患者や医療従事者からのフィードバックに耳を傾け、理解し、それに基づいて行動することは、2021年のワクチンの供給とケアを提供する信頼できるパートナーとしての役割を強調するためのマネジメントに重要となります」とPattyさんは指摘したうえで、PXのトレンドとして次の8つを挙げています。

1.測定から行動への移行

20年以上にわたり、アメリカの医療システムはメディケアからの払い戻しを受けるためにPXを測定する必要があった。HCAHPS(Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems;米国のPXサーベイ)の指標を把握することは重要だが、ケアの改善に劇的な影響は与えていない。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断、治療、回復の過程では最前線にいる医療者に対し、コミュニケーション手法やコンプライアンスの強化、全体を調整してケアを行うやり方を示すことで、多くの命が救われた。測定は整合性を測る指標としては役立つが、より適切な行動を知ることが実際の改善につながる。HCAHPSを補完するリアルタイムの質問を組み合わせることで、PX向上につながるより効果的なケアを提供できるようになる。

 

2.EMRによるレバレッジ

医療従事者がEMR(Electronic Medical Record;電子医療記録)を介して個々の患者記録に簡単にアクセスできることでコミュニケーションが強化され、信頼関係が生まれる。そのためにはリアルタイムで現場にフィードバックするための情報抽出の簡素化や、患者の嗜好、感受性などに関してもEMRに追加する必要がある。

 

3.デジタル革命を利用

COVID-19ではジェネレーションX世代からシニアまで、ビデオ会議、オンラインでの食事の注文、電子コミュニケーションツールの利用が急増している。エクスペリエンスは患者が医療機関のWEBサイトにアクセスしたときから始まる。探している情報をすぐ見つけられるか、簡単に予約できるかなど、医療に限らずUX(User eXperience;ユーザー経験価値)は市場拡大に重要となる。WEBサイトのほか患者ポータル、健康アプリ、ベッドサイドでのコミュニケーションツールなどを提供することが最低限必要だ。

1年前は初期段階だった遠隔医療は今では当たり前になっている。「スケジュールを組むのは簡単だったか」「患者と効果的なコミュニケーションがとれたか」「患者は診療に満足したか」「医療従事者はインターフェースに満足しているか」といったバーチャルでの診療を評価する方法を医療機関に提供しなければならない。

 

4.回復力と維持する力にフォーカス

COVID-19はすべての医療従事者の生活に影響を与えている。優れたPXを提供するためにも、医療従事者が勤めている医療機関からサポートを受け、エンゲージメントが高いことを認識している必要がある。医療機関が最前線で働く医療従事者のフィードバックを活用し、彼らの意向を把握することでワークフローの合理化、プロセスの簡素化などによりエンゲージメントを高めるアクションにつながる。

 

5.多様性と公平性と包摂性

COVID-19は医療へのアクセスと診療において人種格差を悪化させた。すべてのコミュニティで患者アウトカムを改善するために、医療機関では多様性と包摂性(いかなる社会的属性も排除しないこと)の文化を育てなければならない。

 

6.信頼を築く

COVID-19による誤解が広まっているため、医療機関はケアに必要な信頼できる情報源としての地位を確立する必要がある。コミュニティのアセスメントとブランド認知調査を実施することで、医療機関は適切なメッセージや広報、教育に関するキャンペーンなどを行うことができる。

 

7.NPSのROI(投資利益率)を測定

PXは医療機関の収益、照会、アドヒアランス、安全性、地域社会に対する信頼性に影響を与える。PXが低いとコストがかかり、多くの場合は従業員の離職やワークフローの不備、サービスの非効率性などにつながる。NPS(Net Promoter Score;顧客ロイヤルティの指標)は患者のロイヤルティとほかの人を医療機関に紹介する見込みを測定するために使用する。PXの高い、ポジティブな職場環境を目指して取り組むことは多くの場合、患者離れを減少し、よい評価の口コミや紹介を増やすことにつながる。

2008年から2014年の間に、HCAHPSで「優れた」評価だった病院の純利益率は平均4.7%で、「低い」評価だった病院は1.8%だった。NPSと、それが収益に与える影響の測定を始めることで患者の声に耳を傾け、対応するという、価値を強化する具体的な改善方法が提供される。

 

8.XMの運用

「完全なPXモデル」は継続的に改善していくための明確なロードマップを示す。組織全体でエクスペリエンス・マネジメント(XM)を正常に運用するための要素には文化、十分な収入、そしてテクノロジーが挙げられる。

 

人種格差や文化など、日本との違いはありますが、コロナ禍でもPXが重要であることや患者の声を聞くことが改善につながり、結果として経営もよくなるといった示唆に富む内容です。詳細は下記リンクをご一読ください。

Link:https://www.forbes.com/sites/sap/2021/01/06/8-patient-experience-trends-to-watch-in-2021/?sh=31f3ec81140b

 

 

2. 今週末は「PX寺子屋」です!


PXへの理解を深めていただく場として、日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会が定期的に開催しているオンライン勉強会、「第4回PX寺子屋」がいよいよ今週末、5月15日(土)13:00-14:00の開催となります。

 

今回はPXE(Patient eXperience Expert)1期生である函館五稜郭病院放射線科の小林聖子さんと、同院の企画情報システム課企画係の久米田聖人さんを講師に招きました。函館五稜郭病院でのPX向上の取り組みとして、PXサーベイを1部門から始めたという試みについて紹介していただきます。PXアンケートをPFM(Patient Flow Management;入退院マネジメント)の運用につなげるといった画期的な話をしていただく予定です。

 

冒頭に運営メンバーがPXについて解説する「PX概論」では私、藤井が海外の最新動向などを交えてお話したいと思います。PX研究会会員は無料、会員以外の方は1000円で参加いただけます。下記リンクから本日5月13日まで申し込み可能です、ご参加お待ちしています!

Link:https://www.pxj.or.jp/events/

 

 

3. 今後の予定


PX研究会では12月4日(土)に「第4回PXフォーラム 変革から成熟へーWithコロナ時代のPXがもたらすものー」をオンラインで開催します。PX研究会会員(法人・個人)は無料。会員外の方は第1・2部で3000円となります。第1部、第2部のみ(各1500円)参加も可能です。フォーラムの詳細と申し込みは下記リンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxforum2021/

 

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

 

編集部から


すっかり春というか初夏の陽気となっていますね。わが家の猫もお腹を上にして寝っ転がるようになりました(機嫌がいい時のポーズ)。(F)