1.コロナ禍での看護のリーダーシップ
2.PX勉強会に参加しませんか?
3. 今後の予定
1.コロナ禍での看護のリーダーシップ
日本では第4波といわれるなど、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大はまだまだ収まりそうにありません。世界でもCOVID-19によるパンデミックは続いており、アメリカでは感染者数が3000万人を超えています。そのようななかでコロナ禍における患者のケア、PX(Patient eXperience;患者経験価値)は大きな課題です。患者やその家族をどのようにケアすればいいのかを論じた、PX推進団体The Beryl Instituteが発行するオープンアクセス・ジャーナル「Patient Experience Journal」(PXJ)の投稿記事を紹介します。
Yale New Haven Health Systemブリッジポート病院のAnne Aquiliaさんらによる「コロナ禍の看護リーダーシップ:患者と家族、労働力のエクスペリエンスを高める」と題した投稿では、コロナ禍で看護師たちがどう重大な意思決定をしたのか、新たな状況や問題への対応、信頼性と安全性の確保、患者や家族にすぐれた経験(エクスペリエンス)をしてもらうための取り組みについて述べています。
記事では、公立病院、地域病院、小児病院、アカデミックヘルスセンター、在宅およびホスピスケアなど、さまざまな施設で働く看護師が、COVID-19パンデミック最中でのケアのエクスペリエンスを向上させるために考えた、革新的かつ効果的な方法が示されています。
☆患者と家族の声を聞き、ニーズに最大限対応
看護のリーダーたちは緊急時のマネジメント、感染予防ガイダンス、継続的な現場への配置を通じてスタッフのケアをしながら、患者と家族と直接かかわってきました。患者と家族に対し、直接観察、インタビュー、およびディスカッションを通じてPXを高める方法を見出しました。その際にリーダーシップをとりながら、意思決定、新たな課題を解決するための対応力、信頼の提供、高品質で安全なケアの提供を行いました。
PXを高めるため迅速かつイノベーティブな方法がとられたものの、パンデミックのなかで看護師がやらなければならないことは、平時に行なっていることでした。それは患者と家族の声を聞き、彼らのニーズに最大限対応することです。非常時には患者中心性のケアの提供が疎かになりがちですが、患者のニーズへの対応を模索したことで、高品質で安全なケアを提供する解決策への道をひらくことができ、患者と家族、さらに看護師自身の喜びにつながったといいます。
COVID-19では、症状が出ても医療機関をなかなか受診できなかったり、面会の制限や禁止措置により、患者が家族と会うことができず不安や孤独を感じながら治療を受け、時には亡くなっていったりするなど、患者の精神的苦痛はとても大きいものです。患者だけでなく家族や看護師にまでも精神的に大きな負担がかかります。
改善策として、UCLA Health やブリッジポート病院では、オンライン診断とオンライン面会などのテレヘルスサービスを拡大させました。オンライン面会は患者と家族をつなぎ、多くの患者と家族のPXを向上させました。
COVID-19に感染した可能性のある患者は、看護師から即座に助言を受けることにより不安が解消され、幸福感が向上しました。また、検査が必要な患者を検査サイトへ誘導することで救急外来の混雑を緩和することにもつながりました。平時のようなケア(握手やハグ)ではなく、看護師はマスクをしながらも温かい眼差し、安心できる声と笑顔を向けることで患者や家族を支えました。
患者と家族が幸福を感じられるケアを提供するために、時にはルールに反した例外的な対応をすることもあります。
UCLA Health では、厳格な面会制限が行われていましたが、200マイル先から訪れた家族に対しては患者との面会を実現させました。Seasons Hospice and Palliative Careでは安全を考慮しながら、患者と家族にとって重要なライフイベントを祝う特別な時間を院内で祝っています。このように、リスクとベネフィットなどの優先順位を変更し、革新的な行動を取ることで医療体制が非常に困難である時期であっても患者や看護師にポジティブな影響を与えられます。
☆安全にケアを行う環境づくりがEXとPXを高める
安全なケア環境がなければ、スタッフと患者、家族のエクスペリエンスは存在しないという視点から、疲労とストレスを感じていた看護師のサポートやケアにも力を入れました。
他の医療機関の情報をまとめたダッシュボードの作成、感染拡大を見越した新たなマニュアルの作成・ケア施設の確保、地域内のヘッドナースらによる毎日のオンライン会議、看護師を対象としたオンラインによる質疑応答、イントラサイトの活用。これらすべてが、ケアにおける優先順位を再確認し、正確で安全かつ信頼できる医療・ケアの提供につながりました。
また、スタッフの健康がPXの向上にも役立つことがわかったため、ヨガやエクササイズ、セラピーといったオンラインプログラムを提供しました。毎日のミーティング、メールには励ましのメッセージや匿名性のアンケートなどを添えました。これにより、看護師は心配やストレスから解放されてリラックスすることができ、患者のためにケアをすることを再確認できました。
「パンデミックという困難な時であっても患者中心性のケアの提供を継続することは、PXが向上するだけでなく、EX(Employee eXperience;従業員経験価値)の向上にも役立つ。その結果、質が高く安全な、効率の良いケアを提供することにつながる」と結論づけています。
全文は下記リンクから読むことができます。
Link:https://pxjournal.org/cgi/viewcontent.cgi?article=1482&context=journal
2. PX勉強会に参加しませんか?
日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では、日本におけるPXの有用性を検証する「アカデミック事業」、PXのエバンジェリストを育成する「教育事業」、そしてPXの認知度・理解度を向上させる「啓蒙・推進事業」を行っています。そのなかでも、2016年の発足時から継続して取り組んできたのが、PXを知り、理解を深めていただく機会となる勉強会の開催です。
勉強会はPX研究会の発展とともに、内容も進化してきました。これまでPXサーベイと患者満足度調査の違いの検証から始まり、PX向上のための組織風土づくり、日本版PXサーベイの取り組み事例などを紹介。マーケティングの研究者によるCX(Customer eXperience;顧客経験価値)論、コンサルタントによるEX向上策、がん治療時のPXについて患者に語ってもらうといった機会もつくっています。今後もいろんな視点からPXを考え、議論していく場としていきたいと思います。「こんな話を聞きたい!」といった要望などがあれば、ぜひ事務局にお寄せください。
昨年からはCOVID-19の影響で「PX寺子屋」と名づけたオンラインでの開催となり、遠方の方も参加しやすくなっています。
第36回となる、第4回PX寺子屋は5月15日(土)に開催します。
次回は、PXE(Patient eXperience Expert)1期生が講師として、函館五稜郭病院でのPX向上の取り組みを紹介。PXサーベイを1部門から始めたという試みは、医療機関でのPX導入のヒントになると思います。PXアンケートをPFM(Patient Flow Management;入退院マネジメント)の運用につなげるといった画期的な話をしていただく予定です。
勉強会では毎回、冒頭に運営メンバーがPXについて解説する「PX概論」を設けており、PXについて詳しくない方でも参加いただけるようにしています。そして、PXを知っている方はさらに理解を深められる内容です。PX研究会会員は無料、会員以外の方は1000円で参加いただけます。下記リンクから5月13日まで申し込み可能です、多くの方のご参加お待ちしています。
Link:https://www.pxj.or.jp/events/
3. 今後の予定
5月15日に第4回寺子屋を開催します。以下の内容を予定しています。
第4回PX寺子屋
・日時:2021年5月15日(土)13:00-14:00
・テーマ:
「PX概論」
「放射線治療科におけるPXサーベイの試み」 社会福祉法人 函館厚生院 函館五稜郭病院 放射線科 小林聖子
「PXアンケートの活用 ~PFMの発展を目指して~(仮)」函館五稜郭病院 企画情報システム課企画係 久米田聖人
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PX研究会では12月4日(土)に「第4回PXフォーラム 変革から成熟へーWithコロナ時代のPXがもたらすものー」をオンラインで開催します。PX研究会会員(法人・個人)は無料。会員外の方は第1・2部で3000円となります。第1部、第2部のみ(各1500円)参加も可能です。フォーラムの詳細と申し込みは下記リンクからお願いします。
https://www.pxj.or.jp/pxforum2021/
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※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。
編集部から
コロナ禍だからこそできることを何かしたいと思い、先週末から歯列矯正を始めました。装置に慣れていないので食事に苦戦しています。気分転換に口に入れていたガムやキャンディが食べられないなか、新たなかわいい“おとも”を見つけました。(F)