日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol. 35

1. シンガポールの「エクスペリエンス・サーベイ」
2.〔連載〕「PXとわたし」第2回 西本祐子さん
3. 今後の予定

1. シンガポールの「エクスペリエンス・サーベイ」


12月5~6日の2日間、シンガポールで「第1回Patient Experience Asia Summit」が開催中です。サミット参加のため現地を訪れている、日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会の曽我香織代表理事からの現地報告です。

 

シンガポールでは医療業界に限らず、「エクスペリエンス」への意識が高まっています。今回は、その事例を一つご紹介します。

シンガポールの主要空港である「チャンギ国際空港」は、英航空サービス調査会社スカイトラックスが表彰する「ワールド・エアポート・アワード」で、2013年から6年連続で総合1位を獲得しています。

毎年開催される同アワードは世界各地で空港利用者を対象に調査を行い、空港をランキングしています。搭乗、到着、乗り継ぎ、買い物、安全対策など39項目の満足度が評価基準となっています。2017年は、550の空港で1382万人の利用者にアンケートを実施しました。

 

さまざまなサービスの高さが評価されているチャンギ国際空港ですが、その要因の1つに、「エクスペリエンス・サーベイ」があります。

同空港にはあらゆる場所に、利用者の「エクスペリエンス」を計るためのタッチパネル端末が設置されています。例えば出入国審査カウンター、免税店の支払いカウンター、トイレ、さらには空港内の期間限定の展示物に対してもエクスペリエンスが測定されています。利用客の声を集めて空港の改善に活かすことで、利用客の「エクスペリエンス」を向上させているのだと考えられます。

至るところにこのパネルが設置されています
トイレのパネルには清掃員の顔写真が表示されます

日本でもシンガポールのように医療業界にかかわらず「エクスペリエンス・サーベイ」が広まっていくと良いですね。

「第1回Patient Experience Asia Summit」の様子や内容については、次回以降のメールマガジンにて紹介します。

 

2.〔連載〕「PXとわたし」第2回 西本祐子さん


今回は、“西日本のPX推進リーダー”である西本祐子さんです。毎回飛行機で勉強会に駆け付け、西からの熱く、暖かい風を研究会にもたらしてくださっています。

 

☆PX研究会との出合いと、勉強会に参加して思うこと

2015年に院内QM(Quality Management)活動の一環として、「患者サービスの質向上」を担当することになりました。そして、手探りの状態ながら国内某病院さんが公表されていた「HCAHPSを和訳した調査票」を使ったサーベイを実施し、今でも毎年実施しています。

2016年12月、ついに「PX研究会」と出逢いました。勇気を出して勉強会への参加申し込みをすると、「あの曽我さんですか?」「あの西本先生ですか?」という会話になり……曽我代表理事とはすでに7年前に知り合っていたので奇跡の再会! PXとの出逢いは必然だったのだと、実感しました。

2017年3月18日、勉強会にデビューしました。職種も職場も地域も異なる病院関係者が自主的に集い、「患者中心性の医療とはなにか? 実現するためには何が必要か、何をすべきか?」について熱くディスカッションしたり、各施設での取り組み、PXに関する国内外の最新情報などを共有する非常に濃厚で充実した時間でした。

当院では、勉強会で開発した「日本版PXサーベイ調査票(入院編・外来編)」を用い、「患者経験価値調査」を毎年実施し、勉強会で共有することで統計処理のポイントや運用法の見直しなど、多くのアドバイスを頂いています。

 

☆わたしのPX体験(自院での取り組み、患者としての経験など)

私にとってPXは、「患者さん個々の潜在意識を汲み、満たすこと」だと思っています。

ここ最近で一番のPXに関する体験は、70歳代でマイナー外科を定期受診されている女性患者さんが、サーベイ用紙の片隅に書いていらした言葉。「3年通院していますが、一度も聴診器を当ててもらったことがありません」を見つけたことです。

☆ PXを学ぶ前後で変わった点

前項と被りますが、日常的に「患者さん個々の潜在意識を汲み、満たすこと」を意識するようになりました。自分が医師もしくは患者あるいは消費者として経験したさまざまなシーンを振り返り、勝手に厳しい評価を下すこともあります(笑)。もちろん、これからのために。

 

☆PXにかかわって良かったこと・得したこと

「本当の患者目線とは?」「want ≠ need」などについてしっかり考えるようになりました。

日本ではまだ馴染みの薄い段階で「PX」に出逢い、その概念に深く共感し、国内随一の団体であるPX研究会に入れていただいたことは、得したというより「幸せ」以外の何ものでもありません。

 

PXとは?

実は今でも難しいのですが、「患者さんだけでなく、その家族や関係者が医療とのかかわりを通して経験したすべての事象について、患者中心性であると実感できること」と説明しますね。

 

☆自己紹介:

1997年、大分大学医学部卒業、九州大学病院小児外科研修医。2005年、九州大学病院助教。2008年、国立病院機構九州医療センター小児外科医師。2011年、国立病院機構本部臨床研修専門職を経て、2014年より国立病院機構九州医療センター小児外科医長、メディカルコーディネートセンター副センター長。

 

3. 今後の予定


今年最後の勉強会となります。2018年の振り返り、来年に向けての活動報告などを予定しています。勉強会・忘年会は研究会員以外の方も参加可能ですので、多くの方の参加をお待ちしています。

 

第24回 PX研究会 勉強会

12月15日(土)15:00-17:00

※開催時間が通常と異なりますのでご注意ください。また、忘年会の参加を希望される場合はその旨ご連絡ください。

場所:株式会社イトーキ SYNQA 2F

 

「PXフォーラム2018のアンケート結果」  九州医療センター 小児外科医長 西本 祐子
「PXサーベイのiPad入力システムについて」岩井医療財団システム課・広報課課長 古川 幸治
「2019年日本PX研究会の展望」      日本PX研究会 代表理事 曽我 香織
「1年の振り返り」            公立昭和病院 事務局総務課担当課長 笹野  孝
「2019年の抱負」

※内容は現時点での予定。変更する場合があります。

17:00-忘年会

会費:勉強会参加費 1000円(研究会員は無料)
忘年会参加費 4500円

 

 

※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

編集部から



先週北海道旅行に行ってきました。北海道はやはりご飯が美味しいですね。海鮮丼、ジンギスカン、味噌ラーメン、スープカレーと北海道の味覚を堪能してきました。なかでも、函館朝市で食べた海鮮丼が絶品でした。また行きたいと思います。(K)